小説「えん」が第40回すばる文学賞受賞、映像産業振興機構(VIPO)による若手映画作家育成プロジェクト(ndjc)2015選出など、文学・映像両才能を持ち合わせた新鋭作家ふくだももこの長編初監督作品で、松本穂香主演、板尾創路、浜野謙太共演で贈る映画『おいしい家族』が、9月20日より公開される。このほど、本作が「第20回全州(チョンジュ)国際映画祭」シネマフェスト部門に正式招待され、主演の松本穂香、ふくだももこ監督が登壇し、舞台挨拶を行った。
客席には若年層の観客が多く、実家に帰ると父が母の服を着ていたことをきっかけに起こるストーリー展開と、随所に盛り込まれるウィットに富んだ「ふくだももこ節」に、上映中は耐えず笑いが起こり、ほがらかな雰囲気のまま上映は終了した。
初めての全州(チョンジュ)国際映画祭への参加となる松本穂香とふくだももこ監督から韓国語で挨拶。松本が「主人公を演じた松本穂香です。大切な人と見てほしい、おいしい映画になりました」と挨拶すると、続けてふくだ監督からも「この作品は私の思うユートピアを描きました」と韓国語で挨拶。観客からは暖かな拍手が贈られた。
上映後のQ&Aでは観客から様々な分野においての質問が相次いだ。松本演じる主人公・橙花(とうか)は、東京で働くキャリアウーマン。母の三回忌に故郷に帰ると父が亡き母の服を着ている事実を知るという変わった役どころ。どういった気持ちで役を演じたのかという質問に対し「彼女は実家を出て、東京で色んな経験をして傷ついた心で戻ってきたんです。すると自分がいない間に家族は変わってしまっていた。置いてきぼりになってしまった気持ちを素直に受け入れられないでいるんです」とコメント。
それを受けてふくだ監督から「橙花は、自分のまわりにいる自由奔放なキャラクターに反発するんですが、そんな橙花を悪者のように見せたくなかったんです。でも松本さんはそんな橙花をとても愛らしく演じてくれました。映画を見た皆さんが橙花を嫌なやつだと追わず、キュートだと思って頂けたらそれは全て松本さんのお芝居のおかげだと思っています」と松本の演技を大絶賛。
また、目の肥えた観客からは作品に関して、“色使い”に意味を込めているように感じたが何か意味があるのか?との問いが。監督より「登場人物の名前に色を入れてるんです。主人公の橙花はオレンジ、父は青治で青など。名前に色を入れることでその人が着る服の色や趣味、興味などキャラクターを分けています。日本語の綴りがわからないにも関わらずそこまで考えてくれて、ありがとうございます!」と感激した。
舞台挨拶の最後には「この映画には、この世界のみんなが隣にいる人、それは家族でも友達でも知らない人でもいいんですが、そんなただ隣に居る人に優しくすれば世界ってもっと良くなるんじゃないかというメッセージをこめました。そんな私の思想がみなさんにも伝わると嬉しいです。本当に来ていただいてありがとうござしました」と監督からコメントがあり、舞台挨拶は終了した。
松本穂香は昨夜初めて海外映画祭のレッドカーペットを踏み、本日の舞台挨拶で観客からの生の声を聴く2日間の全州(チョンジュ)国際映画祭滞在となった。今回の映画祭体験を振り返り「韓国のみなさんに暖かく迎えて頂き、とても嬉しかったです。上映後のQ&Aでも、みなさんが深く作品を見てくれていることが強く伝わりました。まるで『おいしい家族』の世界観のように、人種や国籍なんて関係ないんだということを映画を通じて感じる事ができました」とコメントした。
『おいしい家族』
9月20日(金)全国公開
監督・脚本:ふくだももこ
出演:松本穂香 板尾創路 浜野謙太 笠松将 モトーラ世理奈 三河悠冴 栁俊太郎
配給:日活
【ストーリー】 橙花(松本穂香)は東京で働くキャリアウーマン。母の三回忌に実家の離島に帰ると、なぜか父・青治(板尾創路)が母の服を着て生活していることを知る。びっくりする橙花を気にせず父は続けて「この人と家族になる」とお調子者の居候・和生(浜野謙太)を紹介。橙花は父を始め、様々な価値観や個性をもった人たちに出会うことで、自分が考える常識から解き放たれ、次第にそれぞれの個性を受け入れると共に、自分らしく生きることの大切さに気付いていく。
©2019「おいしい家族」製作委員会