MC:ありがとうございます。そして二階堂ふみさん、16歳の時に原作と出会って、ずっとこの作品を映画化したいという思いがあって、ついに映画がお客様のもとへ届いた日となって、観終わったばかりのお客様を前にするとたくさんの思いが出てくると思います。いかがですか?
二階堂:本当に叶うものなんだなぁというか、それはもちろん、最初の衝撃だったり「やりたい」っていう言葉に出す大切さみたいなものもそうなんですけど、やっぱりこの7年の間に出会うことができた行定監督であったり小川プロデューサーであったり、ほかのキャストの方々、主題歌を書いてくださった小沢さんだったり、本当にいろいろな方々との出会いが全てで、また、こうやって劇場で皆さんに映画を通して出会うことができたので、すごく私にとって思い入れのある、本当に大切な作品になったなぁと思います。
MC:二階堂さんだけではなく、観た私たちにとっても心に突き刺さる作品でしたよね。
(会場拍手)
MC:二階堂さん、こうやって拍手をもらっていかがですか?
二階堂:よく眠れそうです!今日は安眠です、おそらく(笑)。
MC:ありがとうございました!いよいよお別れの時間が近づいてきているのですが、実は今朝、あるお手紙が届きまして、この映画の主題歌を担当されています、小沢健二さんからお手紙が届きました。それを私が代読させていただきたいと思います。
もうずっと前の冬の夜
もうずっと前の冬の夜、岡崎京子さんの家に行くために東京の路上で二階堂ふみさんを待っていると、真っ暗な中に、ふみさんが一人で現れました。療養中の京子さんに負担をかけないために、一人でいらしたのだと思います。ふみさんとぼくは暗い坂を登って、京子さんの家に入りました。
ふみさんが『リバーズ・エッジ』の映画化にかけた熱量は、小宇宙を創れるくらいのものです。それをふみさんは静かにたたえて、京子さんに話をしていました。そこから流れ出した水がこうやって、映画となってみなさんに届きました。
ラッシュを見た時は、ふみさんの顔が京子さんそっくりに見える場面があり、驚きました。あれはなんなのだろうと、今も思っています。吉沢亮くんのあの横顔から川を鳥が飛んでいくシーンは、記憶して、再生して、何度も考えて、音にしていきました。ぼくにとってのヒントは、ふみさんの肩でした。
そうやってできた主題歌「アルペジオ」に声を入れるスタジオでは、ふみさんは言葉の感情を音楽にして、逆に亮くんはすっきりとリズムに凛々しく、録音していました。
ぼくは「アルペジオ」については、「若い人にどう聞こえるか」とか「若い人がどうのこうの」は一切考えませんでした。そういうのは、漫画を描いていた頃の京子さんや、その頃のぼくは嫌いだったし、今も嫌いです。当然。(笑)
世田谷の小さな空間から流れ出した水が、大きな川になって、流れています。
本当に大きなものって、実は結構個人的で、小さくて、かっこ悪くて、理屈が合わなくて、それでも自然に体が動いてできるのではないかと思います。自然に体が動く方向へ、思い切って飛んで、がんばって。
本当に良かったです、『リバーズ・エッジ』。
小沢健二
(会場拍手)
MC:小沢健二さんからのお手紙でした。二階堂ふみさん、いかがでしたでしょうか?
二階堂:感無量です。良かったですね。嬉しいです。
MC:小沢さんから二階堂さんとの思い出が描かれていますけれども、その時の記憶を振り返ってみていかがですか?
二階堂:ついこの間のような感じもするのですが…。この撮影もちょうど1年くらい前にやっていたんですけど、この撮影自体もクランクインするときにみんなで『リバーズ・エッジ』について話したり、自分はこう感じる、自分はこうだと思ったみたいなことを、監督も含めキャスト全員で話して考えて、それでそれぞれの思いであったり、そういう気持ちをぶつけた作品だと思いますので、本当にこうやって皆さんにお披露目できて嬉しく思います。ありがとうございます。
MC:ありがとうございます。吉沢さんはいかがですか?
吉沢:本当に…感無量です(笑)。僕はこのお話をいただいた時は、結構前にふみちゃんと初めてご一緒させていただいた作品の時に、ふみちゃんが「『リバーズ・エッジ』って知ってる?」って言ってそこから始まったんですけど。ふみちゃんは17歳とかから知っているということですごく長いんですけど、意外と僕もこの『リバーズ・エッジ』を思い始めてからは3年くらい経ってるなぁと思って(笑)、もう公開してるんだというのが不思議な感じですね。すごくみんなでいろんな話をして、それがこう形になって皆さんに観ていただいて。やっぱりお客さんに観ていただいて映画は完成するって誰かが言っていたので、たくさんの方々に広まっていく映画になればいいなぁと本当に思っています。
MC:どうもありがとうございました。最後に、皆さんの思いが詰まった作品がこうやって公開されましたので、行定勲監督、代表して一言お願いいたします。
行定:僕も感無量です。映画が完成するということも、映画が作られるということも、いつもすごく奇跡的なことだと思っています。本当に完成するんだろうかと思うんですね。二階堂ふみと出会って、「『リバーズ・エッジ』に興味があるか」と言われて興味ないわけない、だけど心の中では、偉大なる漫画家の岡崎京子が描いた最高傑作を映画化するなんておこがましいという気持ちもありながら、本当にできるんだろうかという思いはありました。ただ、奇跡的なことですね、映画化できるという原動力になった二階堂ふみがまずいて、「映画にとにかくしたいんだ」と、「自分がハルナをやるにはもう時間がない」って言うわけですね。僕らはそれに火が点けられるわけですよね、ある種の挑戦状をもらったような。だから、若い後輩から挑戦状をもらっておっさんの俺たちが動くという、ただそれが本当に完成するのかどうかはその時点ではわからない。映画はたくさんの人の力を借りて完成していくんですけど、そこに小沢さんが加わり、そしてベルリンが僕らの映画を呼んでくれるという、この奇跡的なことが、今日皆さんに届いて初めて帰結するんですよね。できればこの思いがたくさんの人に、一人でも多くの人に広まっていけばいいなという思いで今はいます。本日は本当にありがとうございました。
MC:どうもありがとうございました!以上をもちまして、『リバーズ・エッジ』公開記念舞台挨拶を終了します。皆さん、ありがとうございました!
『リバーズ・エッジ』
2月16日(金)より TOHOシネマズ 新宿他全国ロードショー中
監督:行定勲
原作:岡崎京子
主題歌:小沢健二「アルペジオ(きっと魔法のトンネルの先)」
出演:二階堂ふみ 吉沢亮 上杉柊平 SUMIRE 土居志央梨 森川葵
配給:キノフィルムズ
【ストーリー】 「若草さん、今晩ヒマ? 僕の秘密の宝物、教えてあげる」。若草ハルナ(⼆階堂ふみ)は、彼⽒の観⾳崎(上杉柊平)がいじめる⼭⽥(吉沢亮)を助けたことをきっかけに、夜の河原へ誘われ、放置された“死体”を⽬にする。「これを⾒ると勇気が出るんだ」と⾔う⼭⽥に絶句するハルナ。さらに、宝物として死体を共有しているという後輩でモデルのこずえ(SUMIRE)が現れ、3⼈は友情とは違う歪んだ絆で結ばれていく。ゲイであることを隠し街では売春をする⼭⽥、そんな⼭⽥に過激な愛情を募らせるカンナ(森川葵)、暴⼒の衝動を押さえられない観⾳崎、⼤量の⾷糧を⼝にしては吐くこずえ、観⾳崎と体の関係を重ねるハルナの友⼈ルミ(⼟居志央梨)。閉ざされた学校の淀んだ⽇常の中で、それぞれが爆発⼨前の何かを膨らませていた。そんなある⽇、ハルナは新しい死体を⾒つけたとの報せを⼭⽥から受ける…。
© 2018「リバーズ・エッジ」製作委員会/岡崎京子・宝島社