【全文掲載】松坂桃李「会話したような気に」、鈴木亮平「ほとんどしゃべってない。馴れ合うわけにいかない」緊迫の初対面シーン、現場では「バッチバチ」だった!

MC:では最後に白石和彌監督、お願いできますでしょうか。

白石:監督の白石和彌です。昨年の1回目の緊急事態宣言の後、この作品も撮影延期とか中止になるんじゃないかっていう中、東映さんが「ウチはやりますんで」と言ってくださって。撮影できる喜びとか、こんな時だからこそ、僕たちはエンターテイメントをちゃんと届けなきゃいけないとか、映画って一体どういうものだろうとか、スタッフ・キャストみんなで向き合いながら魂込めて作った映画です。ようやく公開になりまして、本当にありがとうございます。今日短い時間ですがよろしくお願いします。

MC:お願いいたします。松坂さん、いざ続編が始動すると聞いたときには、“楽しみ”そして“不安”どちらの気持ちの方が勝っていましたか?

松坂:圧倒的に不安でしたね。前作が公開されて間もなく、わりとすぐに東映さんから「続編やります!」みたいな情報が出て、その時は「あ、やるんだ? そうなんですねっ」ていうような感じだったんですよね。「あれ…? でも続編やるって事は、僕が役所さんがやっていた立ち位置をやるってことか…?」みたいな思いをちょっとずつ積み重ねていくと、どんどんどんどん緊張感というか不安が高まってきて。前作では役所さん演じる大上さんの背中にくっついて、おんぶに抱っこ状態だったので。今度は役所さんの立ち位置に自分が立つのかと思うと、ちょっと足がガクガクしましたね。

MC:予告編を観るだけでも、(松坂演じる)日岡の変貌というか、ちょっとした違う空気を感じてしまうんですけれども、そんな日岡に持っていったプロセスっていうのは、かなりの苦労があったのでしょうか?

松坂:そうですね。作品の中でも3年、僕の中での時間経過としても3年空いた状態で続編に入ったんですけれども、その中で前作から続編に入るまで、日岡の中で一体何があったのか、どういう思いでこの3年間を過ごしてきたのかを色々考えながらも、最終的に自分の中で今回の日岡のイメージとしては、“狼に育てられた犬”みたいな感じでいこうっていう。本当に漠然としたボヤッとした感じのものを最初にイメージしながら台本を読ませていただいて、そこから少しずつ構築して現場に入りましたね。初日から思ったことは、僕が役所さんの立ち位置をやるとかの云々ではなく、今回ここにいらっしゃるキャストの方々含めて、強烈な方たちが日岡の前にバーッと嵐のように入ってくるので、そんなことも言ってられないと言いますか。この嵐の中に巻き込まれていく中で、これだけの心強いキャスト・スタッフの人たちと一緒に前作を超えていくんだなぁ、超えていけるんだなって思いましたね。

MC:続いては鈴木さん、日岡の前に立ちはだかる最強の存在、上林を演じられましたけれども、上林の魅力的なところ、そして悪役を演じた難しさはどういったところか聞いてよろしいでしょうか。

鈴木:悪役ではあるんですが、我々の仕事は人間を演じることなので、一人の人間としてこれだけ強烈なキャラをどういう風に作り上げていこうかなという時に、ちょうど去年の初めの緊急事態宣言が出て。そこで決まっていた仕事が全部なくなって、机の上にぽつんと残った台本が『孤狼の血 LEVEL2』で。そこから撮影までの半年間、僕には上林という役しかなくて、その分ずっと上林のことを考えたり、いろんなことをリサーチしていく中で、「なんでこの人はこういうことをするんだろう」と思って。上林からこの世界を見てみようと思ったときに、多分お客さんが観ていただく今回の映画の世界とは全く違う世界が見えてきたんですよね。それこそ写真のポジとネガが反転するみたいに、正義と悪が入れ替わって、周りが全員外道で自分だけが唯一真面目に生きているという。そういう人間像が出来上がってきたときに、自分も上林としてしっかり生きられるし、観てくれたお客さんも、人間の本当に迷いがないところに戦慄してもらえるんじゃないかなっていうところから紐解いていくと、上林になったという感じですね。

MC:上林を感じていくと映画が進むにつれて、どんどん上林ならではの正義感が伝わってくるんですよね。

鈴木:「なんて奴だ!」って観てくれればいいんですけどね(笑)。僕だけはそう見ないといけないなぁと思ったんですよね。6ヶ月間もあったので、考えすぎなレベルまでいろんなアイデアが湧いてきてしまって、それを現場で監督にぶつけて、ものによっては却下され、ものによっては採用してもらえて、劇画的に怖いヤクザの役ってこうだよねっていうところじゃない、いろんな面が見えたかなと思います。

MC:監督、鈴木さんの全身全霊の演技を今回の現場で初めて見た時には、どういったエネルギーをいただき、どう感じましたか?

白石:脚本を作っている時から上林は難役だし、誰にしようかと思ってたんですけど、亮平君だったらきっと一緒にこの難しい役を作ってくれるだろうという。ある意味そういう部分では安心感があったので、出てきた時は「なるほど」っていう納得感しかなかったですね。想像していた人が多分この人だったんだなって思わせてくれる強烈な説得力があったので、鈴木亮平さんにお願いして良かったなと思いました。

MC:ありがとうございます、西野さん、村上虹郎さんが演じたチンタとの絆というものが実に印象的だったんですけれども、虹郎さんとの共演の中で印象に残っていることがあれば教えていただけますか。

西野:過去に一度、別の作品でお会いしたことはあって、姉弟役という親しい感じでやるの初めてだったんですけど、久しぶりにお会いしてすぐに「姉ちゃん」って私の事をずっと呼んでくれて(笑)。そのおかげで姉弟の空気感というか距離感を作りやすくしてくれていたのかなぁと思って、すごいありがたかったですね。あとは全部の撮影が終わって、虹郎くんも同じ日だったんですね、終わったのが。最後にスタッフさんとかにご挨拶に周るってなって、私がそういうのを今までやったことがなくて、ちょっと恥ずかしくて「どうしよう…」ってなってた時に、「じゃあ一緒に行く?」みたいな感じで言ってくれたので、もう虹郎くん後ろにくっついて、お世話になったスタッフさんたちに挨拶して。そこでもかなり助けられました(笑)。めちゃくちゃ頼もしかったです(笑)。