アルフレッド・ヒッチコック監督デビュー100周年、映画史に最も大きな影響を与えた巨匠の驚きの演出魔法の“秘密”を解き明かすドキュメンタリー映画『ヒッチコックの映画術』が、9月29日より公開されることが決定した。併せて、予告編、ポスタービジュアルがお披露目となった。
“サスペンス映画の神様”とも称されるアルフレッド・ヒッチコック。イギリス生まれの彼は、サイレント映画時代からヒットメイカーとして君臨。イギリス映画界からハリウッドへ渡ってからも、監督作の『レベッカ』(40)が第13回アカデミー賞で作品賞を受賞するなど、輝かしいフィルモグラフィを積み上げてきた。未完成に終わった幻の監督デビュー作「Number 13」(1922)の監督デビューから100年。映像が氾濫するこの時代においても、ヒッチコック作品は今なお映画を愛する者たちを魅了し続けている。本作は「本人」が自身の監督作の裏側を紐解くスタイルで、その“面白さの秘密”を解き明かしていくドキュメンタリー作品である。膨大なフィルモグラフィと過去の貴重な発言を再考察し、観客を遊び心と驚きに富んだヒッチコックの演出魔法の世界へと誘ってくれる。
監督と脚本は「ストーリー・オブ・フィルム」シリーズ(11)で6年の歳月をかけて約1000本の映画を考察しながら映画史を紐解いて見せたマーク・カズンズ。
本作では、『白い恐怖』(45)や『めまい』(58)、『北北西に進路を取れ』(59)や『サイコ』(60)など名作のヒッチコック演出が冴え渡るシーン解説の数々に加えて、現在日本では観ることが困難な『快楽の園』(25)や『ダウンヒル』(27)といった初期作品の本編フッテージを駆使しているのも嬉しい。ヒッチコックの演出テクニックが視覚的に解き明かされてゆくマーク・カズンズ流のアプローチも、この映画の大きな魅力のひとつだ。
予告編では、「映画の秘密、教えます。」のキャッチコピーとともに、ヒッチコック「本人」がナビゲートする形で、遊び心と驚きに満ちた映画作りの裏側を垣間見せてくれる作りになっている。1980年に亡くなっているヒッチコックが2022年製作の本作にどのような形で登場しているのかは本編を観てのお楽しみだが、予告編だけでも「サスペンス映画の神様」のエッセンスが詰まっているのを感じられ、このドキュメンタリーだけでなく映画史に輝くヒッチコックの作品群を改めて観たくなるような内容に仕上がっている。
「ヒッチ」の愛称で親しまれたアルフレッド・ジョゼフ・ヒッチコックは、1899年8月13日ロンドン郊外に生まれた。厳格なカトリックの家庭で育ち、聖イグナチウス寄宿学校で学んだのち、1915年にヘンリー電信ケーブル会社に入社すると、広告部門で製図工からデザイナーとなる。1920年にイズリントン撮影所へ入所後、サイレント映画の字幕制作を手掛けるようになり、やがて脚本や助監督を担当。当時<ドイツ表現主義>の時代にあった独・ウーファ撮影所で共同製作に参加したのち、未完成に終わった幻の監督デビュー作「Number 13」(22)を経て、「快楽の園」(25)が監督作品として初めて公開された。1926年には、撮影現場で出会ったアルマ・レヴィルと結婚。イギリス映画としてのトーキー第1作「恐喝(ゆすり)」(29)や『暗殺者の家』(34)をヒットさせたことからハリウッドに呼ばれ『レベッカ』(40)を監督。この作品がアカデミー作品賞に輝いたことでアメリカでも成功を収め、その後もおよそ年に1本のペースで監督作を発表する。50年代に全盛期を迎え、1957年からは「ヒッチコック劇場」でテレビの世界にも進出。アカデミー賞には5度監督賞候補となりながらも無冠に終わるなど不遇な面がある一方で、今なお評価の高い『サイコ』(60)などサスペンスをテーマにした作品を中心に監督したことから“サスペンス映画の神様”とも呼ばれる。1979年にはイギリス王室からナイト<サー>の爵位を受けた。1980年にハリウッドで亡くなる。
『ヒッチコックの映画術』
2023年9月29日(金)より、新宿武蔵野館、YEBISU GARDEN CINEMA、角川シネマ有楽町ほか全国公開
監督:マーク・カズンズ
配給: シンカ
© Hitchcock Ltd 2022