「助けるべきか、見過ごすべきか。」沈黙の先にある“決断”を問うヒューマンドラマ『決断するとき』3月公開

『決断するとき』は、アイルランドの作家クレア・キーガンによる世界的ベストセラー小説『ほんのささやかなこと』を原作に、アカデミー賞主演男優賞を受賞したキリアン・マーフィーが主演・プロデューサーを務めたヒューマンドラマだ。1980年代のアイルランドに実在した“マグダレン洗濯所”の人権問題を背景に、「不正義を知ってしまった個人は、どのような選択をするのか」という重い問いを、静かな筆致で描き出していく。

舞台は1985年、アイルランドの小さな町。石炭商として生計を立て、家族と慎ましく暮らすビル・ファーロングは、クリスマスを前に、配達先の修道院で目を背けたくなる現実を目撃する。そこには、行き場を失った若い女性たちが閉じ込められ、過酷な環境の中で声を奪われたまま生きていた。そのひとりから「ここから出してほしい」と助けを求められたことで、ビルは長年社会が黙認してきた闇と真正面から向き合うことになる。

見て見ぬふりをすれば、これまで通りの平穏な日常は守られる。しかし、真実を知ってしまった以上、沈黙は良心を裏切る行為でもある。家族を守る責任と、人としての倫理の狭間で揺れ動くビルの内面が、言葉を極限まで抑えた演出と、沈黙に満ちた時間の積み重ねによって丁寧に描かれていく。本作でキリアン・マーフィーは、『オッペンハイマー』とは一線を画し、表情や眼差しだけで葛藤を体現。観る者に深い余韻を残す演技を見せている。

監督は、マーフィーとドラマ「ピーキー・ブラインダーズ」でタッグを組んだティム・ミーランツ。助演にはエミリー・ワトソンが名を連ね、修道院の院長シスター・メアリー役として、静かで冷酷な権力を体現。その演技は第74回ベルリン国際映画祭で助演俳優賞を受賞し、作品の評価をさらに高めた。社会の不正義を声高に告発するのではなく、「知ってしまった一個人の選択」に焦点を当てることで、観客一人ひとりに決断を突きつける作品となっている。

■作品情報
邦題:決断するとき
原題:Small Things Like These
公開日:2026年3月20日(金)
監督:ティム・ミーランツ
脚本:エンダ・ウォルシュ
原作:クレア・キーガン「ほんのささやかなこと」(鴻巣友季子 訳/早川書房 刊)
出演:キリアン・マーフィー、アイリーン・ウォルシュ、ミシェル・フェアリー、クレア・ダン、ヘレン・ビーハン、エミリー・ワトソン
製作年/製作国:2024年/アイルランド
上映時間:98分
配給:アンプラグド

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