山田洋次監督、倍賞千恵子、吉岡秀隆、後藤久美子らが登壇!シリーズ50作目『男はつらいよ50 おかえり、寅さん』(仮題)製作会見レポート

1969年8月27日に第1作が劇場公開された映画『男はつらいよ』シリーズ。第1作の公開から50周年を迎える2019年に、シリーズ50作目となる新作映画『男はつらいよ50 おかえり、寅さん』(仮題)が公開されることが決定し、10月31日に東宝スタジオにて製作会見が行われ、山田洋次監督、キャストの倍賞千恵子、前田吟、吉岡秀隆、後藤久美子、夏木マリ、浅丘ルリ子が登壇した。

1997年公開の第49作『男はつらいよ 寅次郎ハイビスカスの花 特別篇』以来、実に22年ぶりの新作への期待感から、会見前の会場は熱気に包まれていた。そして、MCの進行の中、昭和・平成のお正月を彩ってきた『男はつらいよ』シリーズ第50作となる本作が、2019年12月27日に全国公開されることが発表された。

監督及び出演陣が登壇し、最初に一人ずつ挨拶を行い、山田洋次監督から「撮影が進んでいる中で、記者会見をやっていただき、興奮させられております。寅さんという映画は、ある人が“映画を観に行くというよりも寅さんに会いに行くんだよ、映画館にね”と、スクリーンを通して、渥美清を見に行くのではなく、渥美さん演じる寅さんの活躍やセリフの先にある、人間はいかに自由であることが素晴らしいのか、あらゆるものから解放されてのんびり生きることがどんなに大切かを映画から巡り合える作品で、それを寅さんに会いたいという言葉で表現していることに納得した。思い返してみれば、それをテーマにして僕らはこの映画を作っていて、今回集大成となる映画にできればと思います」と熱い想いを語った。

寅さんの妹・“さくら”こと倍賞千恵子は「またさくらに会えるとは思っていなかったですし、まさかと思いました。ただ今日衣裳をつけてセットに入って本当にちょっとホっとしました。これからどうなるのかが楽しみです」と語り、さくらの夫・“博”こと前田吟は「4人の孫が寅さんが大好きで、『じいちゃん映画館でみせてくれ!』という言葉を実現できて安心しております。孫に恥じぬよう一生懸命頑張りたいです」と喜びを噛み締めた。寅さんをおじさんにもつ“満男”こと吉岡秀隆は「平成の世も終わろうとしている秋の空の下で、監督の一言、一言をつむぎながら、道しるべにして寅さんを探す旅にみんなで出ている気持ちです。僕らの旅が無事に終わるよう見守ってください」と穏やかな口調で語った。

23年ぶりの銀幕復帰、満男の初恋相手・“イズミちゃん”(今作ではイズミ・ブルーナ)こと後藤久美子は「みなさま、ご無沙汰しております。また山田組に呼んでいただけたのはとても光栄で、嬉しい気持ちでいっぱいです。敬愛する大好きな渥美清さんに想いを馳せながら、思い出話を咲かせながら、撮影を続けております。どうぞみなさまお楽しみに」と久しぶりに銀幕復帰の想いを胸に一言。第43作『寅次郎の休日』のマドンナ、イズミちゃんの母・“礼子”こと夏木マリは「今回はイズミちゃんが登場ということで、もれなくついてくるということで宜しくお願いいたします(笑)。この20数年、礼子さんは何をしていたのだろうと思って妄想しているのが楽しい時間です」と笑顔でコメント。寅さんが最も想いを寄せたマドンナ・“リリー”こと浅丘ルリ子は「私はまたリリーさんをやれると思っておりました。ずーっとリリーさんは仕事をしながら寅さんを想いながらずっと一人でいるんだって、2日間撮影をさせていただいて、しばらくぶりにみなさんにお会いできて、とても懐かしいです」とそれぞれが新作への想いを語った。

そして質疑応答の前に、山田監督へ「旧作を織り交ぜて新作を作ることは、前代未聞の試みだと思いますが、49作という膨大にあるシーンからどのような観点でシーンを選ぶのか」という問いに対し、山田監督は「この第50作の物語の幹は、満男が20数年ぶりにイズミに再会して、もう一度恋の炎が燃えあがるけれども、それぞれが家庭を持っている中で葛藤しながら別れていく、それが主軸になっていきます。その満男が思春期から大人へ成長する中で、寅さんというおじさんがいたことで満男はどんなに救われたかわからないし、おじさんの役割や大切さを今にして思う。そういう思い出をスクリーンの中に展開できればと思います」と新作への構想を語った。

その後質疑応答に移り、最初にマドンナ3人へ「自身の思う寅さんはどういう人か?」という質問に、後藤は「寅さんは大きな背中で大きなこころですべてを包み込んでくれる大好きなおじちゃまです」、夏木は「よく話をきいてくれる寅さん。聞いてくれるだけでとても穏やかになる存在です」、浅丘は「リリーはなんで寅さんと一緒にならなかったんだろうって、あんな素敵な人はいません」と寅さんへの熱い想いを語った。そして引き続き、後藤へ質問が飛び、23年ぶりのスクリーン復帰への決心と久々の山田組について、「自宅に山田監督からお手紙が届きまして、“こういう作品を作りたい。だから君が必要だ”と、“どうにか考えてもらえないだろうか”と長い手紙を読んでいる時に、山田監督の『男はつらいよ』という作品への大きな愛情と新作への情熱というものをひしひしと感じられて、手紙を読み終えるころには、はいと一つ返事で行くしかないという想いでした。久々というのはなくて、“おかえり”、“ただいま”という感覚です」と語った。

吉岡は、「改めて今作への気持ちと、寅さんから教えられたことは?」という問いに対し、「寅さんに言われた『いつでも困ったことがあったらおじさんの名前を呼んでくれ、いつでも飛んでくるからな』って言葉がどれだけ(自身にも満男にも)救いになっていたか。今回、この話をいただいた時、初めて空に向かっておじさんの名前を呼びました(笑)。なかなか現れてくれなくて、平成の風はゆったりしていて、まだおじさんの耳には届いていないのかなと現場で感じています」と語った。そして倍賞と前田は、それぞれに「実際にクランクインし、23年ぶりの今日、あらためてどのような気持ちか」という問いに対し、倍賞は「とても楽しいセットであそこの部屋にみんなが入るだけで、畳に座るだけでわくわくするなという気持ちで撮影していました。満男と話していると後ろにお兄ちゃんの気配を感じられて、柴又に行った時や監督の後ろにも感じられて『お前、馬鹿やっているんじゃないよっ』って言っている気がしております」と寅さんへの想いも併せて語り、前田は「23年のブランクは全く感じませんでしたね。すーっと溶け込めました。たまたま今日はおいちゃんはいないと思って撮影しておりました。その気持ちでやらせていただいております」と自然と撮影現場へ入れた旨を語った。

そして、「多岐にわたるキャリアの中で、『男はつらいよ』はどのような位置づけか」という質問に対し、夏木は「役者としては演じることを頑張る体質だったのですが、山田組を経験したことで礼子さんを演じるのではなく、礼子として生きるということを教わって、自身の中で役者をやることの試金石になっていて原点回帰です。そんな山田監督との出会いでした」と山田組への熱い想いを語った。そして山田監督へ「これからご覧になる若い世代の方、ご覧になっていない方にメッセージをお願いします」との問いに、「若い人たちにも観れば必ず何かを感じてもらえるだろうと思います。ある時は大笑いしたり、ある時はほろっと泣いていただいたり。一生懸命に作ればきっと若い人たちも観てくれるだろうという思いです。心の中では今の若い方たちに寅さんを知ってほしいという思いは強いです」と語り、それぞれの想いが詰まった会見は和やかな雰囲気に包みこまれて幕を閉じた。

『男はつらいよ50 おかえり、寅さん』(仮題)
2019年12月27日(金) 全国公開
監督・原作:山田洋次
脚本:山田洋次 朝原雄三
出演:倍賞千恵子 前田吟 吉岡秀隆 後藤久美子 夏木マリ 浅丘ルリ子 渥美清

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