『人数の街』が国内外で称賛を浴びた荒木伸二監督と、『街の上で』以来2度目の主演を果たす若葉竜也がタッグを組み、主人公が意図せずループに巻き込まれる従来のタイムループものとは違い、“主人公が復讐のループを自ら選択する”という過去に類を見ない設定で描いた『ペナルティループ』が、3月22日より公開される。それに先立ち、2月19日に新宿武蔵野館にて完成披露上映会舞台挨拶が行われ、若葉竜也、伊勢谷友介、山下リオ、ジン・デヨン、荒木伸二監督が登壇した。
恋人を殺されたことから復讐を繰り返していく青年・岩森を演じた若葉は「オファーをいただいたのは、コロナとか世界情勢とか色々なことがあってふつふつとした怒りや破壊衝動、モヤモヤが溜まっていた時期。そんなときにこの映画の台本を読んで『滅茶苦茶な映画を一緒に作らないか』と同志から手を差し伸べられたような気がした」と運命を感じた様子。斬新なストーリーであるがゆえに「監督は東大卒ということで…賢すぎて狂ったんだと思う」と笑わせた。
岩森の敵・溝口役の伊勢谷にとって久々の俳優業。「大変ご無沙汰しております!」と元気に挨拶し「ここでも俺は罰せられるのかと思った。10回殺されるのは仕方がないとは思いつつ、でも途中で嫌になりました」と自虐を込めて役柄を紹介した。さらに伊勢谷は「罰されて人がリカバリーして良くなるのかというと、それは社会的にあまりない。この映画は東欧に売れたそうですが、死刑がある国が多いので…」と意味深の持論を展開しだすと、若葉から「何かあったんですか!?」ととぼけたようなツッコミを受けていた。
そんな伊勢谷は、初共演の若葉について「なんて柔軟な役者なのかと思った。尊敬してお芝居が出来て、打ち解けて楽しく信頼を持ちながら共演することが出来た」と絶賛。しかし当の若葉からは「僕の名前を今日も“わかばやし・たつや”と間違えた。わざとじゃなくてナチュラルにやっている」とのクレームが。これに伊勢谷は「でも“若葉”って名前いなくない?俺は悪くない」と無茶苦茶なことを言うと、若葉も負けずに「伊勢谷も珍しいでしょ!」などと言い返して、場内大爆笑となった。
岩森の恋人・唯役の山下は、親しく知る若葉との共演を振り返り「恋人に対しても普段はこんな感じなのかなと思った」と言うと、若葉は「なんで普段の俺と重ねるのよ!」と大テレ。またループの鍵を握る謎の男を演じたジンが「日本語を少ししか理解していない僕にみんな凄く優しく説明してくれて、撮影では何の問題もありませんでした」と感謝すると、若葉は「ジンさんと俺は似ている。髭を生やしたらキャラがかぶる」と謎の主張。登壇者全員から「似ていない!」と否定されていた。
荒木監督は長編デビュー作『人数の町』に続いて、オリジナル脚本で異色作を生み出した。「前作と同じことをもう一度する人生なんてつまらないので、新しいことに挑戦しています。ループジャンルには興味があったので、そのジャンルの枠に収まりつつも、どれだけ新しいチャレンジが出来るのかを意識した」とループにかけてPR。続けて、「これから10年はこの映画の俳優陣のように、事務所を辞めた人、事務所を自分で作った人、しばらくぶりに復帰した人、韓国から国境をまたいできた人…全員自分に責任を持っていて、どの発言をしても自分で責任を持たなければいけない人たちが今後は増え、活躍する」と話した。
全国公開を前に、アルメニア、アゼルバイジャン、エストニア、ベラルーシなど東欧地域15カ国での公開も決定。これに若葉は「この映画に着手した時から日本はもちろんの事、ワールドワイドに展開したいという話は監督やプロデューサーともしていた。まずは15カ国という目標は達成したかな」と嬉しそう。荒木監督も「どんな反応があるのか楽しみ」と期待していた。
最後に主演の若葉は「娯楽が溢れかえった2024年に、俺は何を見たのかと思わせることが出来る作品を作れたと思います」と自負し「ちょっとでも悪いことをしたら殺してもいい、何を書いてもいいという今の変な時代はほとんど魔女狩りだと思う。その心のままでは日本としてもダメだと思う。本作は伊勢谷友介さんの復帰作です。今日のことを記事に書くのであれば、この映画にかけつつ抱腹絶倒な記事でお願いします!」と報道陣に呼び掛けていた。
『ペナルティループ』
2024年3年22日(金) 新宿武蔵野館、池袋シネマ・ロサほか全国公開
監督・脚本:荒木伸二
出演:若葉竜也 伊勢谷友介 山下リオ ジン・デヨン
配給:キノフィルムズ
【ストーリー】 「おはようございます。6月6日、月曜日。晴れ。今日の花はアイリス。花言葉は“希望”です」岩森淳が朝6時に目覚めると、時計からいつもの声が聞こえてくる。岩森は身支度をして家を出て、最愛の恋人・砂原唯を殺めた溝口登を殺害し、疲労困憊で眠りにつく。翌朝目覚めると周囲の様子は昨日のままで、溝口もなぜか生きている。そしてまた今日も、岩森は復讐を繰り返していく。
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