カンヌ国際映画祭に作品を出品するごとに、常に高評価を得続けているトルコの名匠、ヌリ・ビルゲ・ジェイランの監督最新作で、第76回カンヌ国際映画祭において、トルコ人初の最優秀女優賞を受賞した『二つの季節しかない村』が、10月11日より公開されることが決定した。併せて、ポスタービジュアルが披露された。
パルムドール、2度のグランプリ、監督賞など、カンヌ国際映画祭をにぎわせ続けてきたヌリ・ビルゲ・ジェイラン。本作はメルヴェ・ディズダルにトルコ人初のカンヌ国際映画祭最優秀女優賞受賞をもたらした。
音さえ吸い込んでいく雪深い景色の圧巻の美しさと、標高2150mにある世界遺産ネムルトダーの夏の雄大さ。人間の悲しいほどの卑小さ。ジェイランは、この荘厳な自然の大きさと、自我に縛られた人間の小ささを大胆に対比させる。息もつかせぬ言い合い、目線に現れる感情の揺らぎ。これまで同様、ドストエフスキー、チェーホフら世界の文豪作品に加え、太宰治らの私小説を思わせる感情の機微を圧倒的な演出力で描き出す。
ポスタービジュアルは、荒涼とした雪景色の中にたたずみ、じっとこちらを見つめる少女を捉えたもの。ビジュアルの下部には小川のほとりで、黄色い枯草と青々とした草の境目を踏みしめる男の姿が。少女の背景には雪に閉ざされた渓谷が映り込み、長い髪には雪が降り積もりつつあるが、気にせず何かを強く訴えかける視線を送っている。冬景色と夏景色の2枚の写真と呼応するかのように、添えられている「春は来ない」という文字。春という季節がやってこないのか、それとも、春に象徴される暖かさを味わうことがないのか…。「トルコ、アナトリア東部。果てしなく続く壮大な自然の前で、人間は如何に小さなものか――。」という文字通り、壮大な雪景色の前に背を向けて歩いていく男の背中はとても小さい。
『二つの季節しかない村』
2024年10月11日(金)よりヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館ほか全国順次ロードショー
監督・脚本:ヌリ・ビルゲ・ジェイラン
出演:デニズ・ジェリオウル メルヴェ・ディズダル ムサブ・エキチ エジェ・バージ
配給:ビターズ・エンド
【ストーリー】 美術教師のサメットは、冬が長く雪深いトルコ東部のこの村を忌み嫌っているが、村人たちからは尊敬され、女生徒セヴィムにも慕われている。しかし、ある日、同僚のケナンと共に、セヴィムらに虚偽の“不適切な接触”を告発される。同じころ、美しい義足の英語教師ヌライと知り合い…。プライド高く、ひとりよがりで、屁理屈を並べ、周囲を見下す、“まったく愛せない”のに“他人事と思えない”主人公サメット。辺境の地でくすぶる男は、雪解けとともに現れた枯れ草に何を見つけ出すのか。
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