人気漫画家の押見修造による同名コミックを、南沙良と蒔田彩珠のダブル主演で映画化した『志乃ちゃんは自分の名前が言えない』が7月14日に公開初日を迎え、同日、新宿武蔵野館にて初日舞台挨拶が行われ、キャストの南沙良、蒔田彩珠、萩原利久と、湯浅弘章監督、原作者の押見修造が登壇した。
本作は、「惡の華」「⾎の轍」などの⼈気漫画家・押⾒修造による実体験をベースにした同名作の映画化。満員御礼となった初⽇舞台挨拶は、映画の感動そのままに志乃(南)、加代(蒔⽥)、菊地(萩原)がスクリーンから⾶び出してきたかのような制服姿で登場。映画の魅⼒から舞台裏話、さらには押⾒修造による原作誕⽣の秘話まで披露された。
映画を⾒終わった直後で感動の余韻に浸る観客の拍⼿が鳴りやまないなか、感慨深い表情で南・蒔⽥・萩原、湯浅監督、原作者の押⾒が登壇。まず湯浅監督が「こんなにも多くの⼈に劇場にきていただけて本当に嬉しい」と涙⽬に挨拶した。続いて南が観客に感想を尋ねると、客席からは溢れんばかりの⼤きな拍⼿が。南、蒔⽥が「公開初⽇を迎えることができて嬉しい気持ちでいっぱいです」と満面の笑顔をみせた。空気が読めずに空回りしてしまう菊地を演じた萩原に向けて、客席から「うざくて良かった!」との賛辞の⾔葉が⾶び、場内は笑いがつつまれた。⾃らの体験をベースに本作を⽣み出した原作の押⾒は「ひとりぼっちだった学⽣時代を投影した漫画をみなさんがこうして演じてくれて、さらにたくさんの⼈に観ていただいて本当に嬉しいです」と各々が熱い気持ちを⾔葉にした。
南は「実は、⼩さい頃からセーラー服に憧れてて、劇中で制服を着る事ができて嬉しかったです」と撮影時には明かしていなかった想いを吐露。⼀⽅、蒔⽥は「しのかよ(劇中の「志乃と加代」のユニット名)っていう感じがする。当時に戻った気がして懐かしい」と思い出に浸った。⼀⽅、19歳の萩原は「懐かしい⼀⽅、制服を着る
機会がなくなったので少し恥ずかしい」と会場を沸かせた。
吃⾳により⾔葉が上⼿く話せない志乃という難役に、当事者の⽅に取材をするなど準備を重ねた南。⼀⽅、志乃が⼼を開いていく友⼈・加代を演じた蒔⽥は、志乃とのやりとりを振り返り「演じる際は、⾔葉が上⼿く話せない志乃が⾔葉や気持ちを伝えきるのを待ってから答えることを⼼がけました。コンプレックスを抱えてきた加代なら、笑われたり遮られるのがどれだけつらいか分かっているはずだから」と語った。⼀⽅、原作コミックから膨らんだ菊地のキャラクターについて、萩原は「漫画は表情は細かく書き込まれている。表情や感情表現は原作を参考に、セリフや⾔葉の⾯ではシナリオを参考にしました」と映画化ならではの役柄について語った。
すでに⼈気が⾼い漫画原作の映画化。原作の押⾒は「⾃分が学⽣時代に吃⾳だったことをベースに描きました。恥ずかしことのひとつとして、ずっとそれをしまってきたからこそ、描きたいと思った」と原作誕⽣秘話を語った。⼀⽅、湯浅監督は「⼀番⼿をかけたのは、冒頭、クラスの⾃⼰紹介で志乃が⾃分の名前を⾔えないというシーン。それは、この作品がどのような作品か、志乃がこれまでどのような⼈⽣を歩んできたのかを表現しなくてはならないから」と映像表現ならではのアプローチの仕⽅を語った。原作者の⽴場からの満⾜度を問われると「キャストの⽣々しい演技に、まるでドキュメンタリーを⾒ているようでした。原作者としては100点満点の出来ですね!」と笑顔で⾔い切り、会場からは拍⼿が巻き起こった。
最後に、これから観る観客へ⼀⾔を問われると、南は「私⾃⾝、コンプレックスがたくさんあった。この作品に出会うまで、それをどう排除しようか考えてきたが、コンプレックスとどう向き合ってあげて、還る場所を作ってあげられるかが重要だと気づけた。この作品がみんなに伝わったらいと思う」と、蒔⽥は「同年代の学⽣だと特に共感できる部分がある作品だと思います。⼀⽅、⼤⼈も当時の気持ちや懐かしさを感じてもらえると思う。多くの⼈に⾒て欲しいです」と、萩原は「現場にあったエネルギーがスクリーンから溢れていると思います。観る⽅にも伝わると思う」と、押⾒は「⾃分のことが⼀回でも嫌いだと思った事がある⼈は、この映画を⾒たらどこかしらに⾃分⾃⾝を発⾒できると思います。⼼にしまっている事を、発⾒して⾔葉にする事ができる作品だなと思うので、ぜひ多くの⽅に⾒て欲しい」とアピールし、湯浅監督は「初めての⻑編商業映画デビュー作ですが、それを超えることはできないかもしれない(笑)。⾃分とキャストの荒削りな部分がこの作品のモチーフとあっていて、それが上⼿く表現できたと思う。観客も全員宣伝部になったつもりで、ぜひ作品の感想を広めてください!」と茶⽬っ気たっぷりに語り、舞台挨拶を締めくくった。
『志乃ちゃんは自分の名前が言えない』
7月14日(土)、新宿武蔵野館ほか全国順次公開
監督:湯浅弘章
原作:押見修造「志乃ちゃんは自分の名前が言えない」(太田出版)
出演:南沙良 蒔田彩珠 萩原利久 小柳まいか 池田朱那 柿本朱里 中田美優 蒼波純 渡辺哲 山田キヌヲ 奥貫薫
配給:ビターズ・エンド
【ストーリー】 高校1年生の志乃は上手く言葉を話せないことで周囲と馴染めずにいた。そんな時、ひょんなことから同級生の加代と友達になる。音楽好きなのに音痴な加代は、思いがけず聴いた志乃の歌声に心を奪われバンドに誘う。文化祭へ向けて猛練習が始まった。そこに、志乃をからかった同級生の男子・菊地が参加することになり…。
©押見修造/太田出版 ©2017「志乃ちゃんは自分の名前が言えない」製作委員会