前田敦子「黒沢清監督とご一緒していなければ、こんな素晴らしい体験はできない。本当に感謝しています」

日本・ウズベキスタン国交樹立25周年、ナボイ劇場完成70周年記念の国際共同製作企画となる黒沢清監督作で、前田敦子が主演を務める『旅のおわり世界のはじまり』が6月14日より公開中。このほど、現地時間8月17日に、スイス・ロカルノで開催中の「第72回ロカルノ国際映画祭」クロージング作品として本作が上映され、前田敦子と、黒沢清監督が登壇した。

映画祭の歴史の中で、日本作品がクロージング作品として招待されるのは初となる。本作は、映画祭の代名詞であるメイン会場ピアッツァ・グランデにて上映。欧州最大といわれる巨大スクリーン(幅約26メートル、縦約14メートル)には、ウズベキスタンの美しい景色と、「愛の讃歌」を歌う前田敦子が映し出される。8000人の観客が集まった会場で、前田敦子と、黒沢清監督は、観客と一緒に作品を鑑賞。上映が終わると、会場の観客は前田敦子と黒沢監督を万感の拍手で讃えた。世界有数の国際映画祭に初めて参加した前田と、世界中に根強いファンが多くいる黒沢監督の前には多くの観客が駆け寄り、二人は現地深夜にも関わらず最後までファンとの交流を楽しんだ。

前田は「黒沢監督の横で自分の映画を観るのは初めてだったので感無量」と口にし、黒沢監督と一緒でなければ、こんな素晴らしい体験はできないと感謝の言葉を述べた。また、黒沢監督が「日本での映画製作に行き詰まりを感じていた時に、この映画のお話をいただき、まるで合宿のように楽しく撮影した時のことを思い出した。映画作りは世界共通なのだと実感し、毎日ウズベキスタンの製作スタッフと和気藹々と撮影に励んだが、こうやって国際映画祭のクロージング作品に選ばれると分かっていれば、もう少し真剣に製作したのに」と悔しそうに回顧すると、会場からは大きな笑い声が湧いた。

上映後の日本メディアの取材時、黒沢監督は前田との2度目の共同作業について「これに懲りずに、また新しい映画で、皆さんが知らない前田敦子を引き出したいと思っています、今から楽しみにしていてください」と、コメント。それを聞いた前田も「こんな素晴らしい映画祭で最後にこんな嬉しい言葉を聞けて光栄です」と恐縮しきりだった。本作のスイス配給会社トリゴン・フィルムの代表は「本作は、まさに国際映画祭を象徴した映画であり、世界各地で直面する文化の壁を、比喩的に表現した素晴らしい作品。平和を祈る作品として、より多くの人が観るべきだ」と述べ、現地の反応に大きな手応えを感じていた。天国に近い映画祭と言われるイベントだけに、多幸感に満ちた上映となった。

『旅のおわり世界のはじまり』
6月14日(金)より全国公開中
監督・脚本:黒沢清
出演:前田敦子 染谷将太 柄本時生 アディズ・ラジャボフ 加瀬亮
配給:東京テアトル

【ストーリー】 テレビ番組のリポーターを務める葉子(前田敦子)は巨大な湖に棲む“幻の怪魚”を探すため、番組クルーと共に、かつてシルクロードの中心地として栄えたこの地を訪れた。夢は、歌うこと。その情熱を胸に秘め、目の前の仕事をこなしている。収録を重ねるが、約束どおりにはいかない異国でのロケで、いらだちを募らせるスタッフ。ある日の撮影が終わり、ひとり街に出た彼女は、聞こえてきた微かな歌声に誘われ美しい装飾の施された劇場に迷い込む。そして扉の先で、夢と現実が交差する不思議な経験をする。彼女が、旅の果てで出会ったものとは…?

(C)2019「旅のおわり世界のはじまり」製作委員会/UZBEKKINO