【全文掲載】佐藤健「明らかに“デ”ラべっぴんだったんですけど…」アクセントは“デ”か“ラ”か?「デラべっぴん」シーンは現場での意見対立から生まれた!

MC:ありがとうございました。本当に評判がいいですよね。私が観た時も興奮していたんですけど、試写で観た人たちのコメントですとか、ライターさんたちや評論家の方々が絶賛されている声も聞こえてくるんですね。実際に公開されまして、白石監督と佐藤さん、何かこの映画を観たという声は聞こえてきますか?

白石:いろいろメール、様々な感想をいただいて、なるほどな~と思ったりとか、「堂下さんの環境が自分のことのようにしか思えない」、大丈夫かな!?とかいろんなことを思いながら声をいただいています。

MC:佐藤さんはいかがですか?

佐藤:僕自身、映画を観た時に、寂しくなる映画が好きなんですね。というのは、このキャラクターが好きになりすぎて、このキャラたちとお別れしなきゃいけないのかという、寂しくなる映画が好きなんですけど、結構そういった感想をもらうことが多いです。この家族たちのこの先が見たい、この家族たちがこの先どう生きていくのかまで想像しちゃう、見たくなるような映画だという感想をいただけて嬉しいですね。

MC:やっぱり家族が一つテーマとなっているので、共感する人が多いのかもしれないですね。

佐藤:なんですかね。

MC:今回、3人の兄妹の田中裕子さん(演じる稲村こはる)の家族がありますよね。それで、堂下さんの家族があって、そして長男・大樹さんの家族があって、あと筒井真理子さんの弓さんの家族も、いろいろ家族の構成が非常にわかりやすく描かれているじゃないですか。そこで聞いてみますが、今回の作品で家族のいいところ、悪いところ、何か共感する台詞やシーンはございますか?佐藤さんから参りましょうか。

佐藤:共感する台詞でいいんですか?(笑)。この映画で共感する台詞、今一個思いついたのいいですか?(松岡演じる)園子が仕事帰りにタクシー会社にベロベロで送ってもらって、タクシー会社に着いてリバースして、「まだ吐くよ」っていう(笑)。あの台詞、めちゃくちゃよい!

松岡:ありがとうございます!

佐藤:一番いいかもしれない!あんなリアルな台詞、久々に映画で聞きました(笑)。

松岡:「ただの夜ですよ」越え、してました?

佐藤:「まだ吐くよ」だよ?(笑)。

MC:まさかのそこですか?(笑)。

白石:あれ、茉優ちゃんのアドリブじゃないですか?

松岡:そうです!

佐藤:台本にはないから。流石ですね!松岡さん(笑)。

松岡:私のそのアドリブを一番だと言われた白石さんですよ。だって、この作品と何年も何年も向き合ってきたわけだから。

白石:そうですね。ありがとうございます。

佐藤:台詞はちょっとアレンジするのをよしとする監督といろいろいる中で、白石さんはもはや意味が変わってもいいくらい変えてもらっていいとおっしゃってましたよ(笑)。

松岡:語尾だけじゃなくて?

佐藤:ニュアンスとかじゃなくて意味まで変えていいって。懐の広い監督です。

松岡:意味が変わっちゃってどうやって戻すんですか?本線に。

白石:それはだから、なんとかするんですよ。

松岡:気合いだった(笑)。

白石:皆さんが見えないところでテンパってなんとかするんですよ。

MC:それこそ、白石監督の役者さんへの絶大なる信頼感ですよね。

白石:はい。そう思っていただけるなら光栄でございます。

MC:そんなアドリブを気に入っていただけたという、松岡さんにお伺いします。

松岡:筒井真理子さんが演じられた弓さんが、ずっとお母さんの介護で苦しんでいて、その中で「私も私の時間が欲しいもん」って言ったのは、私は母は今元気なのでまだ介護の世界にはいってないんですけど、すごく辛かったし、介護だけじゃなくてもずっと一人でお子さんを育てている方とか、何か責任を一身に受けている方って、あの言葉って出てくるじゃないかと思って。あの台詞は強烈でした、監督。

白石:はい。

松岡:はい(笑)。

MC:それでは、鈴木さんはいかがですか?

鈴木:僕は「“デ”ラべっぴん」か「デ“ラ”べっぴん」か(のイントネーション)で揉めているところです。

松岡:ちょっと待って、ちょっと待って、お二人してちょっと外すじゃないですか。私がなんだかバカみたい。

鈴木:MEGUMIさんが小声で「私もそこ」って(笑)。

MEGUMI:私もそこ。お庭で「デラべっぴん」の話をしているところが好きです。

鈴木:あれ、もともと台本には何もなかったんですよ。現場でどっちなんだって揉めて…。

佐藤:いや、明らかに「“デ”ラべっぴん」だったんですけど…。

松岡:「デ“ラ”べっぴん」でしょう?

佐藤:この子(松岡)だけが(笑)。

鈴木:「デ“ラ”べっぴん」だったんです(笑)。

松岡:鈴木さんも「“デ”ラべっぴん」でしたか?

鈴木:俺も「デ“ラ”べっぴん」だと思ってたんだけど、二十歳ぐらいの時に友達に「『“デ”ラべっぴん』だよ」って言われて気づいたっていう流れがあったから。

佐藤:一度通ったんですね。

鈴木:そういう話をしていると監督が「それいいですね。それ入れちゃいましょう」って言って、あそこで言い合っているということになったんだよね。だから現場で生まれたものなので好きですね。

MC:すごいですよね。脚本にない臨場感が生まれて。

白石:臨場感というほどの話じゃないですけどね(笑)。でもそれは取り入れて、そういうところが兄妹の雰囲気に役立つかなと思って。

MC:おもしろかったですよね。それでは、MEGUMIさんはどこでしょうか?

MEGUMI:私も「デ“ラ”べっぴん」だったですけど…。

鈴木:「“デ”ラべっぴん」ね。

松岡:「デ“ラ”べっぴん」になっちゃうんですよねぇ。

MEGUMI:「デ“ラ”べっぴん」って言ってましたけど、緊張感が続くシーンが多い中で、あそこで兄妹が解けていく瞬間、あそこに光が入っていくのが、話している内容はすごくおもしろいんですけど、泣けましたね。すごい好きなシーンでした。

MC:ありがとうございます。では、佐々木さんはいかがですか?

佐々木:僕は「風俗街道五十三次」ですかね。

(会場爆笑)

佐藤:よく全部言えましたね(笑)。正しく間違えずに。ありがとうございます(笑)。

佐々木:(笑)。僕は台詞じゃないですけど、お母さんが本当は最後抱きたいのに抱かずに、だけど15年後にがしって抱くっていうところが、もうそこがたまらなかった!今しか抱けないよってみんな思って観てたと思う。今しか抱けない、あぁ抱かないんだ…それで15年後にがしって抱いて。たまらなかったです。あれがたまらなかった。

松岡:あの力、すごく強かったですよね。痛いくらいに抱きしめてくださったんです。

MC:田中裕子さん、やっぱり名優さんですよね。ちなみに監督は一つとは言い切れないですけど、どこかございますか?

白石:僕はどうやって言うんだろうなとずっと思ってたりするのが、「デラべっぴん」の復刻のほうを万引きした後に橋の上で、お母さんが兄ちゃんに「立派か!立派なのか!」って言うんですけど、あの言い方がすごい、こうくるんだと思いながらツボに入って、母親の強さとかいろんなことが込められた裕子さんの言い方が不思議なんですよね。あれは僕が好きなシーンですね。

MC:一発OKというか、ご本人が決めてあの声で。

白石:そうですね。それは最初のテストの時からああいう言い方だったので、すごいなと思いながら。1回か2回ぐらいだったと思います。

MC:ちなみに、ラストのカークラッシュのシーンあるじゃないですか。あそこは聞くところによると、監督が今回家族を描くうえでとても大切にしていたシーンだと聞いたんですけれども。

白石:そうですね。企画してから4年ぐらい経つんですけど、直前までクラッシュするとは書いてなくて、いろいろ準備をしていく中で、この兄妹の家族もほかの人たちもちゃんとコミュニケーションができてないというか、この家族が今後どうなっていくのかというのが、やっぱりちゃんとぶつかることが先に進むことなのかなと思って、その象徴としてタクシーをクラッシュさせてあのシーンを入れたんですけど。雄二がこんなに車の運転が上手いんだとか、撮りながら思っていたんですけど(笑)。それも含めていいシーンだったなと個人的には思っています。

MC:佐藤さん、あのシーンを振り返ってみていかがでした?

佐藤:結構本当に運転させられました(笑)。びっくりしました。すいませんね、酔いましたよね。

鈴木:ドキドキしたよね。

松岡:私、梅干しのお菓子いっぱい持って入りました。

佐藤:そうなんですよ。酔わないようにね。ありがたい。梅干し舐めながらやってましたね。

鈴木:本当にギリギリを攻めたりするので、毎回ドキドキでしたね。

佐藤:でも楽しかったです。

MC:佐藤さんのドライビングテクニックも素晴らしいということですよね。

白石:素晴らしかったと思いますよ。とはいっても、一応念のために言っておきますけど、カーアクション、全部やってもらってるわけじゃないですからね(笑)。

松岡:何本かは本当に佐藤さんですね。

MC:その流れで聞いてみようと思うんですが、佐々木さんと佐藤さんはバトルシーンもあったじゃないですか。あそこを振り返ってみて撮影はいかがでしたか?

佐々木:違うアクションがありましたよね(笑)。要するにキックね。キックはどう見えていたか知らないですけど、全然痛くないんですよ、正直言うと。健くんが当てて押してくれるので、僕も当たって押されるだけで、別にすごい衝撃があるわけではなく。

佐藤&佐々木:ありがとうございます!

佐藤:手とかが痛くて。ああいうのが一番痛いですよね。手、つくじゃないですか。皮剥けたりするのが。

佐々木:あのシーンはアドレナリンが出てるからそんなことではないもんね。ああいうのがあると役者たちは燃えるよね。

佐藤:そうですね。僕は燃えるというか、正直ドキドキのほうが10倍ぐらいです。大丈夫かなって。ありがとうございました。思い切りやらせていただきました。

MC:佐々木さんはいろんな作品に出ていろんな役者さんともそういうシーンが多いじゃないですか。佐藤さんとのアクションは何か違いはありましたか?

佐々木:安心して蹴られましたね。大丈夫だろうと(笑)。最初座ったけど「立っていただけますか?」と、その通りだなと思って。僕も座っていたらもっと大変なことになると、立ったほうがこっちも蹴られやすいし蹴りやすいし、その後対処しやすいなと思ってて。それは思いましたね。真面目な話。