「人と人がお互いを見つめ、助け合う姿を描かなくては」ラム・サム監督単独デビュー作『星くずの片隅で』コメント動画

新世代の香港映画を牽引する、ラム・サム監督が、香港の人気シンガーソングライター・俳優ルイス・チョンと、アジアが誇るトップモデルのアンジェラ・ユンを迎えて、都会の片隅でまっすぐに生きようとする人々の姿を、丁寧な人物描写と美しい映像で紡ぎした感動作『星くずの片隅で』が、7月14日より公開されることが決定した。併せて、ポスタービジュアルと場面写真、アンジェラ・ユン&ラム・サム監督のコメント動画がお披露目となった。

本作は、生活の息吹が感じられる街の光、朝焼けの空、小さい窓から見上げるまぶしい太陽…。コロナ禍の静まり返った香港の片隅で、誰にも気付かれずに生きる人々の孤独な心を、新世代の香港映画の旗手がやさしい眼差しで掬い取ったヒューマンドラマ。

2022年12月に香港で公開された本作は、新人監督のデビュー作としては異例の注目を集めていた。台湾アカデミー賞3部門、香港電影評論学会大奨6部門、そして香港アカデミー賞10部門ノミネートの快挙を遂げたからだ。香港電影評論学会が「まちがえなく、今年一番の心温まる香港映画!」と評したとおり、監督が紡ぎだした優しい眼差しと共に注目されたのが、魅力的なキャスティングにもある。

映画『イップ・マン継承』(16/ウィルソン・イップ監督)、『SHOCK WAVE ショック ウェイブ 爆弾処理班』(18/ハーマン・ヤウ監督)や、100本以上のドラマに出演しコメディ俳優として定評のあるルイス・チョン。不器用でやさしい中年男ザク役で新境地を切り拓き、名優アンソニー・ウォンを抑え香港電影評論学会大奨最優秀男優賞を獲得し、表現者として大きな転機を迎えた。

映画『宵闇真珠』(17/ジェニー・シュン、クリストファー・ドイル共同監督)でオダギリジョーと共演し、川島小鳥の写真集や銀杏BOYZのCDジャケット、Vaundyの「Tokimeki」のMVにも起用され話題の香港のトップモデル アンジェラ・ユンが、ずる賢くも憎めないキュートなシングルマザーのキャンディ役を好演。本作のほかにも大阪アジアン映画祭でも上映された『香港ファミリー』(22/エリック・ツァン・ヒンウェン監督)などの話題作に起用され、一流メゾンのファッションアイコンから一気に新世代の最注目株女優に躍り出る存在となった。

憎まれ口を叩きながらも息子ルイスをあたたかく見守る、愛すべき母役に、ベテラン舞台俳優で映画『ソク・ソク』(19/レイ・ヨン監督)で香港アカデミー賞助演女優賞を受賞した実力派俳優パトラ・アウ。最高にキュートで小生意気なキャンディの娘ジューを演じるのは、映画初出演のトン・オンナー。キャンディとジューのポップでカラフルな衣装、どびっきりの笑顔が、作品に彩りを添えている。

本作はキャストだけではなく、スタッフも映画賞を席捲している。香港アカデミー賞最優秀音楽賞、台湾アカデミー賞最優秀オリジナル音楽賞を受賞したウォン・ヒンヤンは、『香港の流れ者たち』(21/ジュン・リー監督)などの話題作を手掛る注目の存在だ。香港電影評論学会大奨、香港アカデミー賞にノミネートされた脚本家のフィアン・チョンは、『十年』(15)の脚本も手掛けており、新世代の香港映画に欠かせないスタッフが集結した。

2022年の香港映画界は新人監督たちのデビュー作が軒並みヒットし、地殻変動をもたらした記念すべき年となった。共通するのは現在の香港に根差した“香港アイデンティティ”を色濃く描きだしている点にある。その中でも香港では上映禁止になるも、日本で劇場公開され話題となった映画『少年たちの時代革命』(20/レックス・レン共同監督)のラム・サム監督は注目される監督のひとりである。

▼ラム・サム監督

▼ラム・サム監督&アンジェラ・ユン

▼ラム・サム監督&アンジェラ・ユンのコメント動画

ラム・サム監督が単独デビュー作となる本作で描いたのは、香港の街の片隅で小さな星くずのようにきらめく人々。本作は2018年から脚本構想が練られ、当初から主人公の仕事は現代社会に欠かせない職業である清掃業に設定されていた。そして2020年新型コロナウイルス感染症の流行によって、格差社会が浮き彫りになり、孤独感が街に充満していった。監督は変化する社会情勢の中で、「どんなことが起きても、希望を持つこと。こういう時代だからこそ、家族や恋人、友人という関係性だけではない、人と人がお互いを見つめ、助け合う姿を描かなくてはいけないと思いました」と語る。

やさしく不器用な中年男のザクと、誰にも頼らずに生きるシングルマザーのキャンディを主軸に、家族でもない、恋人でもない、でもお互いがきらめいている瞬間を愛おしく思える気持ちが描かれていく。コロナ禍でシャッターが降り静まり返った2021年の香港で撮影された本作は、この時代にしかない空気感、そして誰もが持ついいようのない感情が淡々と映し出されていく。ひとりじゃない、そんな希望が全ての人の心にじんわりとひろがっていく…。

本作は香港を皮切りにイギリス、台湾でも劇場公開された。日本では2023年3月大阪アジアン映画祭コンペティション部門にて上映され、大きな話題となった。

『星くずの片隅で』
2023年7月14日(金)より、TOHOシネマズ シャンテ、ポレポレ東中野ほか全国公開
監督:ラム・サム(林森)
脚本:フィアン・チョン (鍾柱鋒) 撮影:メテオ・チョン (流星) 美術:ウミ・ンガイ(魏鳳美)
出演:ルイス・チョン(張繼聰) アンジェラ・ユン(袁澧林) パトラ・アウ(區嘉雯)  トン・オンナー(董安娜)
配給:cinema drifters・大福・ポレポレ東中野

【ストーリー】 2020年、コロナ禍で静まり返った香港。「ピーターパンクリーニング」の経営者ザク(ルイス・チョン)は、車の修理代や品薄の洗剤に頭を悩ませながら、消毒作業に追われる日々を送っている。リウマチを患う母(パトラ・アウ)は、憎まれ口をたたきながらも、たまに看病にくるルイスのことを心配している。ある日、ザクの元にド派手な服装の若いシングルマザーのキャンディ(アンジェラ・ユン)が職を求めてやってくる。まともな仕事をしたことがなさそうなキャンディだったが、娘ジュー(トン・オンナー)のために慣れない清掃の仕事を頑張りはじめる。しかしキャンディがジューのために子供用のマスクを客の家から盗んでしまい、ザクは大事な顧客を失ってしまう。幼い娘を抱え、まともな暮らしもできずにいるキャンディをみて、ザクはもう一度だけチャンスを与える。心を入れ替え仕事に打ち込んでいくキャンディに、心惹かれていくザク。そんな中、ルイスの母が急死してしまう。葬儀に向かうザクを送り出し、ひとりでの仕事に張り切るキャンディ。しかしジューがうっかりこぼしてしまった洗剤をきっかけに、追い詰められたキャンディはちょっとした嘘を重ねていってしまう。それがザクと会社を窮地に追いやることになり…。

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