オダギリジョー、松たか子との共演シーンに「一番ドキッとした」『夏の砂の上』公開記念舞台挨拶レポート

7月5日(土)、TOHOシネマズ日比谷にて、映画『夏の砂の上』の公開記念舞台挨拶が行われ、主演・プロデューサーのオダギリジョー、髙石あかり、そして監督・脚本を手がけた玉田真也が登壇。第27回上海国際映画祭メインコンペティション部門での審査員特別賞受賞という快挙を受け、作品への思いや撮影裏話が語られました。

「この原作は長年温め続けていたもので、オダギリさんをはじめ多くの方の協力があってやっと実現できた」と語った玉田監督。「100人いれば100人が違う感想を抱く映画になった。ひとりひとりの声を聞きたい」と作品への深い愛着をにじませました。

髙石は「この作品が俳優としての転機になると感じながら撮影していた。上海で賞をいただき、本当に変わっていくと実感しています」とコメント。オダギリとの撮影時の印象や、観客から「意外だった」と声をかけられた経験にも触れ、「これまでにない役を演じられたことが嬉しい」と語りました。

思い出深いシーンやエピソードを尋ねると、オダギリはラスト近くのあるシーンでの松たか子の表情に触れ「一番ドキッとした」と明かし「ラスト近くの松たか子さんの表情はベストショット。あんな松さんは見たことがなかった」と語る。悪役に徹した松に「さすが」と賛辞を惜しまず、「繊細な日本の芝居が海外でも伝わった」と手応えを感じた様子でした。

髙石は、映画祭で「一番求められていたのはオダギリさん」と語り、会場は笑いと拍手に包まれました。オダギリは「『ニュー・シネマ・パラダイス』の監督トルナトーレがイチオシしてくれた。にぎやかしで呼ばれたと思っていたので、まさか賞をもらえるとは」と喜びを語りました。

髙石は、物語序盤のオダギリ、松、満島ひかりとのシーンを「一生忘れられない特別な瞬間」と回想。「相手の動作に反応して芝居が変わる。それがとても楽しかった」と、現場の熱量を振り返りました。

舞台挨拶終盤では、登壇者が七夕の願いを披露。オダギリは「映画がヒットしますように」、玉田監督は「たくさんの人に観てもらえますように」、髙石は「家族と一緒に観られますように」とそれぞれの思いを語り、会場は温かな空気に包まれました。

「こういう作家性のある作品を映画館で観てもらえることで、次がつながっていく。メジャーだけが残るのは寂しい」と語るオダギリ。「海外でも評価される土壌を大切にしたい」と呼びかけました。

「初めて見たとき、理由もわからず涙が出た。でもそれで良いと思えた」と語る髙石。「観た人それぞれの中に何か引っかかりを残せたら」と、作品がもたらす“余白”の力に思いを馳せました。

「わからなさや共感できない瞬間をあえて描いた」と語る玉田監督。「誰かがそっと寄り添ってくれるだけで前に進める――そんな瞬間を切り取った作品です」と締めくくりました。

■映画『夏の砂の上』作品情報

キャスト:
オダギリジョー、髙石あかり、松たか子、森山直太朗、高橋文哉、篠原ゆき子、満島ひかり、斉藤陽一郎、浅井浩介、花瀬琴音、光石研
監督・脚本: 玉田真也
原作: 松田正隆(戯曲『夏の砂の上』)
音楽: 原摩利彦
製作幹事: スタイルジャム
配給: アスミック・エース
全国公開中

あらすじ:
雨が降らない夏の長崎。息子を亡くし、妻・恵子(松たか子)と別居中の小浦治(オダギリジョー)は、ふらふらと日々を過ごしていた。そこに妹・阿佐子(満島ひかり)が17歳の娘・優子(髙石あかり)を連れて現れ、「しばらく預かってほしい」と言い残して去っていく。突然始まった治と優子の同居生活。やがて優子はバイト先で立山(高橋文哉)と出会い、少しずつ生活に変化が訪れる。ある日、恵子と治が言い争う場面に優子が立ち会ってしまい……。

© 2025映画『夏の砂の上』製作委員会