バリー・ジェンキンス監督最新作『ビール・ストリートの恋人たち』レトロで美意識高い新場面写真

第89回アカデミー賞にて8部門にノミネート、作品賞ほか3部門を受賞した『ムーンライト』で世界中を熱狂させたバリー・ジェンキンス監督が、キキ・レイン、ステファン・ジェームスのW主演で贈る最新作『ビール・ストリートの恋人たち』が、2月22日より公開される。このほど、本作の新場面写真がお披露目となった。

70年代のニューヨーク・ハーレムに生きる若い二人の愛と信念の物語を、圧倒的な映像美と叙情的な音楽で描き出す本作。原作は、オバマ大統領やマドンナらが敬愛し、今年はドキュメンタリー映画『私はあなたのニグロではない』が公開された、作家ジェームズ・ボールドウィンによる著書「ビール・ストリートに口あらば」。ジェンキンス監督は、長年この物語の映画化を熱望、前作『ムーンライト』の撮影以前に脚本を執筆し権利を獲得し、念願の映画化を果たした。

本作は、先日の第76回ゴールデン・グローブ賞で、主人公の母親役で熱演を見せたレジーナ・キングが助演女優賞を受賞。さらに、第91回アカデミー賞では、脚色賞、助演女優賞、作曲賞の3部門にノミネートを果たした。そのほか、ナショナル・ボード・オブ・レビュー賞で脚色賞、助演女優賞、全米批評家協会賞で助演女優賞、サテライト賞で作品賞、助演女優賞など、数々の映画賞を受賞し、1月25日時点で、71映画賞を受賞、200のノミネートを記録している。

『ムーンライト』では、舞台である現代のマイアミを重要なキャラクターの一つと位置づけ、強く降り注ぐ太陽の光や、木々の緑、青い月の光に照らされたビーチの姿を、生命力たっぷりに描いてみせたジェンキンス監督。本作では、今から50年前のNY・ハーレムの生き生きとした姿の再現に挑戦し、70年代NYのイメージによく使われる茶やグレー中心のくすんだ色味ではなく、ロマンティックなラブ・ストーリーの感情の動きにぴったり寄り添う、情熱的でハイコントラストなカラーパレットを用意した。ジェンキンス監督はインスピレーションを、ライフ誌、ヴォーグ誌で初の黒人専属カメラマンであり、世界最高峰の写真家集団マグナム・フォトにも所属したゴードン・パークスや、当時のNYのストリートの写真でよく知られるジャック・ガラファローらの作品から得たという。「撮影の準備段階においては僕と衣装、美術部門でじっくりと案をねった。一貫したデザインや色彩を、衣装とインテリアなどすべてに使いたかった。主人公のティッシュを、鮮やかな世界や、時には色あせた世界の中に置いていったんだ」そして、「ボールドウィンの文章と、ハーレムの街へ敬意を示すためにも」との熱い思いから、撮影は2017年10月より、実際に映画の舞台となるNY・ハーレムで行われた。

美術担当のマーク・フリードバーグは、これまでジム・ジャームッシュ作品やウェス・アンダーソン作品の美術監督も務めている人物。ニューヨークを舞台にした作品では『脳内ニューヨーク』や『ワンダーストラック』など、この魅力的な大都市の様々な顔をスクリーンの中で息づかせてきた。そんなフリードバーグは、「70年代のハーレムで主人公達が直面していた経済的な状況は、若きカップルであるティッシュとファニーのラブ・ストーリーを語る上で重要な文脈となっていた。ティッシュが生まれ育ったリヴァーズ家と、すでに独り立ちし、アーティストとして生きるファニーが暮らす家、それぞれに明確なビジョンを持って美術に落とし込んでいった」そして、「母シャロンの愛情に溢れるリヴァーズ家には、家庭的豊かさがある。ただ、居住年数20年くらい経つが資金不足でリフォームもできていないという経済状況も表す必要があって、複雑だった」と語る。そこでフリードバーグは、改装工事を行うためちょうど空き家になっていたハーレムのアパートメントを見つけ出し、リヴァーズ家の内装をイチから思い描いた通りに作り上げるという大胆な方法をとった。インテリアには、あたたかみのある優しい光を基調とした照明にカラフルな家具、使い込まれて少しくたびれた様子のソファ、時代感ある花柄の壁紙やリアルなキズが映し出されおり、70年代の黒人家庭の、決して裕福ではないものの、親しみと愛情を感じさせる生活空間を実現した。

一方、ファニーの住むアパートメントは、当時は移民が多く暮らしていたウエストヴィレッジのバンク・ストリートの地下という設定。22歳の駆け出しのアーティストが生活する現実味をだすため、リサイクルショップで買えるようなヴィンテージの家具が揃えられ、壁にはあえてヒビを入れるというこだわりも。このアイディアを実践したフリードバーグに対し、ジェンキンス監督は、「当時のヴィレッジにある欠陥住宅なら若いアーティストでも借りられるだろうと考えてくれた。このキズによって、ヴィレッジに一世紀以上も存在しているようなアパートに見えてきたんだ。映画では誰も気づかないかもしれないけれど、マークにとっては必要不可欠なキズだったんだよ」と美術が映画の世界観に与えた影響の大きさを明かす。

新場面写真の中には、古いバスタブに板を乗せダイニングテーブルとして使っている描写があり、これは彫刻家として生きるファニーらしい、貧しいながらも創造的な人物像を感じさせる。そのほか、友人ペドロシートが働くスペイン料理店のレトロで華やかな壁紙やランプシェード、二人が相合傘で歩く雨の路地裏に停まる70年代らしいクラシックカー、若い二人と友人が囲む質素だが楽しげなご馳走の並ぶ食卓など、監督とフリードバーグの美意識が随所に光るカットが収められている。

『ビール・ストリートの恋人たち』
2月22日(金) TOHOシネマズ シャンテほか全国公開
監督・脚本:バリー・ジェンキンス
原作:ジェームズ・ボールドウィン「ビール・ストリートに口あらば」
出演:キキ・レイン ステファン・ジェームス レジ―ナ・キング コールマン・ドミンゴ マイケル・ビーチ ディエゴ・ルナ エド・スクライン ブライアン・タイリー・ヘンリー デイヴ・フランコ ペドロ・パスカル
配給:ロングライド

【ストーリー】 1970年代、ニューヨーク。幼い頃から共に育ち、強い絆で結ばれた19歳のティッシュ(キキ・レイン)と22歳の恋人ファニー(ステファン・ジェームス)。互いに運命の相手を見出し幸せな日々を送っていたある日、ファニーが無実の罪で逮捕されてしまう。二人の愛を守るため、彼女とその家族はファニーを助け出そうと奔走するが、様々な困難が待ち受けていた…。

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