MC：そして今作は原作ファンの間では最も泣けるエピソードと言われる宇津帆編を映画化し、アクションと笑いだけでなく、より濃密な人間ドラマも加わりました。堤さんはファブルの因縁の敵で、最もヤバい男、宇津帆役を演じられました。これまで数々の役柄を演じてきましたけれども、ここまで振り切った圧倒的な悪役というのはあまり記憶にないんですけれども。

堤：初めてでしたね、こういう悪党は。悪党には何らかしらの理由があって、そういうものからこういう人間なんだろうと思いながら探していったというか。表面的には表の顔、裏の顔っていう考え方はやめようと思って。表は表で本気でやっている、それが自分の正義感というか。あんまり「ウヘヘヘ」みたいな悪党を演じる気持ちではなくて。監督ともいろいろ相談しながらやっていきましたね。

MCが：やっていることは悪でも、宇津帆のなかでは正義としてやってると。

堤：「そんなに悪いことじゃねぇよ」と。「下手したら正しいことじゃねえの？」みたいな、世の中の犯罪者ってそういう部分があるじゃないですか？ そこをベースにやっていこうと。表の顔や裏の顔を隠すためにっていう単純なことにはしたくなかったですね。

MC：そして堤さんは岡田准一さんとは何度も共演をされていますけれども、本作においての俳優・岡田准一はどのように映りましたでしょうか？

堤：岡田君は何年間に久しぶりに会うことが多いんですけど、どんどん身体が変わっていくというか。映画の撮影中は胸の筋肉がすごかったんですけど、今日久しぶりに会ったら、ちょっとスッとした感じかなと思って。

岡田：今、何も撮影してないで（笑）。

堤：毎回体型が違うので、びっくりしますよね（笑）。

MC：岡田さんは堤さんとの共演はいかがでしたんでしょう？

堤：僕の大事な作品でいつも共演させてもらえる役者さんで、安心感と信頼感と、間違いないと言ったら良い表現かわからないですけど、すばらしい共演者の方として尊敬してますし。一緒にやってくれるだけで安心感がある役者さんなので、堤さんが演じてくれるってことは大事な作品になるなと思いながら臨んでました。

MC：そしてラストの森のシーンでは、かなりの熱演を見せていましたけど。

堤：あれは僕というより、平手（ヒナコ役の平手友梨奈）さんがものすごく変化する瞬間というか、そういうものをどうしたら出せるかなと思っていたので、そのあたりは平手さんが素晴らしかったですね。

MC：岡田さんはラストシーンはいかがでしたか？

岡田：とても大事なシーンで、ヒナコの慟哭というか、感情の流れを大事に撮れるようにこだわってましたし、お芝居をもっと良く撮りたいという思いとか、時期とかで3回くらい撮り直してましたよね。というぐらい、こだわったシーンではあると思います。1回は天候が悪くて森の中だったので、時期をずらして撮りましょうということに。もう1回はの平手さんのもう一個超えたの狙いたいという監督の思いがありましたよね？

江口：一回、「OK」と言ったものを「もう1回やらせてくれ」って言うと、スタッフのみなさんが「えー！？」ってなるんですけど、堤さんが平手さんから引き出そうとしてくれて、いろんななじり方をしていただいたときに、さっき撮ったよりもすごいヒナコが出てきたんですね。それを見て、まだまだ上があるんだなと思って。スタッフにもキャスト皆さんにも頼み込んで、やらせていただいたら、見ていてもこっちが震えるようなお芝居が出てきたんで良かったです。

MC：そして、撮影中もコロナ渦、今もまだ収束していない状況ですけれども、そんな中の映画の撮影、そして公開という点に関しては、岡田さんいかがでしょうか？

岡田：エンターテインメントの大事さとか、求める思いとかもありますし、撮影が中止になったりとかしたんですよね。そこで僕たちが闘ってる意義とか、どういうふうに届けられるのかとか、すごくいっぱい考えた作品ではあるし、やっぱり届けるからには映画館にふさわしい、届けるべき作品を目指す熱意というものを自分たちは持たなきゃいけないと思って取り掛かった作品ですので、そういう思いを込めて皆さんにお届けしたいなぁということを思ってます。

MC：：堤さんにも是非お伺いしたいんですけれども。長年、俳優として活動されてきて、今エンターテーメントが非常に大変な状況でありますけれども、こういう時に映画を届けるということに関してはどのように感じていらっしゃいますでしょうか

堤：すごく複雑な思いというか。僕らはこういうものづくりしかできなくて、でも直面している方たちはエンターテイメントどころじゃないぞっていう気持ちも分かるし。ただ僕らにはこれしかできないということだけなので、何も偉そうな事が言えないというか。ただ、なにかしらの形で救いになったり元気づけになったりすれば、少し救われるかなという感じですね。

MC：ありがとうございます。それでは時間も迫ってまいりましたので、最後に岡田さんから本作の公開を楽しみしている皆様へメッセージをお願いします。

岡田：はい。来月6月18日に公開になります。良いものが出来上がっていると思いますし、前作を遥かに凌ぐ作品に仕上がっていると思います。公開までまだ少しありますけれども、ぜひ楽しみに待っていただけたら嬉しいなと思っています。よろしくお願います。

『ザ・ファブル 殺さない殺し屋』
2021年6月18日（金） 全国公開
監督：江口カン
原作：南勝久「ザ・ファブル」
出演：岡田准一　木村文乃　平手友梨奈　安藤政信　黒瀬純（パンクブーブー）　好井まさお（井下好井）　橋本マナミ　宮川大輔　山本美月　佐藤二朗　井之脇海　安田顕　佐藤浩市　堤真一
配給：松竹

【ストーリー】　どんな相手も6秒以内に仕留める…伝説の殺し屋“ファブル”（岡田准一）。ある日、ボス（佐藤浩市）から「一年間、誰も殺すな。一般人として“普通”に生きろ」と命じられ、佐藤アキラという偽名で、相棒・ヨウコ（木村文乃）と共に一般人のフリをして暮らし始める。猫舌で変わり者のアキラは、今日もバイト先の社⻑（佐藤二朗）と同僚のミサキ（山本美月）と関わりながら“プロの普通”を極めるため奮闘中。一方この街では、表向きは子供を守るNPO代表だが、裏では緻密な計画で若者を殺す最狂の男・宇津帆（堤真一）が暗躍。凄腕の殺し屋・鈴木（安藤政信）と共に、かつて弟を殺した因縁の敵・ファブルへの復讐に燃えていた。同じ頃アキラは、4年前のある事件で自分が救えなかった車椅子の少女・ヒナコ（平手友梨奈）と偶然再会し、これが後に大騒動へと発展する。

©2021「ザ・ファブル 殺さない殺し屋」製作委員会