「自分には何もないんだって」半ば人生を諦めて生きてきた陽子の想い『658km、陽子の旅』本予告編

『バベル』で米アカデミー助演女優賞にノミネートされ、その後『パシフィック・リム』シリーズなどで国際的に活躍する菊地凛子が、20年ぶりに熊切和嘉監督とタッグを組み、初の日本映画単独主演を務める、2019年TSUTAYA CREATORS’ PROGRAM脚本部門の審査員特別賞受賞作『658km、陽子の旅』が、7月28日より公開される。このほど、本予告編、本ビジュアル、場面写真がお披露目となった。

“陽子”=1980年生まれ42歳、青森県出身。独身。東京在住。在宅フリーター。24年前、父に反対されながら上京したが、夢破れ挫折。自分の殻に閉じこもっていたある日、父親の訃報をきっかけに思いがけず一人ヒッチハイクで24年間帰っていなかった故郷・弘前をめざすことに。東京から福島、宮城、岩手そして青森、その道中での出会いやトラブルを通した一夜の旅で陽子の止まっていた時と心が動きはじめる。他人との密な関係を作らず生きることができてしまう現代、人との関わりが、ぬくもりが、後悔を抱え孤独に凍ったヒロイン陽子の心を溶かし癒していく。

主人公・陽子は東京から青森まで、20年以上会うことのなかった父との別れのために故郷を目指す。ヒッチハイクで見ず知らずの人の助けで車に乗せてもらったり、自ら歩いたりと、一夜の出会いと別れを紡ぎながら寒空の東北を歩んでいく姿が様々に映し出される。「自分には何もないんだって」と、吐露するセリフに、
半ば人生を諦めて生きてきた陽子の想いと、孤独がにじみ出す胸に迫る予告編が完成した。

また、”Wilco/A ghost is born”のプロデューサーとしてグラミー賞を受賞する世界的ミュージシャンのジム・オルークとマルチな演奏家として国内外で活躍し、映画『ドライブ・マイ・カー』の音楽を手掛けた石橋英子によるエンディングテーマ「Nothing As」の楽曲も公開。歩みを進める陽子を、石橋の優しく透き通る歌声が導く幻想的な楽曲となっている。

メインビジュアル写真の撮影を務めたのは、90年代から写真家として活躍し木村伊兵衛写真賞をはじめ多数を受賞、現在はフェミニズムの論客としても知られ、アートジャンルを横断して活動する長島有里枝。早朝の荒れる海を前に呆然と遥か遠くを見つめる菊地凛子演じる“陽子”の諦めとも希望ともつかない姿を見事に切り取り、美しく印象的な本ビジュアルが完成した。

『658km、陽子の旅』
2023年7月28日(金)より、ユーロスペース、テアトル新宿 ほか全国順次公開
監督:熊切和嘉
原案・共同脚本:室井孝介
共同脚本:浪子想
音楽:ジム・オルーク   エンディングテーマ「Nothing As」by ジム・オルーク 石橋英子
出演:出演: 菊地凛子 竹原ピストル 黒沢あすか 見上愛 浜野謙太 仁村紗和 篠原篤 吉澤健 風吹ジュン オダギリジョー
配給:カルチュア・パブリッシャーズ

【ストーリー】 42歳独身、青森県弘前市出身。夢破れ人生を諦め惰性で日々を過ごしていた就職氷河期世代のフリーター陽子(菊地凛子)は、かつて夢への挑戦を反対され20年以上断絶していた父が突然亡くなった知らせを受ける。従兄・茂の一家が葬儀のため弘前へ帰る車に無理やり乗せられ、しぶしぶ一緒に帰ることに。しかし、途中のサービスエリアでトラブルを起こした子どもに気を取られた茂の一家に置き去りにされてしまう。陽子は弘前に向かうことを逡巡しながらも、所持金がない故にヒッチハイクをすることに。しかし、出棺は明日。それまでに実家にたどり着けるのか。北上する一夜の旅で出会う人々…シングルマザー、人懐こい女の子、怪しいライター、心暖かい夫婦、そして若かりし父の幻…様々な人々との出会いにより、時を止めていた陽子の心が動きだす。

©2022「658km、陽子の旅」製作委員会