第65回ベルリン国際映画祭でカリガリ賞を受賞した、フィリピンの鬼才キドラット・タヒミック監督最新作『500年の航海』が、2019年1月下旬より公開されることが決定した。
本作は、フィリピン・インディペンデント映画のゴッドファーザーとも言える映画作家のキドラット・タヒミック監督が、自らの映画人生と世界の歴史を重ね合わせ、35年の歳月をかけて完成させた叙事詩。2021年にはマゼランによる「世界周航」から500年を迎えるが、実はマゼランは、フィリピンのセブ島沖で先住民の首長ラプラプの抵抗によって旅の半ばで命を落とし、実際に世界一周を達成したのはマラッカ出身の奴隷エンリケだった。タヒミック監督は、西欧による“第三世界”の隷属の歴史の象徴として、自ら奴隷エンリケを演じ、家族や友人たちをキャスティングして1980年頃に本作の撮影を開始。その後、息子たちの成長に伴い撮影を中断していたが、撮影開始から20数年経った時、成長しヒゲを伸ばした次男カワヤンの姿がマゼランと重なり、マゼランが現代に蘇った輪廻転生の物語として完成を目指すことになった。
タヒミック監督はこれまで、フランシス・F・コッポラが激賞したデビュー作『悪夢の香り』、3人の息子の成長を世界各地への旅とフィリピンの激動の時間とともに描いた『虹のアルバム』など多くの作品を手掛け、近年は「大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ」や「あいちトリエンナーレ」などのアートフェスティバルでも作品を発表し、美術界での評価も高まっている。
本作は、2015年にベルリン国際映画祭と東京国際映画祭(上映タイトル『お里帰り』)で上映され、デビュー作『悪夢の香り』が40年前に批評家賞を受賞したベルリン国際映画祭にてカリガリ賞を受賞。その後もタヒミック監督の構想は膨らみ、さらなる再編集を施し、いまもなお増殖を続けている。
併せて本作の公開を記念し、「キドラット・タヒミック監督特集」が2019年1月下旬にシアター・イメージフォーラムにて開催されることが決定。『悪夢の香り』、『虹のアルバム』、『フィリピンふんどし 日本の夏』、『竹寺モナムール』のほか、劇場初公開となる『トゥルンバ祭り』、『月でヨーヨー』、『メイド・イン・ホンコン』の3作品の上映も予定している。詳細:シアター・イメージフォーラム 公式サイト www.imageforum.co.jp/theatre/
『500年の航海』
2019年1月下旬より、シアター・イメージフォーラムにてロードショー、以降全国順次公開
監督・撮影・編集・美術:キドラット・タヒミック
出演:キドラット・タヒミック ジョージ・スタインバーグ カワヤン・デ・ギア カトリン・デ・ギア ロペス・ナウヤク ウィグス・ティスマン ダニー・オルキコ
配給:シネマトリックス
【ストーリー】 田んぼの中から見つかった木の箱。それを開けてみると泥にまみれたフィルムの入った缶のようなものが入っていた。これは輪廻転生の物語…。
(C)Kidlat Tghimik