ベトナム戦争をはじめ、カンボジアの大虐殺など、数々の戦場を記録してきた報道写真家・石川文洋。その波乱に満ちた人生と、戦争の最前線で見つめ続けてきた“名もなき人々の姿”を描くドキュメンタリー映画『戦場のボヘミアン カメラマン 石川文洋』が公開される。

本作は、戦場取材が許された最後の戦争とも言われるベトナム戦争を生き抜いた写真家・石川文洋の歩みを軸に、彼が見てきた現実、そして「記録すること」の意味を問いかける作品だ。滝藤賢一によるモノローグが、石川の内面や葛藤、そして信念を浮かび上がらせる。
1941年、沖縄に生まれた石川は、幼少期に本土へ移住。1964年、わずか27ドルを手に単身ベトナムへ渡り、戦場カメラマンとしての人生を歩み始めた。現地で撮影した写真が世界に配信されたことで、“国際報道カメラマン”としてのキャリアがスタートする。以降、戦闘の最前線だけでなく、戦争によって人生を翻弄された無名の人々にレンズを向け続けた。
戦場で9度も死の危機に直面しながらも生き延びた石川は、帰国後も沖縄やカンボジアなど各地で取材を重ね、戦争の記憶を記録し続ける。心筋梗塞により身体障害を抱えながらも、日本列島3500キロを縦断するなど、その生き様はまさに“戦場のボヘミアン”と呼ぶにふさわしい。
本作では、2025年のベトナム戦争終結50周年を機に再訪したホーチミンでの出来事にも焦点を当てる。かつて戦場で出会った少女との約60年ぶりの再会を捉えた場面は、戦争の記憶が個人の人生にどれほど深く刻まれているのかを静かに物語る。
監督を務めた河邑厚徳は、「報道写真には“今を伝えること”と“後世に残すこと”という二つの使命がある」と語り、情報が加工されがちな現代において、現場で見た真実を記録することの重要性を訴える。戦争の実像が断片的な情報として消費されがちな時代だからこそ、石川文洋という存在の意義が改めて浮かび上がる。
■作品情報
作品名:『戦場のボヘミアン カメラマン 石川文洋』
公開日:2026年11月28日(土)より新宿K’s cinemaほか全国順次公開
監督・撮影:河邑厚徳
出演:石川文洋
モノローグ:滝藤賢一
ナレーション:山根基世
朗読:竹本英史
制作:ルミエール・プラス合同会社
配給:渋谷プロダクション
上映時間:88分
製作年:2026年
©ルミエール・プラス合同会社

