2026年1月31日(土)よりシアター・イメージフォーラムで公開される『水の中で息をする ―彼女でも彼でもなく―』は、環境再生とジェンダー多様性を同時に照射する、ユニークかつクィアなハイブリッド・ドキュメンタリー。監督を務めるのは、ノンバイナリーである エミリー・パッカー。ドキュメンタリー映像にフィクションフッテージや歴史映像を織り交ぜながら、ニューヨークの過去・現在・未来をつなぐ奥行きのある視点が特徴だ。

本作が描くのは、気候変動による海面上昇の危機にさらされるニューヨーク。2012年のハリケーン・サンディー、2025年の暴風豪雨など深刻化する環境問題を背景に、市民たちがかつて豊かに生息していた牡蠣を港に戻す取り組みを行う様子を追う。牡蠣は呼吸によって水を濾過し、牡蠣礁は小魚の住処にもなる“都市を救う存在”。その再評価のプロセスを、さまざまな団体・人々への密着を通じて丹念に描き出す。さらに、牡蠣が繁殖のために性を転換する特性を持ち、性別が固定されていない点に監督は強く着目。都市の生態系の再生と、人間社会におけるジェンダーの多様性——一見異なる2つのテーマを、自然界の示す“揺らぎ”を媒介に一つの物語へと束ねていく。
本作はドキュメンタリーでありながら、フィクション映像やアーカイブ映像を大胆に取り入れる構成。ニューヨークの歴史と未来が交錯しながら、環境問題とジェンダーの問題が“同じ地続きのテーマ”であることを示していく。
解禁されたメインビジュアルには、寄り添うように重なり合う牡蠣のイラストを中央に配置。「たとえば、牡蠣のように生きれたら」というキャッチコピーが添えられ、作品のテーマ性を象徴する仕上がりとなっている。鑑賞後には“牡蠣が食べたくなる”というユニークな魅力も持つ一作だ。
■作品情報
『水の中で息をする ―彼女でも彼でもなく―』
2026年1月31日(土)よりシアター・イメージフォーラムにて公開、以降全国順次公開
アメリカ|2023年|77分|英語|原題:Holding Back the Tide
監督:エミリー・パッカー
プロデューサー:トレイ・テルーオ
撮影:ジョン・マーティ
編集:リンジー・フィリップス、ベン・スティル
字幕翻訳:西山敦子
デザイン:中野香
配給協力:野崎敦子
配給宣伝:ブライトホース・フィルム
© Marginal Gap Films 2023

