大杉漣主演作『教誨師』で知られる佐向大監督が、足立智充と玉置玲央を主演に迎え、構想9年、オリジナル脚本で現代社会の相貌を描き切った『夜を走る』が、5月に公開されることが決定した。併せて、メインビジュアルがお披露目となり、各界著名人より本作を絶賛するコメントも寄せられた。
舞台は郊外の鉄屑工場。そこで働く二人の男。ひとりは不器用で上司にも取引先にも軽侮されながら、実家で暮らす秋本。ひとりはうまく世の中をわたってきた谷口。あまりに退屈な、しかし平穏な毎日を送ってきた彼らだったが、ある夜の出来事がきっかけで、二人の日常と運命は大きく揺らぎ始める…。機械も人間もいとも簡単にスクラップ・アンド・ビルドされ、部品の入れ替わりなどお構いなしにぐるぐる回り続ける社会。嘘が嘘を生み、弱い者たちが更に弱い者を叩く。そんな無情な世界の中、それでも通常運転を続ける人間の絶望と再生が、驚きの展開で紡がれていく。
監督・脚本は、“死”と隣り合わせの死刑囚たちと、彼らと対峙する聖職者の“生”を描いた大杉漣主演作『教誨師』で高く評価された佐向大。前作に続き完全オリジナル脚本の構想は9年前。本来ならば、本作が大杉の初プロデュース作品となるはずだったが、先に製作された『教誨師』が大杉初のプロデュースにして最後の主演作となり、本作の企画は一旦頓挫。その後全世界をパンデミックが覆う中、再び企画が始動。佐向にとってまさに集大成にして新境地たる渾身の一作だ。撮影は、堀禎一監督作『夏の娘たち ひめごと』、宮崎大佑監督作『VIDEOPHOBIA』の渡邉寿岳が手掛けた。
主演の秋本役を演じるのは、『きみの鳥はうたえる』や『ふたつのシルエット』の足立智充。予想だにできない怒涛の運命を辿る男を鬼気迫る怪演で魅せる。同僚の谷口役に、『教誨師』の死刑囚役で映画初出演し、毎日映画コンクール・スポニチグランプリ新人賞を受賞、NHKドラマ「おかえりモネ」などでも印象的な姿を見せる玉置玲央。秋本と対照的に、家族を持ち、要領よく生きてきた男を見事に演じる。そのほか、廣木隆一監督作『夕方のおともだち』でSM女王に扮し話題を集めた菜葉菜、あらゆる役柄に憑依し名バイプレイヤーの名を欲しいままにする宇野祥平、さらに松重豊、高橋努、川瀬陽太といった実力派俳優陣が脇を固める。また、TVドラマを中心に看護師、ホステス、学生など多彩な役を演じ熱い視線を浴びる女優・玉井らんが、本作で本格的映画デビューを飾る。
メインビジュアルには、車に乗り、対照的な表情を見せる秋本(足立智充)と谷口(玉置玲央)の姿が収められる。バックシートは不穏なブルーライトが光り、後方には炎が火花をあげている。彼らは一体何を考えているのか、秋本は何を見つめているのか、谷口はなぜうなだれているのか…。見るものの想像力を掻き立てる強烈なビジュアルに仕上がった。本ビジュアルのデザインは、銀杏BOYZやcero、雑誌「STUDIO VOICE」(No.411-415)等のアートディレクターを務めてきた坂脇慶が手掛けた。
▼著名人 絶賛コメント
■中原昌也(ミュージシャン、作家)
映画は夢か?現実か?ファスビンダーが死んでも、いまだ彼の描いた世界が現実なのに…その揺るぎない事実をこの映画が証明した!映画は時限爆弾だ!全部吹っ飛ばせ!
■夏目知幸(ミュージシャン/Summer Eye)
真っ赤な灰皿。箱のカタチの、足がついてる、缶でできたやつ。底に溜まった汚い汚い汚い水、粘る唾液が染み込んだ大量のタバコの吸い殻、そのエキスをじっくりと時間をかけて抽出した、もう、水って言っちゃいけない汁。あの、臭い臭い臭い臭い臭い汁。黒い黒い黒い黒い黒~い黒~い汁って、一気飲みしたら死ぬらしいから、味を知りたければ代わりにこの映画を観るといい。飲んだことがある事に気づくだけだとしても。
■町山広美(放送作家)
ドストエフスキーの至言「囚人を逃亡させない最良の方法は、監獄に入っていると気づかせないことだ」がついに映画化された。快挙であり暴挙であるこの映画は、今見られなければならない。「日常を続けましょう」は看守の声だと、気づく時が来たのである。
■門間雄介(ライター、編集者)
現実を不条理が侵食していく。それは一人の映画作家が格闘し、認識するにいたった世の中のある断面なんだろう。恐れを知らない、この野心的な映画は、観る人に激しい揺さぶりをかける。ぶっ壊れているのは自分か、世界か?
『夜を走る』
2022年5月 テアトル新宿、渋谷・ユーロスペースほか全国公開
監督・脚本:佐向大
出演:足立智充 玉置玲央 菜葉菜 橋努 玉井らん 坂巻有紗 山本ロザ 信太昌之 杉山ひこひこ あらい汎 潟山セイキ 松永拓野 澤純子 磯村アメリ 川瀬陽太 宇野祥平 松重豊
配給:マーメイドフィルム コピアポア・フィルム
【ストーリー】 舞台は郊外の鉄屑工場。そこで働く二人の男。ひとりは不器用で上司にも取引先にも軽侮されながら、実家で暮らす秋本(足立智充)。ひとりはうまく世の中をわたってきた谷口(玉置玲央)。あまりに退屈な、しかし平穏な毎日を送ってきた彼らだったが、ある夜の出来事がきっかけで、二人の日常と運命は大きく揺らぎ始める…。
©2021『夜を走る』製作委員会