97歳で没するまで生涯現役であり続けた伝説の画家・熊谷守一=モリのエピソードをもとに、沖田修一監督が晩年のある1日をフィクションとして描いた映画『モリのいる場所』が5月19日に公開初日を迎え、シネスイッチ銀座にて舞台挨拶が行われ、山﨑努、樹木希林、池谷䛾ぶえ、そして沖田修一監督が登壇した。
本作は、晩年の30年間ほとんど家の外へ出ることなく庭の生命を描き続けた画家・熊谷守一(通称モリ)と妻・秀子の結婚52年目のある1日の物語を描く。日本を代表する名優である山﨑努と樹木希林と共に取り組んだのは、『キツツキと雨』や『横道世之介』を手掛けた沖田修一監督。
山﨑は「去年の秋からずっと守一に浸かっていた。なんだか守一の漬物みたいになってまして(笑)」と冗談で客席を笑わせると、「必要でない限り家から出ないタイプの人間ですが、今日は皆さんにお礼を言いたくて出かけてまいりました」と述べ、客席に感謝の気持ちを伝えた。樹木は「うちの二十歳の孫が観に来まして、言った一言が『今まで見たことのないような映画だった』と(笑)。期待してください(笑)。と述べると、山﨑が「孫バカなんです。勘弁してください」とフォローし、会場を笑わせた。
映画の感想を聞かれた山﨑は「自分が出ている作品は、どうも冷静に観られない。だけどホッとしたような気持ちでした」胸の内を告白。続けて樹木は「後に残っていく映画の一本になる」とコメントして監督を喜ばせた。
以前から守一のファンだったという山﨑は「まさか自分が演じることになるとは夢にも思っていなかったので戸惑いました」とコメント。「しょっちゅう僕は暑さに負けてぐったりしていると、樹木さんが励ましてくれて。劇団では僕がちょっと先輩だけど、立場が逆転して、樹木さんに現場をリードしていただきました」と撮影現場での裏話を明かした。これに対して樹木は「至福の時間でした。電話一本もらって、『守一さん役は山﨑努さんです』と聞いて、『どんな役でもいいからやらせていただきます』と。まさか奥さんの役だとは思っていませんでした(笑)」と笑い、監督に感謝の言葉を伝えていた。
『モリのいる場所』
5月19日(土)、シネスイッチ銀座、ユーロスペース、シネ・リーブル池袋、イオンシネマほか全国ロードショー
監督・脚本:沖田修一
出演:山﨑努 樹木希林 加瀬亮 吉村界人 光石研 青木崇高 吹越満 池谷のぶえ きたろう 三上博史
配給:日活
【ストーリー】 自宅の庭には草木が生い茂り、たくさんの虫や猫など、守一の描く絵のモデルとなる生き物たちが住み着いている。守一は30年以上、じっとその庭の生命たちを眺めるのを日課にしていた。普段、守一は妻の秀子と二人の生活をしているが、毎日のように来客が訪れる。守一を撮ることに情熱を燃やす若い写真家の藤田くん、看板を書いてもらいたい温泉旅館の主人、隣人の佐伯さん夫婦、郵便屋さんや画商や近所の人々、そして、得体の知れない男…。今日もまた、モリとモリを愛する人々の、可笑しくて温かな1日が始まる。
(c)2017「モリのいる場所」製作委員会