一昨年、NHKで放送された、京都の猟師・千松信也の暮らしに密着したドキュメンタリーを、300日の追加取材を行い映画化した『僕は猟師になった』が、6月6日より公開される予定であったが、新型コロナウイルスの感染状況を鑑みて公開を8月に延期することとなった。このほど、大ヒット狩猟コミック「山賊ダイアリー」の作者である岡本健太郎、「罠ガール」作者の緑山のぶひろ ほか、いち早く本作を鑑賞した各界著名人からコメントが寄せられた。
▼著名人 コメント
■北條誠人(ユーロスペース支配人、SAVE the CINEMA「ミニシアターを救え!」プロジェクトの呼びかけ人のひとり)
自然のなかでの人間のあり方を問いかける『僕は猟師になった』は、コロナ禍を経験した今だからこそ、じっくり観てほしい作品です。公開日が延びてしまって申し訳ございませんが、大きなスクリーンでご覧いただけるようにがんばっていきます。劇場でみなさんをお待ちしております。
■岡本健太郎(漫画家・「山賊ダイアリー」作者)
千松さんの猟は食料を得るための手段だ。猟師は生き方であって仕事でもなければ趣味でもない。猟師の先輩は往々にして後輩に説教するものだが、千松さんは、他人の個も、自分の個も尊重するのでぼくにそんな説教したりはしない。これもそういう映画だ。見ている僕たちに自然の尊さを盾にして説教してきたりはしない。
■緑山のぶひろ(漫画家・「罠ガール」作者)
肉を食べるため、獣害から田畑を守るため、目的は違えど猟の最後に動物の命を奪う瞬間は必ず訪れる。その瞬間に慣れることはきっとなく、買った肉にはその瞬間が訪れないありがたさを改めて感じてほしい。
■安島薮太(漫画家・「クマ撃ちの女」作者)
「この家族は大丈夫そうだ」ソレが素直な感想でした。「生き物を獲って食う」生き方・狩猟ライフもそうですが千松さんの生きる姿勢こそがそう感じた一番の要因だと思います。そう感じさせてくれる人がこの国にどれだけいるのだろう。
高山なおみ(料理家・文筆家)
生きたがってもがくイノシシをなぐり、気絶させるとき、馬乗りになってナイフでとどめをさすとき、人が、生が、何もかもが悲しく、私は五歳の子どもになって泣いた。千松さんは痛みを取り込みながら生きている。私の体にも肉の悲しみが宿っていること、忘れないでいようと思う。
■細川亜衣(料理家)
“食べる”って? あらためて考え始めたが、答えは出ない。近すぎて、遠い、私にとっては永遠の難題である。
■谷川俊太郎(詩人)
千松さんはじかに生きている、スタッフはじかに撮っている、じかにという直接性が、この映画を謙虚な秀作にしている。
■植本一子(写真家)
耳から離れない猪や鹿の最後の叫びは、私たちが普段食べているどんな肉にも、きっと同じようにある。そんなことも分からなくなっていた自分に驚く。
■榎本憲男(小説家)
動物好きの少年は成長すると、罠を仕掛け、獣を捉えて、こん棒で殴りつけて失神させ、ナイフで心臓えぐり、皮を剥いでその肉を食らう猟師になった。なぜだろう? 千松信也さんの筆による原作本をめくってもその答えは明瞭に書かれていない。しかし、千松さんの日々を捉えた映像は雄弁に語る。殺して食うという行為によって、千松さんは獣と一体になっているのだ。そこに神聖さの源泉が宿っているのだ。まぶしい映画である。
■星野概念(精神科医など)
けもの道の様子で猪や鹿の行動を想像したり、雀の飛翔を見て着地場所を見極める。自然の流れの中に入り逆らわず、他の生物と対等に居る。そのような感性で生きたいと思うけど、俗世にまみれた自分には全然できません。憧れの人をまた見つけました。
『僕は猟師になった』
8月より、ユーロスペースほか全国順次ロードショー
監督:川原愛子
出演:千松信也
ナレーション:池松壮亮
配給:リトルモア マジックアワー