ジャン=クロード・ルソー「吉田兼好の声が聞こえる」コメント到着!『にわのすなば GARDEN SANDBOX』12月10日公開

『ヴィレッジ・オン・ザ・ヴィレッジ』の黒川幸則監督の最新作で、第33回マルセイユ国際映画祭コンペティション部門に正式出品され好評を博したロードムービー『にわのすなば GARDEN SANDBOX』が12月10日より公開されることが決定した。併せて、フランスの現代映画作家のジャン=クロード・ルソーと、作家・音楽家の中原昌也よりコメントが寄せられた。

友達の誘いで知らない町、十函(とばこ)にアルバイトの面接に訪れたサカグチは、理不尽な仕事を断って家に帰ろうとするが、なぜかすんなり帰れずに、町をさまよい謎めいた出会いと別れを繰り返す…。引きこもり・自粛をせざるを得ない窒息しそうな社会から逃れ、たとえ無職で手ぶらでも、他者と共に愉快なひと時を過ごす、この映画はそんな時間を描き出す。

ロケーションの中心となったのは埼玉県川口市。映画『キューポラのある街』の舞台にもなった、かつては鋳物工業で栄えた街。東京のベッドタウンとなった今でも住宅街の中に鋳物工場が散在し、歴史の層を感じさせる。撮影現場となった不二工業がある領家工場街も、かつては荒川の支流・芝川沿いにたくさんの町工場が並んでいた。この地で幼少期を過ごした画家・井上文香さんが往時の記憶をもとに描いた絵本「青の時間」との出会いをきっかけに、時代の変遷の中、都市近郊の、今では失われつつある風景の痕跡を遊歩するこの映画『にわのすなば』は作られた。

出演は、独特のテンポで観る者を迷宮に誘うカワシママリノ(『ふゆうするさかいめ』)、これまでにない軽やかな魅力にあふれた村上由規乃(『オーファンズ・ブルース』『街の上で』)を中心に、キノコヤに集う遠山純生、新谷和輝といった映画評論家・研究者が、黒川監督たっての希望で出演しています。そこに柴田千紘(『恋の渦』『身体を売ったらサヨウナラ』)、西山真来(『夏の娘たち〜ひめごと〜』)、佐伯美波(『ヴィレッジ・オン・ザ・ヴィレッジ』)、中村瞳太(『ロストベイベーロスト』)、そして日活ロマンポルノ出身の風祭ゆき(『セーラー服と機関銃』『キル・ビル』)らが個性的な持ち味を生かし、それぞれの庭を掃き続けている。

予告編は、主人公サカグチが知らない街に仕事探しに来たところから始まる。すぐに帰るはずが、サカグチを店の2階に泊めるカフェバーの店主、十函一の旧家に暮らす女性、サカグチと意気投合するヨシノなど、道中で出会う個性的な面々との謎めいた出会いが映し出されると共に、「見失った行き先でもう少し遊んで行こうかな」というサカグチのかすかな心境の変化を綴ったテロップが添えられている。帰りたいのに帰らない“行先不明”のロードムービーのムードが切り取られた予告編となっている。

■ジャン=クロード・ルソー(映画監督)コメント 翻訳:新谷和輝
瑞々しく、軽快で、それでいてとても深い。奇妙な遭遇があるライトなロード・ムービーで、人生がそう進むように迷いながら昼も夜も歩き続け、思いもよらず人と出会い、急に布団が頭に降ってくる。ベランダに干された布団のように爽やかで柔らかく…しかしそれが突然降ってくるだけで、散歩の呪いを変えてしまう。この場面はあなたの映画で最も素晴らしい時間の一つです。そして日本映画が今でも小津を覚えていられるということに気づきます。穏やかで、孤独で、悲しみに近いけれど決して痛々しくはない。たとえ待ち合わせを逃そうともう一度集まればよいだけのこと、遊ぶこと、今まで乗ったことがなくてもスケートボードで道を下ってみること、踊ること…ひとりで必死に踊ること…しかし大音量の音楽のむこう、あなたの映画の奥のほうでは、吉田兼好の声が聞こえるのです。

■中原昌也(作家・音楽家)コメント
黒川幸則監督の最新作『にわのすなば GARDEN SANDBOX』に出会った興奮を伝えたい!タイトルからして自分が映画に求める「オレの雑木林」感を、最も簡単に実現してしまった究極の作品。これにはやられた!おそらく「キノコヤ」周辺のつまらないはずの近所で撮影。それが凄く映画として十分に面白い!そこでベテラン風祭ゆきが登場すると、急に位相に変異が!どこの映画館でかけてもオーバースペックという奇跡が刺激的。まさに待ち望んでいた現代映画の真骨頂に間違いない。雑木林映画の『市民ケーン』ここに誕生!

『にわのすなば GARDEN SANDBOX』
2022年12月10日(土)より、ポレポレ東中野にて連日18:30〜公開
監督:黒川幸則
出演:カワシママリノ 村上由規乃 遠山純生 新谷和輝 柴田千紘 西山真来 佐伯美波 中村瞳太 風祭ゆき