内山理名「人間の生きる力と支え合う力が描かれている」『single mom 優しい家族。 a sweet family』初日舞台挨拶レポート

内山理名が主演を務める、「一般社団法人 日本シングルマザー支援協会」後援の映画『single mom 優しい家族。 a sweet family』が10月6日に公開初日を迎え、同日、ヒューマントラストシネマ有楽町にて舞台挨拶が行われ、内山理名、長谷川葉音、阿部祐二、石野真子、木村祐一、松本和巳監督が登壇した。

まず、舞台挨拶後にお笑いライブがあり、先に退席しなくてはいけない木村祐一が、「この劇場で、シングルマザーが出てくる『わたしは、ダニエル・ブレイク』という映画をやっていた時に、監督とちょうど同じ回の上映を観させてもらって、その後この話がきたので、すごく運命的なものを感じました。内山さんとも運命的なことがあればよかったんですが」と挨拶をし、会場は大爆笑。「監督が緻密な演出で、リハーサルも渋谷で2回ほどガラス張りの部屋で大声出せと言われ、周りの皆さんは大丈夫かと思いながら、頑張らせて頂いたので、この映画に対する想いが強いです。僕はシングルマザーではないですけれど、親2人でも大変なのに、1人でなんて、なんぼ大変なんやねん、と思います。完成したものも観させていただきまして、すごく感動した作品です」と語った。内山理名と対峙するシーンでは、「鬼気迫るものがあり、内山さんが涙を流されたりするので、それを受け止められているのか、という葛藤の中演じていました」と話すと、内山は、「(北海道ニセコ町の)いい景色の中のあの芝居だったので、思い出深いです。木村さんは温かく受け止めてくださいました」と答えた。木村は「(シングルマザーの)経験ある方もない方も何か一つ思うところがある作品かと思いますので、関われて光栄でございました」と挨拶した。

主人公のシングルマザー役の内山理名は「私はシングルマザーでもないですし、子供もいないですが、脚本に惚れました。この1人の女性を演じたいという気持ちで出演させて頂きました。この作品を1人でも多くの方に知っていただきたいと思っています。でも共感するとなると、それぞれの家庭や生き方があるので、また違うことになってくると思うんですけれど、この作品はシングルマザーの日常を描いています。その日常を覗き見るような感じで、見ていただければと思います」と作品をアピールした。

シングルマザーの一人娘を演じた長谷川葉音は、「私のお母さんもシングルマザーで、セリフに気持ちが入りすぎたりして感情をコントロールするのが難しいところがたくさんあったんですけれど、監督が『いつものままでいいよ』とおっしゃってくださったので、なんとか撮影を乗り切ることができたと思います。『お父さんに会いたいけれど、お母さんのことを思うと会えない』という役柄に共感しながら演じました」と撮影時を振り返った。

有島記念館の館長役の阿部祐二は、1シーンのみの撮影だったため、「僕出ていましたかね?」とジョークを飛ばして挨拶。「僕は有島武郎さんの大ファンで、彼が書いた『或る女』という小説も何度も読んでいます。それもあって、記念館の館長を演じさせてもらって、うれしかったです。女性の子育てを給料換算したらすごいお金になる。レポーターをやっていまして、シングルマザーに対して行政含め、あまりにも冷たすぎるのではないかと思いながらいつも取材しています」と熱い思いを語った。自身の役に関しては、「人間嫌いな感じで、ニセコに移り住んで、ニセコの町の人と接してどんどん変わっていく。(内山さん演じる愛実も変わる)きっかけを内山さん(愛実)に与えることができたと確信しています」とコメントした。

先輩シングルマザー役の石野真子は、「監督の熱い想いを映画が始まる前に聞いていたので、少しでも携われたらいいなと想い、出演しました。映画を見た時に、ニセコの自然の緑が心にすーっと入ってきました。主人公の悩みやコミュニティのなさを感じ、もっと声を掛けたり、悩みを相談できるような環境になったらいいのにな、と思いました。1人でも多くの方がこの映画を見て、そう感じていただければなと思います。行政の立場の役だったので、あそこまでしかできなかったですけれど、もっと『どうしたの?』と声をかけることが大事だなと思いました。本作でも行政をもっと飛び越えたおせっかいがしたかったです」とコメント。石野の包み込むような先輩シングルマザーの役に関して、内山は、「すごく石野さんが優しくて、たった数時間だけのシーンだったけれど、本当にほっとするようで、涙が出そうでした」と語り、石野さんはそれを聞いて「よかった〜」と安心している様子だった。

脚本・監督を務めた松本和巳監督は、「出てくるエピソードはほぼ事実に基づいているんですけれど、でももっとひどいことが起きているというのが現実です。でもその現実は皆さんの耳には届いていません。その部分が少しでも、『こういう環境にいる人がいるんだよ』という目線で共有できたら、世の中が少し変わるのかなという思いを感じています。いろんなものを感じてもらえたらいいかなと思います」と語った。

最後に内山が、「いろんな見方ができる作品だと思います。最初のシーンを見ていただければわかるように、ニセコの自然の素晴らしさも出ています。シングルマザーの話をさせていただいたんですけれど、それだけではなく、人間の生きる力と支え合う力もたくさん描かれていると思います。温かい気持ちになれる作品だと思うので、1人でも多くの方に見てもらえればと思います」と挨拶し、初日舞台挨拶は幕を閉じた。

『single mom 優しい家族。 a sweet family』
10月6日(土)より、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国順次公開
監督・脚本:松本和巳
出演:内山理名 長谷川葉音 西川可奈子 森川真帆 岡元あつこ 中西悠碕 安部智凛 藤尾政弘 阿部祐二 石野真子 木村祐一
配給:渋谷プロダクション

【ストーリー】 北海道のニセコに住むシングルマザー・空愛実(そらまなみ/内山理名)は、愛娘のエミリー(長谷川葉音)と二人暮らし。仕事が決まらず、貯金を切り崩し、惨めな生活を送っていた。そんな愛実の母である実幸(西川可奈子)もまたシングルマザーだった。母とは衝突が絶えず、母からの暴力もあり、愛実は中学生のとき児童相談所に保護され、3年間母と引き離されて暮らしていた。愛実もまた、時に自分の母親が自分にしたように娘を我を忘れて怒鳴り散らしてしまう。押しつぶされそうな不安を抱えながら生きる愛実。最後の頼みの綱で勇気を振り絞って役所に相談に行った愛実は、町役場の職員で同じくシングルマザーの犬塚優子(石野真子)に出会う。時を同じくしてエミリーもまた、人との関わりを拒んで生きてきた孤独なミニカー職人の大西鉄二(木村祐一)に出会う。様々な人との出会いが、愛実を少しずつ変えてゆく。そして、あることがキッカケにすっかり忘れていた母との思い出が蘇り、愛実は初めて母の想いを知ることになる…。

© single mom優しい家族。製作委員会