「デビュー作のような気持ちで挑んだ」寛一郎、河瀨組初参加で新境地

河瀨直美監督の最新作『たしかにあった幻』の公開初日舞台挨拶が2月6日、東京・テアトル新宿で行われ、寛一郎、岡本玲、松尾翠、中野翠咲、中村旺士郎、そして河瀨直美監督が登壇した。愛のかたちと命のつながりをテーマに、日本の失踪者問題と臓器移植の現実を重ねて描く本作。満員の観客に迎えられ、キャスト・監督が作品への想いや撮影エピソードを語った。

主人公コリー(ヴィッキー・クリープス)が屋久島で出会う青年・迅を演じた寛一郎は、「撮影は1年半前ですが、遠い昔のような気がします。その作品が今日公開できた事を嬉しく思います」と公開初日の喜びを語った。さらに、初めて参加した河瀨組での経験について、「この仕事を始めて10年ほどですが、そこで培ってきたものを捨てなければいけない時もあった。裸のままでいるような、デビュー作のような気持ちで挑ませてもらいました」と、俳優として原点に立ち返った心境を明かした。

河瀨監督から「三國連太郎さんが観たらどう思う?」と問われると寛一郎は苦笑い。「その無茶ぶりは難しい…」と照れながら答え、さらに「佐藤浩市さんが観たら?」という質問には「『大変だな』くらいじゃないかな」と冗談交じりにコメントし、会場の笑いを誘った。

監督は寛一郎の起用理由について、「雰囲気は似ているけれど、まったく違うものを持っている。この人に賭けてみようと思った」と振り返る。撮影前に蕎麦屋を予約したエピソードも披露されると、寛一郎は「蕎麦屋の予約くらいできるでしょう(笑)」と笑顔を見せ、会場を和ませた。

久志役の中村旺士郎は「セリフのある役は初めて。特別な日に皆さんの前で挨拶できて嬉しい」とコメント。瞳役の中野翠咲も「不安や辛さを抱えながらも表に出さない瞳の気持ちを考えながら演じました」と語った。二人の堂々とした挨拶に河瀨監督は「尾野真千子超えかと思うほど素晴らしい。200人以上の候補から選ばれただけある」と絶賛した。

松尾翠は、家族役のキャストと京都旅行を共にした“役積み”の思い出を回想。「撮影中も役名で呼び合い、まるで本当の家族のようでした」と語り、岡本玲も中村と動物園に行き、撮影前から親子関係を築いたエピソードを披露。中村は「その時の写真は今も家に飾っています」と笑顔を見せた。

最後に河瀨監督は、「この作品には皆さんへの問いが込められています。人生の局面でどんな愛を手渡していけるのか、本当のつながりとは何かを考えるきっかけになれば」とメッセージ。恩師から“最高傑作”と称されたことにも触れ、「この作品を生み出した自分に拍手を送りたい」と公開初日の喜びを語った。

■作品情報
タイトル:『たしかにあった幻』
監督・脚本・編集: 河瀨直美
出演: ヴィッキー・クリープス、寛一郎、尾野真千子、北村一輝、永瀬正敏 ほか
配給: ハピネットファントム・スタジオ
公開: 2月6日よりテアトル新宿ほか全国公開中 

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