第3回東京ドキュメンタリー映画祭で長編部門グランプリと観客賞をW受賞した、フィリピンのスラム街に住む、日本に帰ることのできない過去を背負った邦人男性たちの生活と、そのまわりに生きる現地の人々を7年間追い続けたドキュメンタリー『なれのはて』が、12月18日より公開される。このほど、各界著名人より本作を絶賛するコメントが寄せられた。
マニラの貧困地区、路地の奥にひっそりと住む高齢の日本人男性たち。「困窮邦人」と呼ばれる彼らは、まわりの人の助けを借りながら、僅かな日銭を稼ぎ、細々と毎日を過ごしている。警察官、暴力団員、証券会社員、トラック運転手…かつては日本で職に就き、家族がいるのにも関わらず、何らかの理由で帰国しないまま、そこで人生の最後となるであろう日々を送る。本作は、この地で寄る辺なく暮らす4人の老人男性の姿を、実に7年間の歳月をかけて追ったドキュメンタリー。
▼著名人 絶賛コメント
■尾野真千子(女優)
フィリピンという土地に喜怒哀楽を求めて移住し、それぞれの幸せを求めたのだろう。なれのはて、それぞれの最後や変化、とても生々しく、私の心がいろんな方向に動いた作品!みごたえありました。
■望月優大(ライター)
いつしかそうなっていた人生の中に、そうあるように選んだこと、工夫を凝らしたこと、毎日続けてきたことが、どうしようもないほど深く織り込まれていた。一人ひとりの表情が、その変化が、今も忘れられない。
■石井光太(ノンフィクション作家)
彼らはフィリピンのスラムに堕ちた負け組のはずなのに、日本の高齢者施設や病院で寂しく亡くなっていく勝ち組より、どこか自由で、突き抜け、短くとも苦しみの少ない人生を遂げているように見える、その理由を考えよ。
■矢崎仁司(映画監督)
「身捨つるほどの祖国」がない今の日本で生きている私たちが、失いつつある何かをこの映画で感じる。「私は何を残しただろう」と歌うのではなく、すべてを受け入れて生きていく人たち。街に子どもたちの笑顔があり、笑い声があり、子を叱る母の声があり、犬がいて、猫がいて、食べて、排泄して、そしていつも風が吹いていた。優しさは、何処から生まれるんだろう?
■金井真紀(文筆家・イラストレーター)
底辺の暮らしを珍しがってジロジロ覗くのは下品だと思いながらも、スクリーンの隅々まで目を凝らしてしまう。なんだろう、この磁力は。おじさんたちの人生はいかがわしくて、立派さのかけらもない。だからこそ惹きつけられる。
■七里圭(映画監督)
私は最近、人間の果てについて、よく考える。それは、ネットやAIに依存した人間が、将来どうなっていくかということなのだが、かなり絶望し、諦念すら感じている。この映画に写し出されるのは、男たち、父たちのなれの「果て」だ。その哀れな姿は、そこに行き着きたいとは決して思えないながらも、一方で、デジタル化した社会で、かすかすにされながら多幸感を植え付けられる未来の人間像に比べると、まだ少しの希望を感じたりもするのだ。
■丸山ゴンザレス(ジャーナリスト)
「豊かな青春、惨めな老後」かつてのバックパッカーには有名なこの言葉を思い出した。自分の“なれのはて”が惨めなのか、幸せなのか、これまでの選択と、これからのルートを今の日本社会を生きる身として特に思わずにはいられない。
『なれのはて』
12月18日(土)より、新宿K’s cinemaほか全国順次公開
監督・撮影・編集:粂田剛
音楽:高岡大祐
出演:嶋村正 安岡一生 谷口俊比古 平山敏春
配給:ブライトホース・フィルム
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