アンヌ=ドフィーヌ・ジュリアン監督「病気と向き合う子どもたちの姿から人生を学んだ」『子どもが教えてくれたこと』トークイベント レポート

ジッフォーニ映画祭で作品賞を受賞し、フランスで23万人の動員を記録したドキュメンタリー映画『子どもが教えてくれたこと』が7月14日より公開となる。このほど、6月19日に青山学院アスタジオホールにてトークイベントが行われ、ジャーナリストとしても活躍する本作のアンヌ=ドフィーヌ・ジュリアン監督、NPO法人「子育て学協会」会長の山本直美さん、青山学院大学学生の齋藤友花さんが登壇した。

先行試写会には、子育て中のお母さん世代から、年配の方々、さらには青山学院大学の学生や看護を学ぶ学生など様々な世代が集まり、上映後の感動冷めやらない中、トークイベントがスタート。まず、本作を観た感想について、子育て学協会会長の山本さんは「この作品を観る前は、ただ泣かせて痛い思いをするだけの映画かなと思いながら見始めたのですが、まず映像がきれいで、最後まで目を覆うことなく向き合える映画だったなと。またあとからジワジワときいてくるんですね。大人が不安に向き合う時に、今を生きる子どもたちのこういった姿に勇気づけられる」とコメント。それを受けて、アンヌ監督は「誰も自分から好んで病気の子どもの病気の部分を見るために映画を観に行かないと思います。でもこうやって一度映画を観てみると、彼らが自分の人生をちゃんと捉えて生きている、そんな姿に私たちは目を見開かせられるのではないでしょうか。お母さんや親の視点で見るだけでなく、自分が子どもだった頃、自分の中に残っている子ども心を、この作品の中に見出していただければ」と続けた。

また、アンヌ監督自身が二人の娘を亡くした経験を持つが、この作品に込めた思いを聞かれると「私は元々ジャーナリストで、これが初監督作品です。しかし、偶然に撮ったわけではありません。私の4人の子どものうち、残念なことに二人の娘が重大な病気で他界しました。私は作品をとおして病気の部分をフィーチャーする気は全くありませんでした。私は病気の娘と2歳くらいから10歳くらいまで共に過ごす中で、彼女たちの生き方、病気と向き合いながら生きていく姿を見ながら、人生とはどういうものか、そして私自身どう生きていくべきか、どう人生を愛すべきかを彼女たちの姿から学んだんです」と力強く返答。山本さんから、子どもの病気を知った時は家族でどう乗り越えたのかと聞かれると、アンヌ監督は「上の娘タイスが2歳の誕生日に病気を知りました。途方に暮れましたが、どうしてこんなことが娘に起こったのか、ではなく“HOW”、どうやってこれを乗り越えようかと考えたんです。娘のこれからの行く道をどうやって伴走しようか、と。夫からは娘にすぐに真実に伝えるべきだとも言われ、病気を知った当日に娘と、お兄ちゃんである息子にもシンプルな言葉で伝えたのだけれど、私も家族もボロボロ号泣してしまっていたんですね。でも、その涙が枯れたころに、息子がこれからタイスの誕生日パーティをしようと言ったんです。私は初め『NO』といったのですが『ママ、今日はタイスの誕生日なんだから!』と。その言葉を聞いて、子どもってなんて強いんだろうと思ったんですね。確かに試練は色々降りかかってくるし、その試練は選べないけれど、起きたときにそれをどういう風に乗り越えるかは自分で選べる。幸せになれる方法は選べるんだ、ということを子どもたちに教わったんです」と素敵なエピソードを披露してくれた。

それを聞いた青学生の齋藤さんからは、「映画を観て、生き方について考えさせられました。人生の意味を見いだせなくなるような辛いこと、悲しいことに出会うこともありますが、そのような困難は人生にとってどんな意味があるのでしょうか、将来プラスになるのでしょうか」という質問が。それについてアンヌ監督は「試練に意味はないと思います。でも、それをどうするかってことだと思います」と断言。「試練が起きたときに、嫌だと思っても試練はすでにあるわけです。本作に登場するイマドは、辛い治療のことを『あなたには(治療は)大変だけど、僕にとっては大変じゃない、だってこれが僕の人生だもん』と話すんです。イマドは、他の人より自分が強いって言っているわけでなく、僕の人生の中でのことだから、僕は対処できるんだ、と。試練が訪れれば、それを受け入れて向き合おう、対処しようということを子どもは自然な形で受け止めるんだと思います。そして人間は思っている以上に力を持っているんですよ」と答え、質問した学生だけでなく、会場の観客も大きく頷いていた。

最後に、「皆さんに一つ質問があります。子どもにどうして真実を伝えないのでしょうか。この答えを今ここで答えるつもりはありません。どうして病気の子どもに真実を伝えることが怖いのか、どうぞ皆さんそれぞれ心の中で考えてほしい。何がそれを妨げるのか、皆さんに考えていただけたらと思います」と深い問いを投げかけたアンヌ監督。観客が監督ら登壇者のトークをメモに取り、終始熱心に耳を傾けている様子が印象的なイベントとなった。

『子どもが教えてくれたこと』
7月14日(土)、シネスイッチ銀座ほか全国順次公開
監督・脚本:アンヌ=ドフィーヌ・ジュリアン
出演:アンブル カミーユ イマド シャルル テュデュアル
配給:ドマ

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