20世紀の世界文学を揺るがした革命的なムーヴメント“ヌーヴォー・ロマン”の旗手として知られる、アラン・ロブ=グリエの映画監督作品を集めた特集上映「アラン・ロブ=グリエ レトロスペクティヴ」が、11月23日より開催されることが決定した。併せて、予告編とポスタービジュアルがお披露目となった。
アラン・ロブ=グリエは、1953年に最初の長編小説「消しゴム」でデビュー以来、近代以降常識とされていた既存の枠組みを解体する小説を次々と発表、当時世界文学を席巻していたサルトル、カミュらに代表される実存主義に引導を渡した“ヌーヴォー・ロマン(新しい文学)”の代表的作家として、その作品群は後世にも絶大なる影響を与え続けている。
1960年には、アラン・レネ監督『去年マリエンバードで』(第22回ベネチア国際映画祭金獅子賞)のオリジナル脚本の執筆を契機に映画製作にも乗り出し、1963年に『不滅の女』で映画監督デビュー。倒錯的なエロティシズムを描き出す諸作で、作品を発表するたび、大きな注目を集め、世界文学・映画の最前線に立つカルチャー・ヒーローとして圧倒的な人気を誇った。1986年にはベネチア国際映画祭で審査委員長を務め、さらに2004年にはわずか40名しか定員のないアカデミー・フランセーズの会員に選出されるなど、ヨーロッパでの圧倒的な知名度にもかかわらず、その過激でスキャンダラスな描写のせいか、それ以外の地域ではほとんど上映の機会に恵まれなかった。
没後10年となる今年は、ロブ=グリエの全監督作9本の中から代表作6本を一挙に上映。ルイ・デュリック賞を受賞した監督デビュー作『不滅の女』(1963)、ジャン=ルイ・トランティニヤン演じる麻薬の運び屋のドタバタ劇をメタフィクションとして描き、“最も成功した、理解しやすい実験映画”と評された『ヨーロッパ横断特急』(1966)、ベルトルッチの『暗殺のオペラ』(1970)と同じくホルヘ・ルイス・ボルヘスの短編集「伝奇集」の“英雄と裏切り者のテーマ”を下敷きに、オーソン・ウェルズの『審判』をパロディにした『嘘をつく男』(1967)、カラー作品となり、めくるめくエロティックな幻想を色彩豊かな映像で表現した『エデン、その後』(1970)、アニセ・アルヴィナ演じるひとりの女性の受難劇をサディスティックに描き、その反倫理的な描写によってヨーロッパ各国で上映禁止となった『快楽の漸進的横滑り』(1974)、ルネ・マグリットの同名の絵画をモチーフにした、官能的で幻想的なクライムサスペンス『囚われの美女』(1983)をラインナップ。この中で、『囚われの美女』以外の5作品は、未公開・未ソフト化となり、待望の本邦初の正式公開となる。
公開された予告編では、「誰かが『私は嘘をつく』といったら、彼または彼女のいうことはすでに真偽を超えている。ロブ=グリエの映画の面白さは、あくまでそのとらえどころのなさにある。しかも、その画面が曖昧とはとても思えぬほど鮮明なところに、つきぬ魅惑が脈うっている。」という映画評論家・蓮實重彦のコメントとともに上映6作品のライナップを紹介している。
「アラン・ロブ=グリエ レトロスペクティヴ」
11月23日より、シアター・イメージフォーラムほか全国順次開催
監督・脚本:アラン・ロブ=グリエ
配給:ザジフィルムズ