加賀まりこ「街で障害を持つ人を見かけたら、手を差し伸べなくてもいいので、微笑んでやってください」

加賀まりこが54年ぶりに主演し、塚地武雅と親子役で初共演を果たした『梅切らぬバカ』が、11月12日より公開される。このほど、10月22日にユーロライブにてトークイベントが実施され、主演の加賀まりこが登壇した。

本作では、老いた母親と自閉症の息子が地域コミュニティとの交流を通じ、自立の道を模索する様を描く。障害者への偏見や無意識の差別などの問題を真正面から描きつつも、母と子の揺るぎない絆と、共生への希望、日常の尊さといった温もりを感じさせる稀有な作品となっている。

上映後のトークショーに登場した母親役の加賀は、「先程、上映が終わった時に、皆さんに拍手を頂いて、それがとっても嬉しかった。本当に今日はありがとうございます」と笑顔で挨拶。映画の反響について「観てくださった方たちの心に響いてると感じることが多いので、この作品に出会えて、女優をやっていて良かったなと思います」としみじみと語った。

自分自身で出演する作品を決めているという加賀は、「(役を)事務所が決めるなんて言い訳。今どきの俳優さんを見ていて、本当にしばりがきついのか、それを言い訳にしてるのか分からないけど、事務所のせいにするのが一番簡単」と言い放つ。「事務所がなくても生きていける見本になりたい。どんどん自分の意志で仕事をしていほしい」とし、マネージャーもいない加賀はギャラ交渉も自分でしているそうで「請求書も自分で書きます」と明かしていた。

「すごいバッシングの中」で生きてきたという加賀は、「それを痛いとかかゆいとか感じないようにしてきた。世間体なんて一銭にもならない」と吐き捨てる。そのように母親に教わったそうで、「“どこの大学行ったからすごい”みたいな発想が、まるでない家庭で育った。一番大事なのは心意気」と語った。

最後に加賀は「観終わって(塚地武雅演じる)忠さんを、好きにだと思ってくれたらそれが一番嬉しい。そして、街で障害を持つ人を見かけたら、手を差し伸べなくてもいいので、微笑んでやってください。それだけお願いします」と真剣に訴えて、イベントは終了した。

『梅切らぬバカ』
11月12日(金)より、シネスイッチ銀座ほか全国公開
監督・脚本:和島香太郎
出演:加賀まりこ 塚地武雅 渡辺いっけい 森口瑤子 斎藤汰鷹 林家正蔵 高島礼子
配給:ハピネットファントム・スタジオ

【ストーリー】 山田珠子(加賀まりこ)は、息子・忠男(塚地武雅)と二人暮らし。毎朝決まった時間に起床して、朝食をとり、決まった時間に家を出る。庭にある梅の木の枝は伸び放題で、隣の里村家からは苦情が届いていた。ある日、グループホームの案内を受けた珠子は、悩んだ末に忠男の入居を決める。しかし、初めて離れて暮らすことになった忠男は環境の変化に戸惑い、ホームを抜け出してしまう。そんな中、珠子は邪魔になる梅の木を切ることを決意するが…。

©2021「梅切らぬバカ」フィルムプロジェクト