世界的音楽家・坂本龍一の最後の3年半を記録したドキュメンタリー映画『Ryuichi Sakamoto: Diaries』(監督:大森健生)が11月28日(金)より全国公開を迎える。公開に先立ち、9月19日(金)には大阪・VS.にて、本作で朗読を務めたダンサー・俳優の田中泯が登壇する特別先行試写会が開催された。
上映後、余韻に包まれる会場に登場した田中は「色々思い出しちゃってちょっと言葉が出ないですね。さっきまで楽屋では笑って話してたのに、変だな」と率直な心情を吐露。生前の坂本が公演を訪れたり、一緒に酒を酌み交わす親交があったことを明かした。
「僕が言葉にできなかったことを、彼はポンと口に出す。『泯さん、このままいくと人類みんなおかしくなっちゃいますね』と。僕はダンスをやっていたから“言葉”を信じられなくなっていたけれど、坂本さんはそれをさらっと言ってしまう」と坂本の人間性を語りかけるように話した。
朗読を引き受けた経緯については「“言葉”をしゃべる常識を疑ってみようと。なるべく“感情”と“言葉”の距離を保ちながら必死で臨みました」と回顧。さらに「彼が残した日記は、目の前の一人に向けているようで、同時に大勢に向かっている。そこが彼の思想だと思う」と坂本の言葉への洞察を披露した。
また、坂本の日記にある「雲の動きは音のない音楽だ」という一文に触れ、「僕はダンサーなのでダンスに見える。でも、やっぱり音楽にも見える。子どもの好奇心のような感覚だと思う」と語り、会場を和ませた。
初めて坂本と酒を酌み交わした際の印象について「この人は“本当”で生きていきたいんだと思った。“本当の気持ち”“本当の奴”と一緒にいたいと」と語りつつ、「でも大人の社会は嘘ばかり。でも坂本さんは最後まで音楽を辞めなかった。繰り返しの中に新しいものを見出し続けた」と熱を込めた。
そして「すごく悲しいけど、彼が最後まで見せ続けた姿は奇跡に近い。これは子どものような好奇心を絶対に捨てなかった証拠。僕も絶対そうします」と強い決意をにじませた。
最後に観客へ「この作品をどう受け取るかを自分の中で考えてほしい。絶対に応援してください。絶対伝えなきゃいけないことなんです」と力強く呼びかけ、舞台挨拶を締めくくった。
■作品情報
タイトル:『Ryuichi Sakamoto: Diaries』
公開日:2025年11月28日(金)TOHOシネマズ シャンテほか全国公開
朗読:田中泯
監督:大森健生
製作:有吉伸人、飯田雅裕、鶴丸智康、The Estate of Ryuichi Sakamoto
プロデューサー:佐渡岳利、飯田雅裕
制作プロダクション:NHKエンタープライズ
配給:ハピネットファントム・スタジオ、コムデシネマ・ジャポン
仕様:2025/日本/カラー/16:9/5.1ch/96分/G
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