本年秋に開催される萩原朔太郎の大回顧展「萩原朔太郎大全 2022」の記念映画として製作された、萩原朔太郎の娘・萩原葉子の小説「天上の花―三好達治抄―」を東出昌大主演、入山法子共演で映画化した『天上の花』が、2022年12月より公開される。このほど、特報映像、本ビジュアルがお披露目となり、監督&出演者よりコメントが寄せられた。
萩原朔太郎の娘である萩原葉子の小説「天上の花―三好達治抄―」を、1966年の発表から56年の時を経て映画化する本作は、三好達治、萩原朔太郎、そしてその妹・慶子の3人が織りなす純粋で凄まじい“愛”と“詩人の生”を描く。「天上の花」とは、仏教用語で曼珠沙華、彼岸花の別名。燃えるような赤い花は情熱の象徴である一方、有毒性をもつ。これを食した後は「彼岸」つまり「死」しかないという説もある。
本ビジュアルには詩人・三好達治が「山なみとほに」という詩で天上の花として詠った辛夷(こぶし)の花を大きく扱い、達治が生前書いた直筆を今作のタイトルロゴとして起用している。
■東出昌大(三好達治役)コメント
愛ゆえに男が女を殴る。そんな理屈は詭弁だと思っていた。しかし悪魔的な、本人にとっては純真無垢な愛に翻弄された時、人は変わってしまうのかも知れない 深淵を覗き込む物語です。是非ご覧下さい。
■入山法子(萩原慶子役)コメント
愛したり憎んだり許したり許せなかったり言葉にならない曖昧な人間の思いを、いつも、映画は受け入れてくれた。私は、いつか、こんな世界に飛び込みたかった。私を慶子にしてくれて、ありがとうございます。
■片嶋一貴(監督)コメント
戦争は人を狂わせる。第二次世界大戦時、泥沼の戦争状態に突入した日本。時代をおおう閉塞感と不安と焦燥の中、主人公の詩人は戦意高揚詩で名を上げる。男は一人の美しい女を愛し、やがて激情のままに女に手を挙げ、泣きながら暴力を振るうようになる。その振り上げられた拳と悲しみの涙は、誰のものでもない。それは、今を生きるボクら自身の抑制のきかない衝動そのものだ。時代を超えて、誰もが加害者にも被害者にもなりえる。詩に心魂を捧げ、女を愛し、日本という国家と自我を同化させて生き抜いて来た男は、戦後すべてを喪失する。女との離別。そして、残酷なまでの価値の崩壊。あらゆるものは、絶えず移り変わって行く。そんなままならない世の中に、ボクらは何を考え悩み、情熱をかけて、いったい何を守り、得体の知れない不条理と闘って行かなければならないのか?不穏な空気が蔓延する世界に、そんなことを考えるきっかけの映画になればと心から願っている。
『天上の花』
2022年12月より、新宿武蔵野館、渋谷ユーロスペースにて公開
監督:片嶋一貴
原作:萩原葉子「天上の花―三好達治抄―」
脚本:五藤さや香 荒井晴彦
出演:東出昌大 入山法子 浦沢直樹 萩原朔美 林家たこ蔵 鎌滝恵利 関谷奈津美 鳥居功太郎 間根山雄太 川連廣明 ぎぃ子 有森也実 吹越満
配給:太秦
【ストーリー】 萩原朔太郎を師と仰ぐ三好達治(東出昌大)は、朔太郎の美貌の末妹・慶子(入山法子)と結ばれることを望むが、貧乏書生と侮られ拒絶される。しかし十数年後、慶子が夫と死別すると、三好は妻子と離縁して慶子と結婚。時は 太平洋戦争の真っ只中、身を隠すように越前三国にひっそりと新居を構えた二人には、雪深い冬の過酷な生活が待ち受けていた。三好は純粋な文学的志向と潔癖な人生観の持ち主であり、奔放な慶子に対しする一途な愛と憎しみが、いつしか激情とともに制御できなくなっていく…。
©2022「天上の花」製作運動体