1964年に16歳で手掛けた処女短編『調子の狂った子供たち』から現在に至るまで精力的に映画を撮り続けている、ヌーヴェル・ヴァーグ以降のフランスの名匠フィリップ・ガレル監督の数多くの作品の中で、ガレル自身が「自伝と台詞の時代」として区切る中期の代表作にして、日本初公開となる『救いの接吻』(1989)、亡き恋人ニコに捧げた傑作『ギターはもう聞こえない』(1991)が、4月27日より公開されることが決定した。
▲『救いの接吻』
『救いの接吻』は、ガレルが傑作『ギターはもう聞こえない』の前に製作した、あるひとつの愛の物語。新作の準備を進めていた映画監督のマチューは、主役を別の女優に決めたことで、妻で女優のジャンヌから激しい糾弾を受ける。映画監督と女優であり、夫と妻であり、また息子の父と母でもある二人の対話は永遠に続いていく。
常に私小説的な映画を作り出してきたガレルならではの、私生活と創作をめぐる果てなき問いが繰り広げられる本作。出演には、ガレル本人と当時のパートナーであるブリジット・シィ、今やフランスを代表する俳優となった息子ルイ・ガレル、実父である名優モーリス・ガレルが揃い、崩壊の危機にある家族の物語を、監督を含め実際の家族たちが演じた。本作を機にガレルと数々の名作をつくりだすことになる、詩人で小説家のマルク・ショロデンコによるダイアローグは、愛の可能性と物語の誕生の瞬間を描き出す。本作は、1989年ベネチア国際映画祭にてオリゾンティ部門に出品された。
▲『ギターはもう聞こえない』
『ギターはもう聞こえない』は、ガレルが元恋人ニコの急逝直後に製作した私的なラブストーリー。海辺の町で共同生活を送るジェラールとマリアンヌ、マルタンとローラの2組のカップル。一度は別れたジェラールとマリアンヌは、パリで再びともに暮らすが、次第にドラッグに溺れ生活は困窮を極めていく。最終的に別離を選び新しい家庭を持ったジェラールに、ある日、マリアンヌの訃報が届く。
本作では、ニコとの生活と破局、息子の誕生、そして突然訪れた彼女の死という、ガレルの元恋人との記憶と死の衝撃が、美しくも残酷にスクリーンへ映し出される。自伝的な物語でありながら、俳優たちの演技と洗練された台詞によって普遍的な愛の物語が誕生した。1991年のベネチア国際映画祭で銀獅子賞を受賞し、1964年から現在までのガレルの膨大なフィルモグラフィのなかでも、あるひとつの頂点を成す傑作と言える。撮影は、今やフランス映画には欠かせない名撮影監督カロリーヌ・シャンプティエ。前作に引き続き、マルク・ショロデンコによる印象的な台詞の数々が、陰惨で残酷な物語を美しく彩る。
『救いの接吻』『ギターはもう聞こえない』
4月27日(土)より東京都写真美術館ホールほかにて全国順次ロードショー
『救いの接吻』
監督・脚本:フィリップ・ガレル
台詞:マルク・ショロデンコ
撮影:ジャック・ロワズルー
編集:ソフィー・クサン
音楽:バーニー・ウィレン
出演:ブリジット・シィ フィリップ・ガレル ルイ・ガレル アネモーネ モーリス・ガレル イヴェット・エチエヴァン
配給:コピアポア・フィルム
【ストーリー】 新作の準備を進めていた映画監督のマチュー(フィリップ・ガレル)は、主役を別の女優に決めたことで、妻で女優のジャンヌ(ブリジット・シィ)から激しい糾弾を受ける…。
『ギターはもう聞こえない』
監督:フィリップ・ガレル
脚本:フィリップ・ガレル ジャン=フランソワ・ゴイエ
台詞:マルク・ショロデンコ
撮影:カロリーヌ・シャンプティエ
編集:ソフィー・クサン ヤン・ドゥデ
音楽:ファトン・カーン ディディエ・ロックウッド
出演:ブノワ・レジャン ヨハンナ・テア・ステーゲ ミレーユ・ペリエ ヤン・コレット ブリジット・シィ
配給:コピアポア・フィルム
【ストーリー】 海辺の町で共同生活を送るジェラール(ブノワ・レジャン)とマリアンヌ(ヨハンナ・テア・ステーゲ)、マルタン(ヤン・コレット)とローラ(ミレーユ・ペリエ)の2組のカップル。一度は別れたジェラールとマリアンヌは、パリで再びともに暮らすが、次第にドラッグに溺れ生活は困窮を極めていく。最終的に別離を選び新しい家庭を持ったジェラールに、ある日、マリアンヌの訃報が届く。