第二次世界大戦中、アウシュヴィッツ収容所で数々の非人道的な人体実験を行い、「死の天使」と恐れられたナチスの医師ヨーゼフ・メンゲレ。映画『死の天使 ヨーゼフ・メンゲレ』は、そんな歴史上最悪の戦争犯罪者の一人が、終戦後に辿った30年にも及ぶ逃亡生活と、その内面の深淵に迫る。

物語は、ナチス・ドイツ敗戦後、メンゲレがヨーロッパから南米へと逃亡し、アルゼンチン、パラグアイ、ブラジルを転々としながら潜伏生活を送る姿を描く。イスラエル諜報機関モサドによる執拗な追跡をかわし、偽名を使い、別人として生き延びる彼の日常。その一方で、アウシュヴィッツで行われた凄惨な行為の記憶が、彼自身を決して解放することはない。
本作では、アウシュヴィッツ収容所での〈過去〉をカラー映像で、逃亡生活を送る〈現在〉をモノクロ映像で描写。時間軸と映像表現を鮮烈に対比させることで、ナチズムに支配された男の狂気、そして戦争によって歪められた人間の精神を冷徹に浮かび上がらせる。息子との対話や、追われる者としての孤独な日々を通じて描かれるのは、単なる逃亡劇ではなく、「悪とは何か」「罪は逃れられるのか」という根源的な問いだ。
原作は、フランスで最も権威ある文学賞のひとつ、ルノードー賞を受賞したオリヴィエ・ゲーズの世界的ベストセラー小説『ヨーゼフ・メンゲレの逃亡』。監督・脚本を手がけたのは、『LETO -レト-』『チャイコフスキーの妻』などで知られる鬼才キリル・セレブレンニコフ。人間の<悪の本質>と戦争責任を真正面から見据えた本作は、2025年カンヌ国際映画祭正式出品作としても大きな注目を集めている。
ヨーゼフ・メンゲレを演じるのは、『イングロリアス・バスターズ』『名もなき生涯』などで知られるアウグスト・ディール。静かな佇まいの中に狂気と恐怖をにじませるその演技は、各国の映画祭や評論家から絶賛を浴びた。解禁されたポスタービジュアルでも、逃亡者としての不安と、過去の栄光に囚われた男の歪んだ自己像が象徴的に表現されている。

■作品情報
タイトル:死の天使 ヨーゼフ・メンゲレ
原題:Das Verschwinden des Josef Mengele
英題:The Disappearance of Josef Mengele
公開日:2025年2月27日(金)
公開劇場:シネマート新宿、シネスイッチ銀座ほか全国公開
監督・脚本:キリル・セレブレンニコフ
原作:オリヴィエ・ゲーズ
『ヨーゼフ・メンゲレの逃亡』(東京創元社・創元ライブラリ刊)
出演:アウグスト・ディール、マックス・ブレットシュナイダー、フリーデリケ・ベヒト
製作年:2025年
製作国:フランス・ドイツ合作
上映時間:135分
言語:ドイツ語、スペイン語、ポルトガル語
映像:モノクロ(一部カラー)
レイティング:R15+
配給:トランスフォーマー
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