『劇場版 きのう何食べた?』『臨場 劇場版』など数々の個性的な役柄を演じてきた内野聖陽が主演し、注目の若手女優・北香那をがヒロインに扮し、『さよならくちびる』『月光の囁き』などの塩田明彦監督がオリジナル作品として描く『春画先生』が、10月13日より公開中。それを記念して、10月14日に新宿ピカデリーにて公開記念舞台挨拶が行われ、内野聖陽、北香那、柄本佑、安達祐実、塩田明彦監督が登壇した。
登壇者一同は、「土曜日の朝早くから“濃い”映画を観ていただきありがとうございます」と感謝の想いを述べた。思い出に残っているシーンについて内野は春画先生こと芳賀一郎が「ベッドの下から出てくるシーン」をピックアップ。台本を読んでいる時から「ベッドの下で芳賀はどんな表情で、どんな気持ちでワクワクしているのかを一番観たいと思っていました」と笑顔でコメント。実際にそのシーンを映像で観た感想は「好きでした」とニヤリ。「自分の近くに芳賀のような人がいたら、心が寛容になるし、楽しいし、平和だと思います。僕もリミッターを外したいという気持ちになります」と芳賀というキャラクターへの愛を口にした。
脚本を読み終わった時に、頭の中で衝撃音が鳴った感覚があったと明かした北。その感覚を抱えたままもう一度読み返した時は「愛すべき変態たちが幸せに突っ走っていく姿が美しいと感じました。あの衝撃音は作品に一目惚れした瞬間の音だったのだと思います」と登場人物に心を奪われた瞬間を振り返った。愛すべき登場人物たちを演じるキャスト陣を知り、「絶対にこの中でお芝居をしたいと感じました」と台本を読んだ段階から、このメンバーとの共演に強い思いがあったことにも触れていた。
劇中では、安達演じる芳賀の亡き妻の姉・藤村一葉が、北演じる芳賀の弟子・春野弓子にとある飲み物を飲ませるシーンが登場する。台本を読んだ時は「今だから言うけれど、引きました」と告白した内野。塩田監督は「安達さんの演技が巧すぎて…」と衝撃シーンでの安達の芝居を絶賛。脚本を読んだ時に「どうやるのかな?」と一葉の演じ方を想像したという安達だが「結構、好きなタイプのお話なので、いろいろやりようがありそうでワクワクしました」とニコニコ。そんな安達に鞭で打たれるシーンがある内野が「安達さんが本気モードだから、ちょっと目覚めそうになりました」と話すと、塩田監督が「リハーサルの時に、『これが気持ちいいんだー!!』って叫んでいました」とツッコミを入れる場面も。叫んだことは覚えていないとしながらも内野は「覚醒していたのだと思います」と断言。叫ぶ内野の姿を見て「喜んでいるように見えましたし、もっといけるかもという気持ちでやっていました。この人(内野)はMなんだとも思いました」と嬉しそうに話した安達は、そのやりとりがあったせいか、内野に対しては「根っからのM」という印象を持っているという。自分は根っからのSだと思っていた内野は、芳賀役を演じられるか心配になり、塩田監督に相談したところ、回答は「見るからに春画先生です」だった、と照れながら話した。
柄本は「笑いながら脚本を読んだし、メルヘンチックという感じでした」と脚本の印象を語ると、塩田監督は「大人のおとぎばなしです」と解答。「今後、鞭で打たれる機会はないなと思ったので、ちょっと内野さんが羨ましかったです」と笑みを浮かべた柄本も、インパクトあるシーンで観るものを惹きつける。劇中で柄本が身につけているパンツ(下着)は、鮮やかなブルー。これは江戸の空の色という意味もあるそうで、実は柄本のアイデアだった。「形はTバックと決まっていたけれど、衣装合わせの段階では色は白か黒で迷っていて。辻村っぽくないと思った時に、ちょうど衣装合わせの部屋から見た空がよく晴れていて。『江戸の空のようなブルー、どうですかね?』と提案したら塩田監督が走ってきて、『それ、いいですね!』ということで決まりました(笑)」と経緯を解説。空色のパンツにしたからこそ爽やかに「おはよう!」というセリフが出た、とも付け加えていた。
イベントでは自身が“変態”だと思うところを発表する場面も。内野は「役者という仕事自体が変態だと思います」と話し、その理由について「セリフ1行を研究して、裏を読み、掘っていく。普通はそんなことしないけれど、苦じゃないからやっちゃいます」と解答。「匂いの原因を辿ること」が自身の変態ポイントだという柄本が「人とすれ違った時になんとなくその人の匂いを嗅いでしまいます」と明かすと、安達も「分かります。香りでその人を覚えたり、思い出したりします。例えば、エレベーターに内野さんが乗った後に乗ったとして、『あ、内野さん乗ったんだな』って分かると思う」と反応。内野が「え!もう加齢臭出ていたのかもしれませんね」と慌てると、安達が「例えです!実際に内野さんの香りがしたわけではなく、香水の残り香とかで思い出すこと、ありますよね!(笑)」と大爆笑。安達の返しにホッとした様子の内野に共演者や会場も大笑いしていた。
話題は変態からフェチの話へ。「うなじや鎖骨、足首には目がいきます」という内野と、「僕は膝!」と答えた柄本が盛り上がる。塩田監督が「柄本くんはすごく手が綺麗。撮影している時に綺麗な手をしているなぁ、と思っていました」と明かすと、柄本は「手はあまり自信がないところだったので、嬉しいです」と自身の手を見つめ、嬉しそうにしていた。北は「コレクションしてしまうくらい、制服が好き。セーラー服が好きで、学生の時にセーラー服じゃなかったので、どうしても着たくて買ってしまいました(笑)。先日、妹も高校生になって、妹の制服をこっそり着て、誰にも見せられないけれど、写真も撮りました」と制服フェチを告白。安達は「軽いところで…」と前置きし、ミルフィーユを1枚1枚はがしながら食べることとニヤリ。柄本も同調し、「僕はバームクーヘンを1枚1枚剥がしながら食べます!」と似たようなフェチに喜んでいた。
クセが強めな純愛映画にちなみ、恋をしたらどういうタイプになるのかを内野が回答することに。ガシガシ攻めるように見えて実は恋愛には消極的だという内野は「遠くから見て、告白せず、そのまま終わるタイプ。例えばホームセンターで働く女性に恋をしたら、次もドキドキしながらお店に行きます。でも、何もしない。そして次に行った時にはいなくてガッカリする。秘めたる恋心を抱きながら見守るタイプ。いつの間にか恋の対象が消えてしまうというパターン」と解説。北は「意外!」と驚き、安達は「本能的にいくタイプだと思った」と微笑み、柄本は「すごく繊細だからイメージ通り」と反応。「みてくれがオスっぽい感じで、ガシガシ行きそうに見られがちだけど、内部は乙女です。いや、乙女じゃないか。乙女だと別の作品に…」とニヤニヤした内野は「雑な時は雑だけど、繊細な時はすごく繊細。すごく極端です」と自身のタイプを分析。『春画先生』のイベントは、フェチや愛を語る和気あいあいとした雰囲気に包まれたまま幕を閉じた。
『春画先生』
2023年10月13日(金)より、全国ロードショー
監督・原作・脚本:塩田明彦
出演:内野聖陽 北香那 柄本佑 白川和子 安達祐実
配給:ハピネットファントム・スタジオ
【ストーリー】 “春画先生”と呼ばれる変わり者で有名な研究者・芳賀一郎は、妻に先立たれ世捨て人のように、一人研究に没頭していた。退屈な日々を過ごしていた春野弓子は、芳賀から春画鑑賞を学び、その奥深い魅力に心を奪われ芳賀に恋心を抱いていく。やがて芳賀が執筆する「春画大全」を早く完成させようと躍起になる編集者・辻村や、芳賀の亡き妻の姉・一葉の登場で大きな波乱が巻き起こる。それは弓子の“覚醒”のはじまりだった。
©2023「春画先生」製作委員会