MC:お話を伺っていて、チームの皆さんが満を持して本当に観てもらいたい、そういった想いが伝わってくるなぁという本作ではありますが、少し話を遡りまして、撮影時のエピソードも伺って参りたいと思います。本作は作品の重要な舞台となる東北でロケを行ったり、フィリピンでもロケを行いましたが、実際にその地に足を運んでのロケというのがいかがだったのかを振り返っていただきたいと思います。まずは有村さんからお願いいたします。
有村:絶対にスタジオやセットでは撮れない感情が生まれましたし、その土地に立つということで、そこに存在することに徹することができるというのは、やっぱり各場所の力にあるなぁと毎回思うんですけど、東北に降り立ってもそんなふうに思いました。そんな東北の空気感が、清隆だったり、(知英演じる)ハンちゃんだったり、(岡山天音演じる)真二だったり、その人たちに対する距離感をきっと生んでくれたと思いますし、そういうあたたかい空気感の中で立てたというのは、とても力をもらったなぁと思います。東北ロケは、知英とか天音くんとか、みんなといる時間が長かったんですけど、瞳子的にいうとハンちゃんがすごく大好きなので、私も知英のことがすごく大好きなんですけど、二人のシーンとかは本当に癒されて、毎日幸せだなぁと思っていました。
MC:観ている側は二人のやり取りにすごく癒される、そんなシーンでもあったんですけど、やはり一番瞳子らしく表現できたような感じはされましたか?
有村:ドキュメンタリーっぽく撮りたい、生々しく撮りたいということだったので、台本を読んで台詞をしっかり頭に入れて、もちろん感情の流れは自分の中で組み立ててはいたけど、立ってみてお芝居してみてみないとわからないことがたくさんあって、瞳子ができたのはハンちゃんとのやり取りの中で完成されていたという感覚で、だからハンちゃんがいてくれたから瞳子がいたという感じでしたね。
MC:そして、坂口さんはぜひフィリピンロケのお話を伺っていきたいんですけれども。
坂口:フィリピンロケ、暑かったですよね!
月川:暑かったねぇ…。
坂口:ほんとに。(MCに対して)大変でしたよね!よねっていうか、ごめんなさい(笑)。すみません、すみません(笑)。撮影してから最後がフィリピンで、僕はクランクアップもフィリピンだったんですけど、一つはやっぱり言葉が難しかったですね。タガログ語を清隆が…。
有村:1カットで全部やり取り撮ってたじゃん。どういう頭の中だったの!?
坂口:頭の中?(笑)。
有村:だってフィリピン語って英語よりも聞き慣れないわけじゃん。どういう…(笑)。どうやったの!?
坂口:どうやってましたっけ?
月川:前日に一回読み合わせした時も結構危うかったよね。(台本を)見ながらでも言えない感じだったから、ダメかもなと思ってたんだけど…どうやったの?(笑)。
坂口:ダメかなと思ってました!?(笑)。
有村:本当にすごいと思って!
坂口:耳でしたね。耳で聞いて、ジャスティン役の子とかも僕からすると先生みたいなものだったので「これ、あってる?」とか聞いたり…。でも、あの長回しは大変でしたね…。
月川:あれ、できてよかったよね。ダメだったらもうどうしようかなと思ってたんだよ、本当に。
坂口:監督が長く撮ってくれるというのはそれまでの撮影で知ってたので、でも長く撮ってもらったほうが楽ではあったんですよ。切って、切って、というよりは、感情が通じてずっとお芝居ができるというか。だから、そこの壁は一個、言葉が違うというのはあったんですけど、一発でしたよね。
月川:スタッフも願ってたけど、めちゃくちゃ熱いし、何回もやりたくないなと思ってたから(笑)。助かった!ほんとに!
坂口:僕も通訳の方に聞いて、100%タガログ語ではなく、「ちょっと日本人の方がタガログ語を勉強したみたいな訛りがちょうどよくあったからよかった」と言っていただいて。
月川:そういう役どころだったから、完璧に喋れる人という設定ではなかったから、ジャスティン役の少年も「役どころにぴったりぐらいの喋り具合だ」って言ってくれて。
坂口:そう言ってもらえて。あとは、フィリピンは村で撮ってるシーンとかって本当に仲良くなっちゃったんですよ。村の少年…エキストラの方なんですけど、もちろん言葉はなかなか通じないんですけど、そこで言葉を超えるじゃないですけど、そういう交流が持てたというのは僕としても嬉しかったし、そこに生きてる清隆としてはとても糧になったというか、それはすごく楽しかったですね。
MC:現地の方々との交流を含め、特別な経験になったと思うんですけれども、撮影自体も長回しでやって感情も高ぶるものもあって、お話に聞いたところによると、涙が止まらなくなってしまったところがあったというお話を伺ったんですが、どのシーンだったんですか?
坂口:あのー…あ、そうか、これはもう大丈夫なのか(笑)。
MC:皆さん、ご覧になった後なので。
坂口:ジャスティンがテロを仕掛けたところに僕がいて、その後、彼が警察に追われて、僕がベッドに座って映像を見ているシーンなんですけど、その映像をちゃんと間に合わせて作っていただけたんですね。本当にテレビで流してくれて。その時に、本当にジャスティンに何もしてやれなかったなって、なんてすごく悲しいことだと思ってしまって、僕もよくわからないんですけども、20分ぐらい泣き通しでしたよね。
月川:もう立ち上がれない感じになってましたね。
坂口:僕もあの感覚はお芝居を今までやってきてなかなかないし、泣くってなると、どこか体がこわばってしまうところがあったりするんですけど、彼のことを考えてベッドに座って映像を見ていたら、もうわけがわからないぐらい…カットがかかってからずーっと泣き通しになってしまって、不思議な感覚でしたね。
MC:これまでの役者人生の中でもなかなかないような経験を本作でして…。
坂口:そうですね。清隆の感情になっていたのかなぁと思うし、ああいう経験ができたのはやっぱり彼が、ジャスティンがいてくれたからっていうのはあるんですけど、とても不思議な体験でしたね。