次世代の若手映画監督の登竜門として注目を集める【第三回東京インディペンデント映画祭】が、11月1日、東京・WATERRAS COMMONホールにて開催された。審査員長には映画監督の藤井道人、特別審査員には俳優の吉岡里帆が登壇し、受賞監督たちの新たな門出を祝った。

プレゼンターとして登壇した吉岡は、自身の原点を振り返りながら温かいメッセージを送った。「私にとってインディーズ映画は特別なものです。10代の頃、商業の世界にはすぐに出られなかったけれど、友人たちと一緒に映画を作りました。観てくれたのは数少ない人たちでしたが、その作品をきっかけに“輪”が生まれた。映画はそういう奇跡を起こす力があると思います」。現在は商業作品で多忙を極める吉岡だが、「インディペンデントで培った感覚や感動を今でも大切にしている」と語る。
「今回の受賞作品を通して、“観る人にどんな感情を届けたいのか”“新しい価値観をどう提示するか”を改めて考えさせられました。いつか受賞監督の皆さんと仕事で出会えるよう、これからも頑張っていきます」。観客席からは大きな拍手が送られ、会場には映画への熱い思いが満ちていた。
藤井監督は「それぞれの作品に監督たちの語りたい物語があった」と語り、審査員としての思いを述べた。「審査するのはおこがましい行為とも思いますが、誰かにバトンを渡さないと映画文化は循環しません。今回、寺田悠真監督に“面白い映画を作ろう”という想いを託しました」。さらに、第二回グランプリ作品『東京逃避行』の長編映画化についても言及。「秋葉監督と脚本をぶつけ合いながら作り上げた作品です。23、24歳の彼が今の社会に訴えたいことが詰まっている。来年の公開に向けて多くの人に届いてほしいです」。
授賞式後には、秋葉恋監督による長編映画『東京逃避行』の最速試写会&アフタートークを実施。会場には主演の寺本莉緒、池田朱那、秋葉監督が登壇し、約120名の観客を前に撮影秘話を明かした。寺本は「目を背けがちな現実を描く作品だからこそ、多くの人にトー横の現状を知ってもらいたい」と真摯に語り、池田は「愛情を込めて作った映画。春の劇場公開を楽しみにしてほしい」と呼びかけた。秋葉監督は涙をこらえながら「何者でもなかった自分が映画によって居場所を得た。これからも必要とされる作品を作り続けたい」と決意を新たにした。



■作品情報
 映画『東京逃避行』
 監督:秋葉恋
 出演:寺本莉緒、池田朱那、綱啓永、高橋侃 ほか
 公開:2026年初春(予定)
 製作・配給:BABEL LABEL
ストーリー:家庭でも学校でも居場所を失い、歌舞伎町に逃げ込んだ高校生・飛鳥が、さまざまな出会いと痛みの中で自分の居場所を探していく――。
© Tokyo Independent Film Festival / © BABEL LABEL

