白石和彌監督「凄まじいラストの余韻。必見の一作」『ありふれた教室』予告編

本年度アカデミー賞国際長編映画賞ノミネートを果たしたドイツの新鋭イルケル・チャタク監督最新作『ありふれた教室』が、5月17日より公開される。このほど、予告編とポスタービジュアルが披露された。

本作は、現代の中学校を舞台にした学園ものだが、このジャンルのポジティブなイメージを根こそぎ覆す破格の問題作だ。ある新任女性教師カーラの視点で進行する物語は、校内で発生した小さな事件が予想もつかない方向へと激しくうねり、わずか数日間で学校の秩序が崩壊してしまう異常な事態へと突き進んでいく…。

予告編では、ただならぬ緊張感を漂わせながらカーラが次第に窮地に追い込まれていく様子が描かれる。彼女は、盗難が相次ぐ校内で生徒を守るために職員室で隠し撮りを仕掛けたのだ。それをきっかけに生徒の反乱や同僚教師との対立が起こり、保護者からも猛烈な批判を浴びるカーラ。目にアザをつけた様子も垣間見える…。緊迫感とともに引き込まれていく予告編が完成した。

ポスタービジュアルは、真っすぐこちらを見つめる若手教師カーラの意味深な眼差しを捉えたもので、違和感を覚える表情と併せて「先生(わたし)、おかしい?」というキャッチコピーが添えられている。一体何がおかしいのか、学校に潜む“光”と“闇”とは何か、果たしてカーラはどうなってしまうのか。謎めいた不気味さが漂うビジュアルとなっている。

併せて場面写真も到着。教室で叫ぶカーラの姿や中指を立てる生徒等、張り詰めた空気の中、様々な姿が切り取られている。

また、いち早く本作を鑑賞した著名人たちよりコメントも到着。映画監督の白石和彌は「感じたことのない凄まじい余韻。今年の間違いなく必見の一作だ」と絶賛。ドイツ文学翻訳家の池田香代子は「とほうに暮れて見回すと、あの教室と相似の社会が私たちを取り巻いている。こんなミステリーがあったのか!」と、映画の中で描かれる教室と我々が生きる現代社会の相似性に焦点をあてた。他、小島秀夫、森達也、瀬々敬久らから賞賛のコメントが届いた。

▼著名人 称賛コメント

■白石和彌(映画監督)
恐ろしい。目まぐるしく起こる出来事の連鎖に翻弄され、見ているこちらもすり減っていく。教育現場での地獄めぐりを体感させられ、絶対に教師にはなりたくないと誓いたくなる。しかし、本当に恐ろしいのはラスト数分、いや数秒で全てがひっくり返る瞬間だ。感じたことのない凄まじい余韻。今年の間違いなく必見の一作だ。

■小島秀夫(ゲームクリエイター)
こんなにも息苦しくなる映画はない。最後の最後まで、これでもかと胸や胃を締めつけられ、ラストでは絶望の淵に落とされる。些細な事から、ありふれた学校が憎しみの場所へ、制御の効かない無法地帯へと変貌する。この何処にでもある“教室の崩壊”の経緯を目撃してしまうと、「現実世界からもはや紛争や争いは未来永劫になくならないのでは?」と結論づけざるをえない。鑑賞後の後味の悪さは、“ありふれた映画”のものではない。ご注意を。

■森達也(映画監督/作家)
あまりにも凝縮された99分。最後まで目を離せない。音楽の使いかた、言葉の一つひとつ、教室と職員室を行き来するカメラワーク、子供たちのちょっとした仕草、映画を構成するすべての要素が、ありえないほどの完成度に達している。

■池田香代子(ドイツ文学翻訳家)
些細なミスの重なりが、収拾不能の事態を招く。いったいどうすればよかったのか。とほうに暮れて見回すと、あの教室と相似の社会が私たちを取り巻いている。こんなミステリーがあったのか!

■瀬々敬久(映画監督)
学校だけで民族差別や貧困格差と監視社会の危機を描き切っている。冷徹に見守りながら至るラストの衝撃。決して問題は解決してない。だが、少しだけ前へ進んだのだろうか。自分たち世界の向き合い方が示された気がした。

『ありふれた教室』
2024年5月17日(金) 新宿武蔵野館、シネスイッチ銀座、シネ・リーブル池袋他全国公開
監督・脚本:イルケル・チャタク
出演:レオニー・ベネシュ
配給:アルバトロス・フィルム 

【ストーリー】 仕事熱心で正義感の強い若手教師のカーラは、新たに赴任した中学校で1年生のクラスを受け持ち、同僚や生徒の信頼を獲得しつつあった。そんなある日、校内で相次ぐ盗難事件の犯人として教え子が疑われる。校長らの強引な調査に反発したカーラは、独自の犯人捜しを開始。するとカーラが職員室に仕掛けた隠し撮りの動画には、ある人物が盗みを働く瞬間が記録されていた。やがて盗難事件をめぐるカーラや学校側の対応は噂となって広まり、保護者の猛烈な批判、生徒の反乱、同僚教師との対立を招いてしまう。カーラは、後戻りできない孤立無援の窮地に陥っていくのだった…。

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