ルーマニアの鬼才ラドゥ・ジューデ監督の最新作で、第71回ベルリン国際映画祭金熊賞を受賞した、タブーを打ち破る大論争コメディ『アンラッキー・セックスまたはイカれたポルノ 監督〈自己検閲〉版』が、4月23日より公開される。このほど、本作の予告編がお披露目となった。
セックスという極私的で本能的な行動がひとたび他人の目に晒されることで、事態が思いもよらない方向へ転がっていく様を、社会の偽善や偏見を浮き彫りにし、キレキレのブラックユーモアで鋭く切り込む本作。世界が同時に経験したパンデミックとその後の社会の閉塞感を背景に、“卑猥”とは何か?を改めて問いかける。“監督〈自己検閲〉版”と大々的に謳われた本作は、ただのぼかしやカットを追加しただけではなく、シーンの要所要所に「殺人シーンはOKで、フェラはNGだって?」「見られなくて残念!」「検閲版だよ!」といったアイロニカルで挑発的、ユーモア溢れるメッセージが文字通り本編に映し出されていく、類をみないスペシャルver.である。
予告編は、ルーマニア・ブカレストで名門校教師であるエミが、「抗不安薬を1錠でいいんです 今夜かなり緊張しそうで」と薬局で薬を所望するシーンから始まる。彼女を待ち受けるのは、夜に控えた緊急招集の保護者会だ。エミは夫とのプライベートセックスビデオが意図せずネット上に流出し瞬く間に拡散し、生徒や保護者の目に触れ、事情説明のために校長宅に向かっていた。映像では、街を彷徨うエミの姿を追い続け、彼女に募る不安と苛立ちが社会全体に蔓延しているかのような一触即発な緊張感が漂う。さらに畳みかけるようにどこか突拍子もないモンタージュの数々が、皮肉たっぷりに挑発的に重ねられていく。3部仕立てになっている本作。第1部では、エミが歩き回る姿を追いつつ、すれ違うコロナ禍の人々や街の顔を捉え、第2部では、膨大なアーカイブ映像やコラージュ、そしてジューデ監督の頭の中をのぞくかのような“パゾリーニ、ベンヤミン、ブレヒト、クンデラ、サルトル、ウルフ…”といった歴史、神話、映画監督、思想家らの格言やジョークの蓄積が大放出。そして迎える第3部では、学校でのエミの異端審問さながらの保護者たちによる終わりなき“裁判”がついに開かれる。
『アンラッキー・セックスまたはイカれたポルノ 監督〈自己検閲〉版』
2022年4月23日(金) シアター・イメージフォーラム他全国順次ロードショー
監督・脚本:ラドゥ・ジューデ
配給:JAIHO
【作品概要】 ラドゥ・ジューデ監督がアイロニーに満ちた眼差しで切り取るのは、終わりの見えないコロナ禍の息苦しさとインターネット、SNSにより瞬時に情報が駆け巡り錯綜する現代。ルーマニア・ブカレストで名門校教師であるエミは、コロナ禍の街を彷徨い歩いていた。夫とのプライベートセックスビデオが意図せずネット上に流出し瞬く間に拡散。生徒や保護者の目に触れることになり、夜に控えた緊急招集の保護者会の前、事情説明のために校長宅に向かっていた。彼女の抱える不安や苛立ちは、すれ違う人々も共有する怒りと絶望、さらにはその街、引いては世界の感情そのもののようであった。猥雑で、汚れ、怒りを孕んだ空気が徐々に膨れ上がっていく…。世界が同時に経験したパンデミックとその後の社会の閉塞感を背景に、“卑猥”とは何か?と改めて問いかける本作。セックスという極私的で本能的な行動が、ひとたび他人の目に晒されることで事態は思いもよらない方向へ転がっていく。
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