「独自の視点で発信し続けよう」これぞ報道!『燃えあがる女性記者たち』予告編

第94回アカデミー賞長編ドキュメンタリー賞ノミネートのほか、サンダンス映画祭、山形国際ドキュメンタリー映画祭など30以上の映画賞を受賞、世界各地で高い評価を得ている『燃えあがる女性記者たち』が、9月16日より公開されることが決定した。併せて、予告編とオピニオンコメントがお披露目となった。

インド北部のウッタル・プラデーシュ州で、カースト外の「不可触民」として差別を受けるダリト(ダリット)の女性たちが立ち上げた新聞社「カバル・ラハリヤ」(「ニュースの波」という意味)は、紙媒体からSNSやYouTubeの発信を主とするデジタルメディアとして新しい挑戦を始める。ペンをスマートフォンに持ちかえた彼女たちは、貧困と階層、そしてジェンダーという多重の差別や偏見、さらには夫や家族からの抵抗にあいながらも、粘り強く小さな声を取材していく。やがて、彼女たちが発信するニュースの波は大きなうねりとなっていくのだった。

本作の公開に伴い、リントゥ・トーマス、スシュミト・ゴーシュ監督の来日も予定されている。

▼オピニオン コメント

■ISO(ライター)
滾る。これほど熱い作品は滅多にお目にかかれない。社会から与えられなかった学も、自由も、平等も、自らの手で掴み行く女性たち。情熱は波紋のように広がり、少しずつ日常を変えていく。そしてその熱量はスクリーンを経由し、私たちにも伝播する。そうだ、自ら声をあげ、挑まなければ。世界が変わるのを待つだけの日々はもうやめだ。

■奥浜レイラ(映画・音楽パーソナリティ)
権力とメディアの癒着、腐敗などネガティヴな面が露呈し、報道の自由度ランキングが年々後退する日本において、カーストによる差別や暴力にさらされてきた記者たちの蜂起を目撃する意義は大きい。「声を上げたって何も変わらない」そんな無力感が、発言し行動するエネルギーを奪っていく。でも私たちには言葉がある。スマホもペンもある。足りないのはくじけない意志だと彼女たちの目が語りかける。

■武田砂鉄(ライター)
「なんだオマエたちは」と軽んじる表情を映し出す。周りの野次馬はニヤニヤしている。それでも、強者を問う姿勢を貫く。「あなたの国はどう?」と問われた気がした。

■望月衣塑子(東京新聞記者)
カースト制のさらに下に位置する「ダリト」の女たちが作り出したメディアが、身分差別社会インドを変革する。侮蔑する男をものともせず、貧困に苦しむ人々と為政者のギャップにカメラを向け続ける。「怯むな、前に進め」。メディアに携わるあらゆる人々がみるべき映画だ。

■安田菜津紀(メディア NPO Dialogue for People 副代表/フォトジャーナリスト)
カーストの壁、家族という呪縛、世間の目、そして女であること―幾重にも折り重なり、のしかかる差別 構造の中、消されてきた声を拾い続ける記者たちの姿は、暗闇の中でなお輝く、民主主義の灯そのものだ。

『燃えあがる女性記者たち』
2023年9月16日((土)より、渋谷ユーロスペースほかにて全国順次公開
監督:リントゥ・トーマス スシュミト・ゴーシュ
配給:きろくびと

©BLACK TICKET FILMS. ALL RIGHTS RESERVED.