ベルナルド・ベルトルッチ監督の代表作の一つと称される映画『ラストタンゴ・イン・パリ』(1972年)。大胆な性描写と心理描写が大きな反響を呼んだこの作品の陰には、ひとりの女性の怒りと葛藤があった。第77回カンヌ国際映画祭に正式出品され、今なお世界中で問題とされるエンターテインメント業界における権力支配、搾取について鋭い視線を投げかけた問題作『Maria(原題)』が、邦題『タンゴの後で』として、9月5日に公開されることが決定した。併せて、予告編とポスタービジュアルが披露された。
19歳のマリア・シュナイダーは気鋭の若手監督ベルナルド・ベルトルッチと出会い、『ラストタンゴ・イン・パリ』で一夜にしてトップスターに駆け上がる。しかし、48歳のマーロン・ブランドとの過激な性描写シーンの撮影は彼女に苛烈なトラウマを与え、その後の人生に大きな影を落していく…。
本作は「70年代最大のスキャンダル」と言われた作品の舞台裏で一体何が起きていたのか?映画の撮影現場での問題について声を上げた最初の女性の一人である、マリア・シュナイダーの波乱に満ちた人生に焦点を当てる。
監督はヴェネツィア映画祭での受賞経験もある新鋭ジェシカ・パルー。ベルナルド・ベルトルッチ監督作『ドリーマーズ』でインターンとして彼との仕事を経験した彼女は、マリアのいとこであるジャーナリストが記した「あなたの名はマリア・シュナイダー:「悲劇の女優」の素顔」と出会い、彼女の人生を映画化することを決意する。マリアを演じるのはヴェネツィア映画祭金獅子賞受賞作『あのこと』で世界的賞賛を浴びたアナマリア・ヴァルトロメイ。そして、マーロン・ブランド役を名優マット・ディロンが演じている。
予告編では、才能豊かな19歳のマリアが当時、新進気鋭の監督であったベルトルッチから性的に大胆な映画を「芸術的に撮る」と説得され、『ラストタンゴ・イン・パリ』に出演。マリアの体当たりの演技、そして大スターのマーロン・ブランドとの共演は、彼女を一瞬にしてスターダムに伸し上げるが、それは彼女の望んだ形ではなかった。70年代当時、「芸術か?猥褻か?」と話題になった作品は、本作では「芸術か?暴力か?」と現代の我々に問いかける。
ポスタービジュアルではキスシーンを演じるマリアとブランドの目前にカチンコが配され、ベルトルッチ監督の目線が示される。マリアは怜悧な視線で見つめられており、彼女の不安が感じられるようなデザインとなっている。
■ジェシカ・パルー(監督) コメント
マリア・シュナイダーの物語は私にとって特別でした。私は誰かを責めたり、裁いたりするのではなく、この出来事の「遺産」に向き合いたい。そして、彼女の視点を通して、この社会を新たな角度から描き出したいのです。まずは「異常だったこと」を認識すること。それが、最初の一歩です。
本作には、72年の作品とは違いインティマシー・コーディネーターのパロマ・ガルシア・マーティンスが参加している。パルー監督や主演を務めたアナマリア・ヴァルトロメイも彼ら・彼女らの存在が作品作りにとって非常に重要であったと述べている。
『タンゴの後で』
2025年9月5日(金)TOHOシネマズ シャンテほか全国公開
監督・脚本:ジェシカ・パルー
出演:アナマリア・ヴァルトロメイ マット・ディロン ジュゼッペ・マッジョ イヴァン・アタル マリー・ジラン
配給:トランスフォーマー
【ストーリー】 19歳の若手女優マリア・シュナイダーは新進気鋭の監督ベルナルド・ベルトルッチと出会い、『ラストタンゴ・イン・パリ』で一夜にしてトップスターに駆け上がる。しかし、48歳のマーロン・ブランドとの過激な性描写シーンは彼女に苛烈なトラウマを与え、その後の人生に大きな影を落としていく。
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