アルベール・デュポンテル監督が登壇!セザール賞5部門受賞作『SEE YOU UP THERE』(英題)トークイベント レポート

セザール賞5部門受賞、フランスで動員200万人超を記録した大ヒット作『SEE YOU UP THERE』(英題)が2019年に公開となる。このほど、6月24日にイオンシネマみなとみらいで開催された「フランス映画祭2018」にて本作の上映とトークイベントが行われ、アルベール・デュポンテル監督が登壇した。

フランス最高の文学賞・ゴンクール賞を受賞したピエール・ルメートルの「天国でまた会おう」の映画化となる本作は、第一次世界大戦後のパリを舞台に、帰還兵が巻き起こす前代未聞の詐欺事件を題材にしながら戦争を風刺し、身分も性格も全く異なる二人の男の友情を描く。主演には『BPM ビート・パー・ミニット』で世界中を熱狂させたナウエル・ペレーズ・ビスカヤートを迎え、その相棒役として監督のデュポンテル自身も出演した。

会場には、監督兼共同脚本兼出演を務めたアルベール・デュポンテルが初来日するとあって、400人の観客で満員に。通常なら上映後にのみ登壇するところ、「これだけは先にお客様にお伝えしたい」という監督本人の意向で、急きょ上映前にも一言だけ挨拶をすることに。そこで、MCの呼びかけでデュポンテル監督が登壇すると、会場は大きな拍手で迎えた。監督は深々とお辞儀をし、メモを片手に日本語で「映画を観る前に拍手をするのは危険です。何が起きても、どうせ映画ですから安心してください。上映後にまた登場して、皆さんの批判と苦情をお受けします!」とユーモアたっぷりに話すと、会場は爆笑と拍手に包まれ、監督は再び一礼をして降壇した。

上映後、エンドロールが終わると、会場には温かい拍手が響き渡り、映画に対する評価の高さが窺えた。その余韻も冷めやらぬうちに、MCの呼び掛けによりデュポンテル監督が再び登壇。観客ひとりひとりの表情を見つめながら、万感の思いを語った。原作がゴンクール賞を受賞したとあって超話題作で迎え入れられた本作について、映画化を決めた理由を聞かれると、「本作の主人公たち(帰還兵たち)のような弱い人間が犠牲になっていること。その意味でこの原作は今の時代を反映した、コンテンポラリーなテーマがあると思いました」と答えた。

映画化にあたって苦心したことは?という質問には、「原作には豊かなビジュアルイメージがあったので苦労はしませんでした。脚本の第一稿は3週間で書き上げることができました。それは私にとってはかなり短いです。それだけイマジネーションに満ち溢れていたんです」と原作、そして共同脚本を担当したピエール・ルメートルを讃えた。また、原作と映画のラストの違いについて、映画のラストがとても良かったという感想が出ると、「『日本の人たちは映画のラストの方がいいと言っていたよ』とピエールに伝えておくよ。彼はきっとむっとするだろう(笑)」と笑わせながら、「小説と映画は表現媒体が違うから、ラストシーンの表現が異なることはある。ただし、ピエールにはすべて筋書きを話して、承認を得ています」と話した。

華麗な美術や衣装、ダンスシーンのアイデアについて聞かれると、デュポンテル監督は「本作は2時間の偉大な嘘だと思ってください。いくつかのシーンは原作にはないが、(主人公の)エドゥアールは私にとってのヒーローで、当時の戦争の責任者を糾弾するシーンを入れたかった。また、ほとんどの衣装は実際にあるものを参考に作られていて、ジャン・コクトー、ヴィクトール・ユーゴなどの衣装を基に作ったし、(悪役の)プラデルの衣装は登場する度にチェンジしたんだ」と答え、セザール賞の監督賞のみならず、脚色、撮影、美術、衣装を受賞した本作の魅力に胸を張った。最後にフォトセッションを終え、日本での再会を約束したデュポンテル監督は、割れんばかりの拍手に包まれながら降壇。大盛況の中イベントは幕を閉じた。

『SEE YOU UP THERE』(英題)
2019年、全国公開
監督・脚本:アルベール・デュポンテル
原作・共同脚本:ピエール・ルメートル「天国でまた会おう」(ハヤカワ・ミステリ文庫刊)
出演:ナウエル・ペレーズ・ビスカヤート アルベール・デュポンテル ローラン・ラフィット メラニー・ティエリー
配給:キノフィルムズ

【ストーリー】 第一次世界大戦停戦目前にプラデル中尉から不条理な最後の攻撃命令が下る。御曹司で才能あるアーティストのエドゥアールは、小心者の簿記係のアルベールの命を助けるが、顔に重傷を負ってしまう。家族に会いたくないという彼の戦死偽装を、アルベールは手伝うことに。戦後、パリに戻った2人は貧しい共同生活を始める。一方、彼らの上官であったプラデルが財を築いていたことを知った2人は、ある壮大な詐欺を企てる。

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