山口情報芸術センター[YCAM]が実施する映画制作プロジェクト「YCAM Film Factory(ワイカム・フィルム・ファクトリー)」の第4弾作品であり、『きみの鳥はうたえる』の三宅唱監督最新作『ワイルドツアー』が、3月30日より公開されることが決定した。併せて、ポスタービジュアルがお披露目となった。
本作は、山口県山口市を舞台に、実際にYCAMでおこなっている“採取した植物のDNAを解析し植物図鑑を作るワークショップ”で出会った10代の若者たちの日常を描いた青春映画。彼らが山や海へ「新しい種」を求めて探索しながら、自然と共に成長していく姿を描く。
監督は『Playback』、『THE COCKPIT』など意欲的な作品群を発表し、昨年公開された『きみの鳥はうたえる』でも話題の三宅唱。YCAMの研究開発チーム・YCAMインターラボと協働し、本作を約8カ月間の滞在制作の中で作り上げた。出演者は、ほぼ演技経験の無い10代の中高生たち。監督と出演者が一緒になって脚本や演出を考えながら撮影を重ね、フィクション作品でありながら、時に彼らのナマの成長の記録も映し出す作品となった。
ポスタービジュアルには、降りしきる雨の中、メインキャストの3人がYCAMの敷地内に並んで立っているポートレイトが採用された。撮影を務めたのは、写真家・ホンマタカシ。
さらに本作は、2月8日から24日に開催される第11回恵比寿映像祭にてプレミア上映されることが決定した。会期中、同プロジェクトで制作した三宅唱+YCAMによるインスタレーション作品「ワールドツアー」も合わせて公開となる。(公式サイト:https://www.yebizo.com/jp/)
<第11回恵比寿映像祭 「YCAM Film Factory」作品上映詳細>
・三宅唱監督作品『ワイルドツアー』
2月20日(水)18:30~、24日(日)15:00~ ※要チケット
会場:東京都写真美術館 1F ホール
・三宅唱+YCAM「ワールドツアー」
2月8日(金)~2月24日(日)10:00~20:00 ※入場無料
会場:日仏会館 ギャラリー
■三宅唱(監督・脚本・撮影・編集) コメント
YCAM Film Factoryのボス杉原氏から「最終的に映画でなくてもかまわない」という緊張感あるオファーを受けた。「なぜわざわざ映画をつくるのか」というゼロからの問い直しだ。滞在制作中、映画以前からある演劇やダンス、また地域での芸術教育プログラム、そしてSFのような最先端テクノロジーやバイオラボに囲まれ、なぜ芸術(施設)が人生や社会に必要なのかを日々模索しているYCAMスタッフらと共に、映画の役割を探った。まずは日々のあれこれを記録するビデオダイアリーの手法から出発し、それをインスタレーション作品「ワールドツアー」として再構成しながら、ある時、僕らにはやっぱり物語や劇も必要だと気づいた。それを教えてくれたのは地元の中高生たちだ。21世紀うまれの彼らと山や海や街角でなにかを発見したり、セリフを作ったり、何度も演じたりしながら、ようやく映画を発見できた気がした。 高校受験やら将来やら恋やら、人生の岐路に立って日々真剣に生きている彼らの姿は野生の動植物のように格好いい。リアルとかナチュラルでは収まらない、人間やこの社会の「ワイルド」な部分を捉えたいと思った。ぜひ彼らと「発見のよろこび」を共有してほしい。
『ワイルドツアー』
3月30日(土)より、ユーロスペースほか全国順次公開
監督・脚本・撮影・編集:三宅唱
プロデューサー:杉原永純(YCAM)
音楽:Hi’Spec
出演:伊藤帆乃花 安光隆太郎 栗林大輔
配給:岩井秀世
【ストーリー】 ここは山口県山口市にあるアートセンター。大学1年生の中園うめ(伊藤帆乃花)は「山口のDNA図鑑」というワークショップにファシリテーター(進行役)として参加している。参加者は、これから、自分たちが暮らす街の様々な場所を歩きまわり、どんな植物が生えているのかを調べていく。ウメは中学3年生のタケ(栗林大輔)とシュン(安光隆太郎)を連れ、「新しい種」を求めて近くの森を探索することに…。
© Yamaguchi Center for Arts and Media [YCAM]