元日本赤軍・重信房子「私たちの時代の闘い方の欠陥が描かれている」『ゲバルトの杜 ~彼は早稲田で死んだ~』予告編

学生運動終焉期にエスカレートしていった“内ゲバ”を描いたドキュメンタリー映画『ゲバルトの杜 ~彼は早稲田で死んだ~』が、5月25日より公開される。このほど、予告編が披露された。

約50年前、早稲田大学で起こった内ゲバ殺人事件「川口大三郎リンチ殺害事件」を契機に、各党派でエスカレートしていった“内ゲバ”。本作は、これまでほとんど語られてこなかった“内ゲバ”の真相に、当事者の視点から切り込んだ書籍「彼は早稲田で死んだ 大学構内リンチ殺人事件の永遠」(著:樋田毅)を原案に、当時の関係者の証言ドキュメントと鴻上尚史・演出の短編劇によって立体的に描き出したドキュメンタリー映画となる。

予告編の冒頭を飾るのは、元・日本赤軍の重信房子による時代のへの悔恨とも言えるコメント。他、田原総一朗、久米宏、金平茂紀といったその時代に若者だった識者から、理性と煩悶が同居するようなコメントが寄せられた。

▼著名人 推薦コメント

■重信房子(元 日本赤軍)
この映画には 革命のために尊厳ある生命を犠牲にした 私たちの時代の闘い方の欠陥が描かれている。

■田原総一朗(ジャーナリスト)
彼らは彼らなりに真剣にこの国のことを考えていたと思う。だが行き過ぎた行動のために新左翼党派は壊滅することになった。他にやりようがなかったのか。私のなかには残念な気持ちがある。

■久米宏(フリーアナウンサー)
吉永小百合が3年前まで歩いていた文学部キャンパス そこでひとりの大学生が殴り殺された 殺したのは“革マル派”だった その後激しくなっていった内ゲバで100人以上が命を失った 殺すことで何かが解決したのだろうか

■金平茂紀(ジャーナリスト)
証言者パート、劇作パート、メイキング・パートが相乗的にかみ合って、起きていたことをヒリヒリと浮かび上がらせていた。時代の狂気のせいにしてはならない。今につながるテーマだ。

■太田昌国(民族問題研究)
現状の社会を批判し、夢や理想を語るからこそ、人びとの共感を得てきた〈革命〉の思想。いつしか、それは嘘と欺瞞に満ち、人びとの希望を打ち砕くような思想と実践に成り果てて、現在に至る――日本でも、世界でも。その腐臭に満ちた事態をもたらした根拠に迫らなければならぬ、この映画のように。〈革命〉に、本来の、真の息吹を吹き込むために。

■森まゆみ(作家)
日本でも本気出せば、ここまでできるという証左である。音楽もすばらしい。最初、ドラマ仕立てのシーンが出てきて、「あれ、また嘘くさい再現ドラマかよ」と思ったが、劇パートの役のオーディションや、そこでの学生と鴻上尚史さんとの対話など、背景をばらすことで、時代を今につなげることができた。革マル派の恐怖暴力支配に立ち上がった学生たち。本も良かったが、映画の方が視覚に訴えるものがあるのか、ずっとわかりやすい。同時代のワセダに生きた私が長い間待ち望んでいた映画。できるだけ多くの人に見てほしい。

■マーク・ノーネス(映画研究家・ミシガン大学教授)
「浅間山荘」はしばしば日本の政治シーズンの血なまぐさい結末の象徴として立つが、その壮観さはなぜか内ゲバという衝撃的に広がった慣行を吸収し(そして隠蔽)してしまう。『ゲバルトの杜』では、代島治彦──私たちの時代の情熱的な年代記者が、一件の拷問と殺人事件に圧倒的な明るい光を当て、その全体的な現象とその不気味な心理を照らし出す。

■石坂健治(東京国際映画祭シニア・プログラマー/日本映画大学教授)
1980年の春に早稲田大学第一文学部に入学した一人として、戸山キャンパスの構内でまず目にしたのは教室や廊下や階段のあちこちが破壊された不穏な風景、何かが終わったまま投げ出された風景だった。バブルに向かう賑やかな世相の中で、そうした傷の来歴をもはや顧みようとはせず、私たちはシラケ世代と呼ばれた。いま、同世代の代島監督はシラケることなくあの時代を追及している。本作を観て、記憶の喉に刺さった小骨のままだった不穏な風景ともう一度対峙することになった。同時に、あのころ早大演劇研究会から出現し、80年代の演劇界を牽引した「第三舞台」の主宰だった鴻上尚史が本作で再現ドラマ部分を重厚に演出しているのも興味深い。公演を夢中で追いかけた「第三舞台」の軽やかな笑いに満ちた華やかなステージの記憶はいまなお鮮やかだが、本作を傍らに置いてみると、新たな意味が生じてくるかもしれない。

『ゲバルトの杜 ~彼は早稲田で死んだ~』
2024年5月25日(土)よりユーロスペースほか全国順次公開
監督・企画・編集:代島治彦
音楽:大友良英
劇パート脚本・演出:鴻上尚史
劇パート出演:望月歩 琴和
出演:池上彰 佐藤優 内田樹 樋田毅 青木日照 二葉幸三 藤野豊 永嶋秀一郎 林勝昭 岩間輝生 吉岡由美子 大橋正明 臼田謙一 野崎泰志 岡本厚 冨樫一紀 石田英敬
配給:ノンデライコ