山形県酒田市に存在した伝説の映画館「グリーン・ハウス」についての証言を集めたドキュメンタリー『世界一と言われた映画館』が、2019年1月5日より公開される。このほど、俳優、映画評論家、監督、劇作家など各界で活躍し続ける著名人より本作を応援するコメントが寄せられた。併せて、グリーン・ハウス元支配人の佐藤久一氏の写真、グリーン・ハウスの場内の写真がお披露目となった。
▲グリーン・ハウスの場内
「西の堺、東の酒田」と称された商人の町・山形県酒田市に存在した、映画評論家・淀川長治が「世界一の映画館」と評した伝説の映画館、グリーン・ハウス。少人数でのシネサロン、ホテルのような雰囲気のロビー、ビロード張りの椅子等、その当時東京の映画館でも存在しなかった設備やシステムを取り入れ、20歳の若さで支配人となった佐藤久一が作り上げたこの夢の映画館は多くの人々を魅了した。しかし、甚大な被害をもたらした1976年の大火災・酒田大火の火元となり、グリーン・ハウスは焼失してしまう。本作では、それから40年余りの時を越えた今、グリーン・ハウスへかつて集った人々が、煌めいた思い出をもとに言葉を紡いでいく。ナレーションは、今年2月に急逝した名優・大杉漣が務める。
▲グリーン・ハウス元支配人の佐藤久一氏
併せて、本作公開を記念して“「世界一の映画館」大募集キャンペーン”を実施。心に残っている特別な映画館やそこでの思い出を、Facebook、Twitter、Instagramに「#世界一の映画館」というハッシュタグをつけて投稿した応募者の中から抽選で、グリーン・ハウスで無料配布されていた上映プログラムを再現した「復刻版グリーンイヤーズ」をプレゼントする。(詳細:公式HPキャンペーンページ http://sekaiichi-eigakan.com/comments/)
著名人 応援コメント
■津田寛治(俳優)
全国に点在する地元の映画館が作り出す独特で愛おしい小世界…その最たるものを象徴するかのようなグリーン・ハウス。伝説の映画館が映画を観せるために使った数々の魔法…その魔法をかけた人々、そしてかけられた人々の言葉が、客席やロビーやスクリーンに隠された秘密を明かしてくれる。観終わった後、あたかも本作をグリーン・ハウスで観たような錯覚が残った。そして、隣の席には大杉さんがいたような空気も残った。
■田中要次(俳優 ドラマ「HERO」、映画『愛しのアイリーン』ほか)
上質な映画をもてなしていた映画館の事が映画の中で語られる。そんな関係性が無限ループのように感じられて面白い。姿なきグリーン・ハウスは取り巻いた人々の記憶の言葉で蘇り、大杉漣さんの言霊と共に永遠となった。映画と映画館が改めて愛おしくなりました。
■樋口尚文(映画評論家/映画監督 『葬式の名人』(2019年公開))
地方の町にとびきり洒脱な文化の薫りをもたらし、こよなく愛された映画館が、町じゅう灰燼に帰すほどの大火の火元となってしまった悲劇。だが、焼失から40余年を経て今もなおいきいきとこの劇場の麗しき記憶を語る人びとは、申し合わせたようにその悲劇の核心に言及しない。映画と音楽と珈琲を愛した粋人が、凝りに凝った劇場を興し、もてなし心をこめて地元の人びとに贈り届けたココロの宝物。その蓄積は、大火が奪ったモノの数々よりもかけがえのないものだったということを、この沈黙が雄弁に物語る。そしてそこが、この穏やかに進行するドキュメンタリーの紙背にひそむ、最もドラマティックなところなのである。
■後藤ひろひと(劇作家・山形県出身)
海外だろうが国内だろうが私はどこかを訪れたら必ずその土地の映画館で映画を観る。シネコンだろうが単館だろうが映画館の空気を感じる事で私はその土地の魅力を測る。もしもグリーン・ハウスが現存していたら私は迷わず酒田市への永住を決める事だろう。映画館を主人公としたこの映画。文化の発信基地として愛され、大火の火元として蔑まされた世にも複雑な主人公のドラマを是非とも多くの人に見届けていただきたい。
■内藤誠(映画監督)
コーヒーの薫りが漂うグリーン・ハウスに入ると、開幕ベルの代わりに「ムーンライト・セレナーデ」が流れて映画が始まる。それだけでもう、高校時代、愛知県の刈谷日劇で『グレン・ミラー物語』を見て、近くの喫茶店で、いまも持っているチラシを読んでいたわたしにはジーンときた。拙作『酒中日記』を見てくれたという佐藤広一監督は世界一の映画館を作った佐藤久一がまだ存命中に撮影を開始したかっただろうなと思ったりした。
■岩崎夏海(作家)
近年の変化の激しい時代に我々がまず学ばなければならないのは歴史である。それも、あえていわせてもらうと戦後昭和の「あだ花」として狂い咲いたこの映画館グリーン・ハウスのことは、しっかりと記録と記憶にとどめ、研究を深めていく必要があると思う。この映画はその嚆矢となるだろう。
■大屋尚浩(「港町キネマ通り」支配人)
既に存在しない映画館のドキュメンタリーって成り立つのだろうか?と、正直半信半疑でしたが、映画館だけではなく酒田の町と、昭和の風俗史を巧みに絡めた構成に感心いたしました。何よりも、大火の原因となった負の歴史を背負う映画館を真正面から見つめるという点において、(不謹慎かも知れませんが…)ある意味スリリングだった事が最後まで観客側のテンションをキープ出来た要因だったと思います。やはり映画館って素晴らしい場所ですね。
■古泉智浩(漫画家)
素晴らしい映画館がかつて山形の酒田にあった。そこで最後に上映されていた映画は大傑作『愛のコリーダ』ともう一本『グリーンドア』。私はカナザワ映画祭で見た。グリーン・ハウスで最後に見た映画が『グリーンドア』だった人もいるはずで、世界一の映画館で見た最後の映画が、世界一つまらないポルノ映画だった人の気持ちを思うと、たまらないものがある。『グリーンドア』には時間とお金を返せという気持ちしかなかったのだが、こうしてグリーン・ハウスの映画で振り返る機会があり、数奇な縁を感じた。映画も映画館と同じく素晴らしかったです!映画館が映画になるなんて『ニュー・シネマ・パラダイス』みたいですね!
『世界一と言われた映画館』
2019年1月5日(土)より有楽町スバル座ほか全国順次公開
監督・構成・撮影:佐藤広一
プロデューサー:髙橋卓也
証言協力:井山計一 土井寿信 佐藤良広 加藤永子 太田敬治 近藤千恵子 山崎英子 白崎映美 仲川秀樹
ナレーション:大杉漣
配給:アルゴ・ピクチャーズ
【作品概要】 「…生きることの悩み、苦しみ、悲しみ、そして喜びなどの一切の縮図が映画館の中に繰り広げられる。」こう記した佐藤久一氏が支配人を務めた、山形県酒田市のグリーン・ハウス。映画評論家・淀川長治氏が「世界一の映画館」と評し、足繁く通ったというその映画館は、来館した人々の心を掴む様々な工夫と設備を取り入れた希有な場所として愛された。しかし、グリーン・ハウスが火元となった“酒田大火”により、甚大な被害を町にもたらして焼失してしまう。そして幾年月も過ぎた今、酒田の人々がグリーン・ハウスと歩んできた自らの歴史を振り返り始める…。
© 認定 NPO 法人 山形国際ドキュメンタリー映画祭