大宅壮一ノンフィクション賞と講談社ノンフィクション賞をダブル受賞した、渡辺一史による書籍「こんな夜更けにバナナかよ 筋ジス・鹿野靖明とボランティアたち」の実写化となる、大泉洋主演、高畑充希、三浦春馬共演の映画『こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話』が12月28日より公開される。このほど、12月4日に新宿ピカデリーにて「障害者週間」(12月3日~9日)の特別企画として講演会が実施され、主演の大泉洋、原作者の渡辺一史、パラリンピックで活躍する義足のランナー・大西瞳が登壇した。
本作は、難病である筋ジストロフィーを患って体が不自由にも関わらず、病院を飛び出し、自分で大勢のボランティアを集め、風変わりな自立生活を始めた鹿野靖明の半生を描いた物語。
今年の「障害者週間」に併せて行われた、障害者の方々の自立と社会参加の支援を目的とした本イベントに登壇した大泉は、「この映画のタイトルを見た時には、なんてわがままを言う人なんだと正直思ってしまいました」と告白。それも撮影後の今ではとらえ方が変わったと語り「あのタイトルを見ても、わがままだなんて思わなくなった」という。そんな本作の撮影時には、鹿野を知る関係者に、実際の話を聞きながら演技に挑み、「関係者の方から話を聞いていると、それだけで感情移入してしまって、これから撮影だというのに泣いてしまうこともあったんです」と振り返った。
一足先に映画を鑑賞した大西は、「映画を観ていて、はじめは“わがまま”にしか聞こえなかったんですが、観ていくと、これは鹿野さんが自分らしく生きる上で必要なことなんだと感じるようになりました」と、物語が進むにつれて鹿野に対する印象が変わったと語る。実際に生前の鹿野と交流のあった渡辺は、「この映画が、わがままっていうのを、どうとらえるのか、健常者にとっては、わがままだけど、障害者にとってはどうなのかそれを考えるきっかけになってほしい」と、原作から一貫して込められている思いを語り、大泉が演じた鹿野役については、「この映画を見た鹿野さんのお母さんも、『本当によみがえったんじゃないかと思った』と言われていたんです。それくらい大泉さんが演じた鹿野さんは、本人と瓜二つでしたよ」と大泉をべた褒め。大泉も「本当に鹿野さんのドキュメンタリーをやっているんではないかと思うほどでした」とそのリアリティの高さについて触れた。
本作で語られる障害者の自立や社会参加については「鹿野さんみたいな障害者の人たちにとって自立とは、“自分がどうしたいのかを自分で決める”ことなんだと鹿野さんも訴えてきたと思うんです。そのために、人の助けを借りながら、共に生きていくことができる社会になってほしいと思います」と渡辺。大西は「障害者の方、健常者の方どちらにも、できる事、できない事は当然あるので、それを理解しあえる世の中になってほしいですね」と訴えかけた。
最後に大泉は、「子供には、“人に迷惑をかけるんじゃない”と、今まで教えることがありましたが、人に迷惑をかけることを恐れるよりも、自分でできないことがあれば、助けを求める。そして、逆に助けを求められた時には助ける。それが大事なんだと思いました」と熱く語り、「でも、この映画は決して堅いメッセージがあるわけじゃないんです。笑える部分も多いので、気軽に観ていただいて、障害者の方と、その周りの方々の関係性や接し方について考えるきっかけにしてほしい」と本作をこれから鑑賞する観客にアピール。さらに、「この映画のタイトルがわがままに聞こえない社会になるといいなと思いますね。少しでも障害者と健常者の垣根をなくせる映画になれば」と締めくくり、講演会は幕を閉じた。
『こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話』
12月28日(金)全国ロードショー
監督:前田哲
原作:渡辺一史「こんな夜更けにバナナかよ 筋ジス・鹿野靖明とボランティアたち」(文春文庫刊)
脚本:橋本裕志
主題歌:「フラワー」ポルノグラフィティ(SMEレコーズ)
出演:大泉洋 高畑充希 三浦春馬 萩原聖人 渡辺真起子 宇野祥平 韓英恵 竜雷太 綾戸智恵 佐藤浩市 原田美枝子
配給:松竹
【ストーリー】 札幌で暮らす鹿野靖明(大泉洋)は幼少から難病の筋ジストロフィーを患い、車いす生活。体で動かせるのは首と手だけで、介助なしでは生きられないのに病院を飛び出し、ボランティアたちと自立生活を送っていた。夜中に突然「バナナ食べたい」と言い出すワガママな彼に、医大生ボランティアの田中(三浦春馬)は振り回される日々。しかも恋人の美咲(高畑充希)に一目ぼれした鹿野から、代わりに愛の告白まで頼まれる始末!最初は面食らう美咲だが、鹿野やボランティアたちと共に時間を過ごす内に、自分に素直になること、夢を追うことの大切さを知っていく。そんなある日、鹿野が突然倒れ、命の危機を迎えてしまう…。
©2018「こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話」製作委員会