第78回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門に正式出品された映画『遠い山なみの光』が、9月5日(金)より全国公開される。原作はノーベル文学賞作家カズオ・イシグロの長編デビュー作。『ある男』で日本アカデミー賞最優秀作品賞ほか最多8部門を受賞した石川慶監督が、戦後の長崎と1980年代イギリスを舞台に、時代と国境を超えて女性たちの人生を描き出す。
終戦記念日を目前に控えた8月11日、主演の広瀬すず、吉田羊、石川監督が長崎市の平和祈念像を訪れた。大粒の雨が降るあいにくの天気にもかかわらず、多くの観光客や市民が平和への祈りを捧げる中、3人は白い花束を手に献花台へ。深く一礼し、静かに手を合わせた。
広瀬は「撮影では長崎に来られなかったので、ようやく訪れることができ光栄です。映画を通じて、この場所で起きたことを知ってもらうきっかけになれば」と語り、吉田は「長崎が最後の被爆地であってほしいと強く願います」と心境を述べた。石川監督も「長崎の皆さんに映画をお披露目する前に献花できたことは、とても意味のあることだと思います」と語った。
午後は活水女子大学チャペルにて原作朗読会を実施。広瀬と吉田が日本語で、英文学科の学生が英語で「遠い山なみの光」の一節を朗読し、舞台となった長崎や登場人物の心情について石川監督が解説した。
朗読後には学生からの質問に答える「お悩み相談会」が開催され、将来や進路、海外への挑戦など多岐にわたる相談に3人が真摯に回答。広瀬は「焦らず、自分のペースで考えているうちに道が見える時がある」と語り、14歳で地元を離れた経験から「思った以上に人は優しい。勇気を出すと返ってくるものがある」と背中を押した。吉田は「人生のチャンスやタイミングは人それぞれ。いろんなことに挑戦して、多くの出会いを経験してほしい」と助言。石川監督は「大学2年生ならまだまだ焦る必要はない」と、自身の学生時代を振り返りつつ励ましの言葉を送った。学生たちは「勇気が湧いた」「挑戦してみたい」と笑顔を見せ、会場は温かい拍手に包まれた。
■作品情報
タイトル:遠い山なみの光
公開日:2025年9月5日(金)TOHOシネマズ日比谷ほか全国ロードショー
原作:カズオ・イシグロ/小野寺健訳「遠い山なみの光」(ハヤカワ文庫)
監督・脚本・編集:石川慶
出演:広瀬すず、二階堂ふみ、吉田羊、カミラ・アイコ、柴田理恵、渡辺大知、鈴木碧桜、松下洸平/三浦友和
配給:ギャガ
上映時間:123分
ストーリー:
日本人の母とイギリス人の父を持つニキは、作家を志し、母・悦子(広瀬/吉田)に戦後長崎での思い出を語ってほしいと願う。佐知子(二階堂ふみ)とのひと夏を語る悦子だが、その物語には秘められた<嘘>があった。やがてニキは衝撃の真実に辿り着く──。
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