新宿タイガー、憧れのオードリー・ヘップバーンとの共演に感動!『新宿タイガー』初日舞台挨拶レポート

新宿で40年以上、虎のお面を被ってド派手な格好をし、新聞配達をしている男性“新宿タイガー”と、彼を受け入れる“新宿”の街が担ってきた歴史的役割とその魅力に迫るドキュメンタリー『新宿タイガー』が3月22日に公開初日を迎え、同日にテアトル新宿にて初日舞台挨拶が行われ、新宿タイガー、睡蓮みどり、石川雄也、里見瑶子、田代葉子、ただまりこ、Norie・W フレアバタフライ、速水今日子、外波山文明、久保新二、しのはら実加、大上こうじ、佐藤慶紀監督が登壇した。

「監督は、2017年1月から36回タイガーさんに密着され、編集も大変だったと聞いています。最初はもう少し硬派なドキュメンタリーにする予定だったけれど、変わったと聞きました。どのような理由からですか?」と聞かれた佐藤監督は、「新宿は色々な歴史があるので、最初はもっと新宿を考察することを考えていたんですけれど、タイガーさんはロマンを前面に打ち出して生きている方なので、タイガーさんと接するうちに、それに僕も引き寄せられて行きました」と話した。

本作は、先日閉幕したばかりの大阪アジアン映画祭に正式出品された。大阪の観客の反応を聞かれた監督は、「観た方は、とても熱狂的に『面白い!東京にこんな方がいるのか!』とおっしゃいました。タクシーに乗った時に運転手さんにチラシを渡したら、『絶対見る!虎の町だから!』と言われました」とエピソードを話して、会場を沸かせた。

タイガーは、新宿の喫茶店での打ち合わせで始まったドキュメンタリープロジェクトが、初日を迎え、「最高の感動!夢をありがとうございます!」と話し、会場は割れんばかりの拍手に包まれた。また、映画館で『ローマの休日』を見ているシーンを監督が撮影してくれたことで、大好きなオードリーとスクリーン上で共演できた喜びを、「オードリー・ヘップバーンと一緒に夢を見られて、この上ない喜びです!」と、独特の表現で語った。

本作は、「シネマ」と「美女」と「ロマン」の3つで構成されているが、佐藤監督がその3つを柱に映画を編集してくれたことについて、タイガーは、「壇上を見てください。『シネマ』と『美女』と『ロマン』そのものです」と、初日舞台挨拶に一緒に登壇してくれた、本作に出演したお友達について紹介した。

女優の睡蓮みどりは、「見れば見るほど、タイガーさんのことがわからなくなっていくのがこの映画の魅力。ディープな世界へようこそ」、ゴールデン街のBarダーリンのマスター兼役者の石川雄也は、「NHKドキュメントなどで、ジャングルで原住民に会いに行くみたいな番組あるじゃないですか。あれの新宿バージョンだと思って見てください」と話し、会場を笑わせた。

女優の里見瑶子は、「久保新二さんの半生についての映画で共演させていただいてからのお友達なんですけれど、映画を見たら、タイガーがいつも私にしゃべってくれること全部、同じことを映画の中でもしゃべっています。十何年経ってもいつも同じことを言ってくれて、いつも真剣なんです」と、この映画が里見にとってのいつものタイガーを映していると話した。

ただまりこは、「『こういう人がいていいんだ』と、いろんな人にタイガーの存在を見てもらえることが私はとても嬉しいです」と話し、Norie・W フレアバタフライは、「タイガーを切り口にしながら、新宿の近代史がわかるような作りになっています。戦後の新宿の懐かしい映像がたくさん登場して、映画としてよくまとまったドキュメンタリーだと思いました。こういう人が生きていける街っていうのは、それなりの成り立ちだなと納得がいく作りになっています」と本作の魅力を話した。

速水今日子は、「佐藤監督に、『生い立ち聞いてあげようか?』と言ったら、最初佐藤さんも『お願いします』って言っていたんですけれど、途中から『やっぱりいいです。今知っているタイガーさんのことだけで描きたいです』と言いだした」と、制作の裏話を披露した。

劇団『椿組』の外波山文明は、「30何年前、僕の結婚式に招待したら、入り口の警備員さんに『入っちゃダメです』と止められた」というエピソードを披露。また、若松孝二監督の映画『われに撃つ用意あり』で石橋蓮司が演じる新聞配達員の役は、新宿タイガーをモデルにしているというトリビアを話した。

タイガーの親友の“ポルノの帝王”こと久保新二は、「俺とタイガーは『日本侠客伝』の高倉健と池部良だ」と、タイガーが大好きで、いつもラジカセで歌を流している高倉健の名前を挙げ、タイガーを感動させた。

しのはら実加は、「浅草から来た、しのはら実加、17歳です。文句ある方いらっしゃいますか?」と、タイガーに負けず劣らずのキャラクターを披露。同じくお笑い浅草21世紀の大上こうじは、「久保さんの紹介でタイガーに会って。お付き合いと言っても、今日で会ったのは3回目ですけどね」と言って、観客の笑いを誘った。「高校の時から新宿でタイガーを見かけて40数年になります。(タイガーが)なんでこんなに愛されるんだろうと考えたら、タイガーというフィルターを通して新宿を見ると、また違った新宿に見えるというのが魅力の一つ。あと、本作の上映時間が83分。昨日のイチローの会見と同じです!」と、またユーモアを交えてあいさつした。

最後に田代葉子は、「東日本大震災の後、地方に行っていたけれど、楽天が優勝したときにタイガーが朝、新聞をたくさんくれて、『被災地に持ってってやって』と。その新聞を見た気仙沼の人たちがすごく喜んで、『タイガーの写真を見せてくれ』というので見せたら、『大漁旗』みたいな人だなぁと。それから気仙沼の人たちはタイガーのことを『大漁旗』と呼んでいます。この映画が東北でもかかることを皆さん心待ちにしています!」と熱いメッセージを伝えて、舞台挨拶は終了した。

『新宿タイガー』
3月22日(金)より、テアトル新宿にてレイトショー公開ほか全国順次公開
監督・撮影・編集:佐藤慶紀
出演:新宿タイガー 寺島しのぶ(ナレーション) 八嶋智人 渋川清彦 睡蓮みどり 井口昇 久保新二 石川ゆうや 里見瑤子 宮下今日子 外波山文明 速水今日子 しのはら実加 田代葉子 大上こうじ
配給:渋谷プロダクション

【作品概要】 東京のエンターテインメントをリードする街・新宿。1960年代から1970年代にかけ、新宿は社会運動の中心だった。2018年、この街には“新宿タイガー”と呼ばれる年配の男性がいる。彼はいつも虎のお面を被り、ド派手な格好をし、毎日新宿中を歩いている。彼は、彼が24歳だった1972年に、死ぬまでこの格好でタイガーとして生きることを決意した。1972年当時、何が彼をそう決意させたのか?彼が働く新聞販売店や、1998年のオープン時と2012年のリニューアル時のポスターにタイガーを起用したTOWER RECORDS新宿店の関係者、ゴールデン街の店主たちなど、様々な人へのインタビューを通じ、虎のお面の裏に隠された彼の意図と、一つのことを貫き通すことの素晴らしさ、そして新宿の街が担ってきた重要な役割に迫る。

©「新宿タイガー」の映画を作る会