MC:お三方のお話を聞いているだけでいろいろ想像しますよね。特に今、内田さんからもお話がありました主人公の重藤成一郎。今回、上川さんは重藤を20代と40代と60代までと世代を越えて演じられましたけれども、一人の人物を世代を越えて演じるというのはご苦労のほうが多いんですか?どうでしょう?
上川:僕はでもおもしろいんですよ、そういう課せられるものがあるというのが。特に今回は事件が一筋縄ではいかないものですし、さらには重藤はその事件と相対して2回負けてる男なんですね。なので、その重さというんですか、1回のみならず、もう1度取り組んで、それでも敵わなかった壁を常に目の当たりにしているような男が、20年、そしてさらに20年を経てどのように変遷していくのかを考えるのは、演者としてはとても楽しい作業でした。
MC:特に気をつけられた点、工夫された点はありますか?
上川:細かく申し上げるのは難しいんですけど、いわゆる、彼にのしかかっている重さをなるべく変化として出していけたらとは思っていました。
MC:どんどん積み重なっていくわけですよね。
上川:はい。
MC:そして、その重藤成一郎にもアプローチしていくわけなんですけれども、小泉さんが演じられました日下悟。この刑事は平成の事件をきっかけに昭和の事件を追うことになるわけですけれども、その中で重藤と出会いますが、小泉さんから見た日下悟役の見どころ、魅力はどのようなところだと思いますか?
小泉:平成の事件を担当するんですけど、一番贅沢だったなと思うのは、昭和という時代を重藤さんと一緒に、あの事件は日下としては僕は知らないし、だけども全く知らない時代、事件を重藤さんと出会ったことによって一緒にその真相に向かって歩いていける、その時間はものすごく贅沢な時間でしたね。不思議な感覚でした。今は平成を生きているんだけど、重藤さんと一緒のシーンは僕も昭和を生きているような。僕がもしかしたら一番贅沢な役をある意味いただいたのかなと思って。だから、1シーン1シーンを、1カット1カットを、重藤さんとのシーンはどんどんどんどん核心に近づけば近づくほど寂しくなっていく気持ちもありましたし、終わってしまうのかと。今でも忘れられないシーンはたくさんあります。
MC:後ほど、その思い出深いシーンなどについても伺えればと思います。内田さんが演じられた尾畑理恵という女性は、また違う軸で最初に事件が起こった時からずっと平成までいるわけなんですけれども、今回のこの役は演じられていかがでしたか?
内田:自分の弟が事件になっていくという、その深い悲しみとか、人には理解できない苦悩を感じながら生きていくという、やっぱり自分は幸せになってはいけないんじゃないかという葛藤の中で生きていく女性でしたので、演じている間はすごく辛かったんですよね。孝太郎くんは以前一緒に仕事をさせていただいていまして、上川さんは初めてさせていただくんですが、お二人ともすごく素敵な方なので、撮影の合間にはいろいろお話をしたいなぁとか、先輩だしいろいろ聞きたいなぁとか思ったりしても、とにかく今は自分が演じている尾畑理恵というその女性の人生を共に生きないと嘘になるというか、辛い思いを一人だけさせたら嫌だなぁと思いまして、そういう寄り添うような、一緒に一体となるような気持ちで演じていたので、非常に辛い日々でした(笑)。
MC:あまり現場で会話がないなぁと、お二人は感じられていたんですか?
上川:むしろ、僕は役に入られた時の内田さんとのギャップに驚いていました。カメラが回っている以前のところでは本当に朗らかで、何と言うんですかね、夏のひまわりのような方なんですけれど、尾畑理恵という陰の中で生きているような女性に一瞬にしてなってしまわれるので、その演じるための瞬発力というんですか、毎カットごとに僕は密かに感じておりました。
内田:良かったです(笑)。自分の中で演じるのをとても大事に大事にさせていただいたのと、もちろん(撮影の)合間にお話させていただいていることも自分の栄養になるというか…だから、すごく貴重な経験でした。
上川:時代劇の所作とかご質問されましたよね?
内田:そうですね(笑)。最後思い切って。
上川:そういう内容と関係ない話もしていたというか(笑)。
内田:上川さんの捌きがすごく素敵なので、着物の捌きなどを。
上川:ちょうど(現場に)入られるところでしたよね。
MC:そうだったんですね。
内田:どのようにしたらよろしいでしょうか?というようなことを(笑)。
上川:そういうことを話しながら一瞬にしてなる。素晴らしかったです!
MC:内田さんの姿の裏に上川さんのアドバイスがあったんですね(笑)。
内田:別の作品になりますが、いろいろと(笑)。
上川:お察しください(笑)。