9月13日(土)、新宿K’s cinemaにて映画『こんな事があった』の公開初日舞台挨拶が開催され、松井良彦監督をはじめ、主演の前田旺志郎、窪塚愛流、柏原収史、井浦新ら豪華キャストが登壇。満員の観客を前に、制作秘話や作品に込めた熱い思いを語りました。
主人公アキラを演じた前田旺志郎は、撮影前に福島を訪れた経験を振り返りながら「現地の方々から悲しみや怒りを直接お聞きしました。この作品に参加することは、その怒りを代弁する責任を伴うものでした」と告白。そのうえで「この役を演じる事で、誰かに“こんな事があった”と伝えることができたら、俳優冥利に尽きる」と力強く語り、会場を大きな拍手で包み込みました。
【キャスト陣の熱いメッセージ】
窪塚愛流(アキラの友人・真一役)
「白黒映画という点に強く惹かれました。観客がそれぞれの感情で彩る作品に携われて本当に嬉しいです」
柏原収史(松井監督作品への再出演)
「監督からオファーを受けたとき、ついに山が動いたと飛び上がるほど嬉しかった。原発事故というテーマは意外でしたが、この作品をきっかけに新しい思いが生まれてほしい」
井浦新(憧れの松井監督と初タッグ)
「映画は強者ではなく、弱い者たちからの目線が必要。だからこそ、この作品に参加できて嬉しかった。監督に初めて会うときは灰皿が飛んでくるかもと心配してましたけど(笑)」
松井良彦監督は「ようやく公開を迎えられて嬉しい」と声を震わせながら挨拶。震災と原発事故で変わり果てた福島の風景を目にし、「必ず映画にしたい」と決意。資金難や状況の変化に直面しながらも、13年かけて完成させた経緯を明かしました。
最後に前田は「“こんな事があった”ということをもう一度思い出して胸に留めてほしい」と呼びかけ、松井監督は「原発事故の記憶が薄れつつある今、この映画で問題意識を持ち続けてもらえれば」と語り、舞台挨拶は感動的な拍手に包まれ幕を閉じました。
■作品情報
タイトル:『こんな事があった』
監督・脚本:松井良彦
出演:前田旺志郎、窪塚愛流、柏原収史、井浦新 ほか
公開:新宿K’s cinemaほか全国順次公開中
ストーリー:
2021年夏の福島。原発事故で母を失い、父と離散した17歳のアキラ。孤独を抱える友人・真一や、サーフショップを営む夫婦との出会いを通じて心を開き始めるが、癒えることのない傷が彼らを静かに蝕んでいく——。
©松井良彦/ Yoshihiko Matsui