諏訪敦彦監督「ジャン=ピエール・レオーは僕にとっての青春」『ライオンは今夜死ぬ』初日舞台挨拶レポート

ヌーヴェルヴァーグを代表する名優ジャン=ピエール・レオーを主演に迎え、『M/OTHER』『不完全なふたり』の諏訪敦彦監督が『ユキとニナ』から8年ぶりに撮り上げた、仏日合作作品『ライオンは今夜死ぬ』が、1月20日に公開初日を迎え、諏訪敦彦監督が登壇し舞台挨拶を行った。

s_諏訪監督

「たくさんの方にお越しいただいてありがとうございます。ジャン=ピエールもこの場に居れたらよかったのですが。彼も、日本の様子をきっと気にしているでしょう」と、監督は会場に集まった多くの観客に感謝の言葉を述べ、本作が生まれるきっかけとなった名優、ジャン=ピエール・レオーの話に。「学生時代に多くのフランス映画を見て、ジャン=ピエールに出会いました。映画青年を魅了する何かを彼は持っていました。学生時代、僕は映画に出ていたこともあったんですけれど、その際には彼の真似を必死にしていましたね」と、タバコを取り出し『男性・女性』の有名なシーンである口元に投げる仕草を試みる監督。「ジャン=ピエールは、それほどに影響を受けた、僕にとっての青春でした。でも私だけじゃなくてアキ・カウリスマキ監督もそうだったみたいです。カウリスマキが全編、ジャン=ピエールを真似した映画があります(笑)。彼の特殊性は多くの人々を惹きつけました」と、“監督にとっての青春”と断言する程にジャン=ピエール・レオーは強い思い入れのある、憧れの俳優だったと明かした。

「初めて出会ったのは、カンヌ映画祭で僕がカイエ・デュ・シネマのインタビューを受けていた時に、ジャン=ピエールがそこをスーっと横切ったんです。みんなが「ジャン=ピエールだ!」なんていうから、場が止まったんです。彼は覚えてないかもしれないけれど、僕は憧れのスターだったのだから、鮮明に覚えています。そして5年前。フランスの小さな映画祭で、僕のレトロスペクティブと同時に、レオーの特集上映が組まれました。そして彼は映画祭のプログラムをみて「諏訪って誰だ?」と気にしてくれて、僕の映画を見たいといってくれたんですね。それで後日会ったら、「君の映画は」と言って、グッと親指を出してくれたんですよ。とっても嬉しかったです。そこから食事の機会があって、この映画が生まれることになりました」と夢のタッグを組むことになった、ジャン=ピエール・レオーとの出会いを明かしました。

「彼への演出はすごい細かく行いました。ここで5秒目を閉じて、はい、開いて、と。彼は一つ一つの指示を要求する俳優なんです。だから僕が実際に演じてみるんです。赤いグラジオラスの花を持って、ジャン=ピエールの真似をする僕をみて、彼が真似をするんです(笑)」と、その場面を想像した観客たちから笑い声が漏れた。そして印象的だったシーンについても。「ジャン=ピエールが子どもたちとスープを食べているシーン。その際のジャン=ピエールの表情が、今までに見た事もない優しい笑顔で、フランスの撮影スタッフも「あんなジャン=ピエールを見た事がない!」と一様にいうんです。きっと非常に無礼で、自由な子どもたちのおかげで、その笑顔は観れたんじゃないかなと思っています」と多くの映画に出演してきた俳優の、初めての表情を映した奇跡を感慨深く監督は語った。

本作では「子供たちが見れる映画を作りたいと思ったんです」と語る諏訪監督。「子供達は、率直だからある意味怖い観客なんです。フランスにて子供向けの上映会をおこないました。どういう反応してくれるかと緊張していたのですが、エンドロールが流れると、歌を歌って手拍手したりとすごくノリノリで見てくれました。この映画の中でも10人の子供がいて、ジャン=ピエールも自由にふるまっている。ぜひ皆さんにも、子どものように本作を楽しんでいただければと」と大人たちにはない、子供たちの奔放さに魅せられたと語る諏訪監督。まだまだ話しは尽きず、時間の限り本作への熱い想いを監督は語り、多くの秘話を聞けた観客は大満足な様子で、大きな拍手の中、舞台挨拶は終了した。

『ライオンは今夜死ぬ』場面写真

『ライオンは今夜死ぬ』
1月20日(土)より、YEBISU GARDEN CINEMAほか全国順次ロードショー中
監督・脚本:諏訪敦彦
出演:ジャン=ピエール・レオー ポーリーヌ・エチエンヌ イザベル・ヴェンガルテン
配給:ビターズ・エンド

【ストーリー】 南仏コート・ダジュール。死を演じられないと悩む、年老いた俳優ジャン。過去に囚われ、かつて愛した女性ジュリエットの住んでいた古い屋敷を訪ねると、美しい姿のまま幻となってジュリエットが彼の前に現れる。さらに、屋敷に忍び込んできた子どもたちからの誘いによって、突然はじまった映画撮影。撮り進めるうちに、ジャンは過去の記憶ともう一度向き合い、忘れかけていた感情を呼びこしていく。そして残された時間、ジャンの心に生きる歓びの明かりがふたたび灯されていく。

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